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チョウチンアンコウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チョウチンアンコウ
水槽内のチョウチンアンコウ
保全状況評価[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 側棘鰭上目 Paracanthopterygii
: アンコウ目 Lophiiformes
亜目 : チョウチンアンコウ亜目 Ceratioidei
: チョウチンアンコウ科
Himantolophidae
: チョウチンアンコウ属
Himantolophus
: チョウチンアンコウ
H. sagamius
学名
Himantolophus sagamius
S.Tanaka, 1918
和名
チョウチンアンコウ
英名
Pacific footballfish

チョウチンアンコウ学名Himantolophus sagamius[4]は、アンコウ目チョウチンアンコウ科に属する魚類の一種。丸みを帯びた体型と、餌を誘うために用いられる頭部の誘引突起(イリシウム)を特徴とし、深海魚として比較的よく知られた存在である。

概要

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主に大西洋深海に分布し、カリブ海などの熱帯域からグリーンランドアイスランドのような極圏付近までの広範囲に生息する[5]太平洋インド洋からの記録もあるものの、その数は非常に少ない[5]。生息水深ははっきりしていないが、熱帯・亜熱帯域の中層(特に水深200-800 m)から捕獲されることが多い。一方で、大型の個体はより北方の海域から底引き網によって、または漂着個体として得られる傾向がある[5]

およそ160種が含まれるチョウチンアンコウ類の中で、最初(1837年)に記載されたが本種である[5]基準標本は1833年にグリーンランドの海岸に打ち上げられた漂着個体であるが、海鳥による食害を受けたため保存状態は非常に悪く、現存しているのは誘引突起の一部のみである[6][5]。以降、2009年までに143個体(変態後の雌)が標本として記録されているが、これは科全体について得られた全標本のうちの三分の一を超える数であり、チョウチンアンコウ科の中で最もよく研究された種となっている[5]

生態

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1967年2月、鎌倉の海岸に打ち上げられたチョウチンアンコウが江の島水族館で8日間飼育観察された際に、誘引突起から発光液を噴出する様子が世界で初めて観察された。一回に噴出された発光液は、海水中において、魚体とほぼ同等の範囲に広がる程度の量であったという。また、その発光は、海水中に噴出された後には徐々に弱まり、ついには消光したと報じられている[7]。発光液の放出には、獲物を捕食する際に相手の目を眩ますなどの効果があるのではないかと推定されている。

上記の鎌倉産の個体の死後、その主発光器内部から得た組織を分離源として行われた培養試験において、発光バクテリアが分離・培養されていないところから、本種の発光は、自身で生産した発光物質によるものであり、発光バクテリアの共生によるものではないとみられていた[8]。しかし、後に本種の発光は難培養性の共生ビブリオ属細菌によるものであることが明らかにされている[9]深海魚#共生発光を参照)。

なお、上記の個体は死後に液浸標本とされ、現在では新江ノ島水族館で展示されている[8]

形態

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1887年に描かれたチョウチンアンコウの骨格図

チョウチンアンコウは丸みを帯びた体型をしており、体表は小さないぼ状突起によって覆われる。体色は灰色ないし黒褐色で、これまでに得られた雌の体長は3.2-46.5 cmの範囲であった[5][10]背鰭・臀鰭・胸鰭の鰭条数はそれぞれ5本・4本・14-18本。

誘引突起は背鰭第一棘が変形したもので、本科の場合その長さは体長の半分程度であることが多い[5]。誘引突起の先端には膨隆した擬餌状体(エスカ)と、そこから分岐した10本の皮弁がある[11]。擬餌状体の形態と、体長と比較した皮弁の長さの割合が、チョウチンアンコウ科の他の仲間から本種を識別するための重要な形質となっている。太平洋を主な生息域とする H. groenlandicus (Atlantic footballfish) とは特に形態が類似しているため、小型の個体では区別が難しい[5]

雄は雌よりも極端に小さい矮雄(わいゆう)であるが、体長は4 cm近くに達し、雌への寄生をしない自由生活性の矮雄としては最も大きく成長する[12]。チョウチンアンコウ科に属する種の雄は形態学的な特徴に乏しく、これまでに本種の雄として確実に同定された個体は記録されていない[5]。これらの雄個体群はいくつかのグループとして分類されており、本種は「H. brevirostris Group」に含まれるとみられている[5]

ギャラリー

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出典・脚注

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  1. ^ Appendices I, II and III<https://cites.org/eng>(download 22/01/2020)
  2. ^ UNEP (2020). Chelonia mydas. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (download 22/01/2020)
  3. ^ Seminoff, J.A. (Southwest Fisheries Science Center, U.S.) 2004. Chelonia mydas. The IUCN Red List of Threatened Species 2004: e.T4615A11037468. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2004.RLTS.T4615A11037468.en. Downloaded on 22 January 2020.
  4. ^ 日本産魚類全種リスト これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名”. 本村浩之. 2022年12月2日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 『Oceanic Anglerfishes』 pp.334-336
  6. ^ 『海の動物百科3 魚類II』 pp.98-99
  7. ^ Haneda, Y., 1968. Observations on the luminescence of Himantolophus groenlandicus. Science Reports of Yokosuka City Museum 14: 1-6.
  8. ^ a b 羽根田弥太、1972.発光生物の話(よみもの動物記). 230 pp. 北隆館、東京. ISBN 9-7848-32601-14-7
  9. ^ Haygood MG (1993). “Light organ symbioses in fishes”. Critical Rev. Microbiol. 19: 191-216. doi:10.3109/10408419309113529. PMID 8305135. 
  10. ^ 最大全長は60cmとされている(『日本の海水魚』 p.146)。
  11. ^ 『日本の海水魚』 p.146
  12. ^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.256-257

参考文献

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  • Nelson, J. S., 2006. 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc., Hoboken, New JerseyISBN 0-471-25031-7
  • Pietsch, T. W., 2009. 『Oceanic Anglerfishes: Extraordinary Diversity in the Deep Sea』. xii+557 pp. University of California Press, Berkeley, California. ISBN 978-0-520-25542-5
  • Campbell, A., and J. Dawes編、松浦啓一監訳 『海の動物百科3 魚類II』 朝倉書店 2007年(原著2004年) ISBN 978-4-254-17697-1
  • 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2

関連項目

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外部リンク

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