アラビア語チュニジア方言
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(チュニジア・アラビア語から転送)
アラビア語チュニジア方言 | |
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تونسي | |
話される国 | チュニジア |
話者数 | 11,000,000人 |
言語系統 | |
言語コード | |
ISO 639-3 |
aeb |
アラビア語チュニジア方言(アラビアごチュニジアほうげん、英: Tunisian Arabic)は、アラビア語の口語(アーンミーヤ)のひとつで、マグリブ方言に分類される言語。チュニジアで話されている。一部の書籍では「チュニジア語」とも呼ばれる[1]。
国家の公用語である正則アラビア語(フスハー)と共に1,100万人のチュニジア人によって話される。正則アラビア語と区別するため、話者は دارجة dèrja [dɛːrʒæ] (方言)またはtounsi [tuːnsi](チュニジアの)と呼ぶ。
語彙にはフランス植民地時代のチュニジアへの入植者の言語だったフランス語やイタリア語、スペイン語などのロマンス諸語起源の語をも含む。
分布
[編集]チュニジアの地理的な条件から、チュニジア方言は「連続した」アラビア語の他の方言を持つ隣国リビアやアルジェリアに及んでいる。またチュニジア移民の居住地が存在するドイツ、ベルギー、フランスなどのヨーロッパにも存在は及んでいる。
方言
[編集]アラビア語チュニジア方言は以下のように細分化される[2]。
- 定住民方言
- 都市方言
- チュニス方言 (aeb-tun)
- スファックス方言 (aeb-sfa)
- 村落方言
- サーヘル方言 (aeb-sah)
- 都市方言
- ベドウィン方言
- バヌー・ヒラール系方言
- South-Western Tunisian (aeb-sow)
- バヌー・スライム系方言
- South-Eastern Tunisian (aeb-sou)
- North-Western Tunisian (aeb-nor)
- バヌー・ヒラール系方言
これらのうち、2004年に行われた調査によれば少なくともチュニジア人男性の間ではチュニス方言が全国的に用いられる平準化の傾向が見られると指摘されている[3]。これにはアラビア語圏の中でチュニジアが比較的小国の部類に属すること、マグリブ諸国の中でも特にベルベル人の割合が低く元々ほぼ全国的にアラビア語化が進行していたこと、マグリブ方言の東西の境界上に位置するがゆえの方言の多様性により方言間の共通語の需要が高かったこと、各種主要メディアがチュニスに拠点を置いていることなどの要因が挙げられる[4]。
主な特徴
[編集]発音面
[編集]- ق - フスハーの/q/がベドウィン方言において有声軟口蓋破裂音/g/に変化している。都市方言では多くの場合/q/の発音を保っているものの、ベドウィン方言からの借用語についてはこの限りではない[5]。
- 有声子音と無声子音が隣り合わせると、後側にある子音に同化する[6]。
- 有声咽頭摩擦音/ʕ/で終わる語に無声声門摩擦音/h/が続いた場合、両者が融合して無声咽頭摩擦音の長子音/ħː/として発音する。
- スファックス方言を除く主な都市方言において二重母音の/ai/は/iː/と、/au/は/uː/と長母音化する[7][8]。一方、村落方言では/ai/は/eː/と、/au/は/oː/と発音される[3]。
- フスハーの短母音のうち、/a/は/e/と、/u/は/o/と発音する場合がある[8]。
- フスハーの長母音のうち、/aː/は前後に咽頭化音や喉音がない場合に/eː/と発音する[8]。
参考文献
[編集]- 武岡悟『旅の指差し会話帳77 チュニジア』情報センター出版局、2008年3月6日。ISBN 978-4-7958-3623-5。
- べクリ・アブデルモナム『まずはこれだけ チュニジア語』国際語学社、2010年3月23日。ISBN 978-4-87731-507-8。
- 熊切拓『アラビア語チュニス方言の文法研究否定と非現実モダリティ』 187巻、ひつじ書房〈ひつじ研究叢書<言語編>〉、2022年2月21日。ISBN 978-4-8234-1112-0。