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テッポウエビ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テッポウエビ類から転送)
テッポウエビ科 Alpheidae
オニテッポウエビ Alpheus digitalis
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱(エビ綱) Malacostraca
: 十脚目(エビ目) Decapoda
亜目 : 抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目 : コエビ下目 Caridea
上科 : テッポウエビ上科 Alpheoidea
Rafinesque, 1815
: テッポウエビ科 Alpheidae
Rafinesque, 1815
本文参照

テッポウエビ科(テッポウエビか、学名:Alpheidae)は、エビの分類群の1つ。テッポウエビの他セジロムラサキエビムラサキヤドリエビ、真社会性を持つユウレイツノテッポウエビなど、小型の底生エビを多数含む[1][2][3][4][5][6]

概説

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熱帯域を中心に多数の種が知られる。全ての種類が生で、汽水域マングローブ干潟タイドプール藻場サンゴ礁など浅い海で種分化が進んだグループである[1][2][3][4][5][6]

成体の大きさはどれも数mm-数cmほどで、大型のテッポウエビは鋏を含めると10cmを超えるが、1-2cm程度の小型種の方が多い。

5対10本の歩脚のうち、前の2対が鉗脚に変化している。一番前の第一歩脚は太く発達し、左右で大きさや形が異なるものが多い。テッポウエビ属 AlpheusツノテッポウエビSynalipheus など4属では大きな方の鋏をかち合わせ「パチン」という破裂音を出す行動が知られる。このときに生じるジェット水流(キャビテーションの原理を利用したもの)によって、巣穴への侵入者や同種他個体を威嚇したり、獲物を狙撃すると考えられる。また、セジロムラサキエビなどのムラサキエビ属 Athanas では、第一歩脚を内側へ二つ折りにし、「を前に突き出した」ような状態で行動する。第二歩脚は他の歩脚に比べても細長く、小さな餌をつかむ時などに用いられる。後ろ3対の歩脚にははさみがなく、専ら歩行に用いられるが、体や第一歩脚に比べて細くて平たく、あまり頑丈ではない[1][2][3][4][5][6]

体は太い円筒形で、目立つ棘や毛もなく滑らかである。触角は他のエビと同様に長いが、複眼眼柄、額角はあまり発達せず退化傾向を示す。中には頭胸甲が複眼背面を覆い、視界が前方の狭い範囲のみに限定された種類もいる[1]

生態

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成体は全ての種類が底生で、泳ぐ能力はなく、歩く能力すらもあまり高くない種類が多い。

移動能力や視力の弱さを補う生存の手段として、多くの種類で他の動物との共生が見られる。大型のテッポウエビ類の多くは砂泥に穴を掘り、ハゼ類と共生する。小型種には海綿サンゴウニウミシダなどの体表や体内に生息するものが多い。特に共生しない種は岩石や砂礫、海藻海草)、死サンゴの間など物陰に巧妙に潜み、姿を見ることは少ない[1][3][4][5]。海綿に共生するツノテッポウエビ属のなかには、アリハチと同様の真社会性を示すものもいる。

卵はメスが腹脚に抱えて保護する。孵化した幼生は他のエビ類と同様にプランクトンとして浮遊生活を送り、稚エビはそれぞれの種類に適した環境に定着する。なお、セジロムラサキエビなどでは雄性先熟性転換が報告されている[1][2]

分類

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"World Register of Marine Species"によれば、2015年時点で47属が知られる。多くの種類を含むテッポウエビ属などでは、類似種をまとめた「種群」が使用されることもある。特に小型種では未分類、未記載の種が相当数いるとみられる[1][7]

  • Metabetaeus Borradaile, 1899 オハグロテッポウエビ(ドウクツテッポウエビ)属
  • Metalpheus Coutière, 1908 オカメテッポウエビ属
  • Mohocaris Holthuis, 1973
  • Nennalpheus Banner et Banner, 1981 オガミテッポウエビ属
  • Notalpheus Méndez G. et Wicksten, 1982
  • Orygmalpheus De Grave et Anker, 2000
  • Parabetaeus Coutière, 1897 ヘンゲテッポウエビ属
  • Pomagnathus Chace, 1937
  • Potamalpheops Powell, 1979
  • Prionalpheus Banner et Banner, 1960 フドウノテッポウエビ属
  • Pseudalpheopsis Anker, 2007
  • Pseudathanas Bruce, 1983
  • Pterocaris Heller, 1862
  • Racilius Paul'son, 1875 アザミサンゴテッポウエビ属
  • Richalpheus Anker et Jeng, 2006
  • Rugathanas Anker et Jeng, 2007
  • Salmoneus Holthuis, 1955 ノコギリテッポウエビ属
  • Stenalpheops Miya, 1997
  • Synalpheus Bate, 1888 ツノテッポウエビ属 - ツノテッポウエビミドリツノテッポウエビ、サンゴツノテッポウエビ、コマチテッポウエビ、トゲトサカテッポウエビなど多数
  • Thuylamea Nguyên, 2001
  • Triacanthoneus Anker, 2010
  • Vexillipar Chace, 1988 シンエンテッポウエビ属
  • Yagerocaris Kensley, 1988

参考文献

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  1. ^ a b c d e f g h i j 三宅貞祥,1982.『原色日本大型甲殻類図鑑』(I), 保育社. ISBN 4586300620
  2. ^ a b c d 武田正倫ほか, 1999. 『学生版 日本動物図鑑』. 内田亨監修, 北隆館 ISBN 4832600427
  3. ^ a b c d e 小林安雅, 2000. 『ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物』. 武田正倫監修, 山と渓谷社. ISBN 4635062260
  4. ^ a b c d 武田正倫ほか,2006.『新装版山渓フィールドブックス3 海辺の生きもの』奥谷喬司編著・楚山勇写真 山と溪谷社. ISBN 4635060608
  5. ^ a b c d 武田正倫ほか,2006.『新装版山渓フィールドブックス4 サンゴ礁の生きもの』奥谷喬司編著・楚山勇写真 山と溪谷社. ISBN 4635060616
  6. ^ a b c 三浦知之, 2007.『干潟の生きもの図鑑』, 南方新社. ISBN 9784861241390
  7. ^ World Register of Marine Species Alpheidae Rafinesque, 1815. 2015.1.19閲覧