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チャムグループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

チャムグループ(英語:Chum-group)とは、保坂亨岡村達也によって提唱された全3段階の児童期から青年期にかけての友人関係の発達段階のうち、2番目の段階であり[1]中学生ごろによくみられる[2]。友人集団で互いの共通点や類似点を言葉によって確かめ合い、同質性が重要視される[1]

概要

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ギャンググループ[注釈 1]に続く発達段階がチャムグループである。いわゆる「仲良しグループ」であり、興味・趣味や部活動によって結ばれ、自らの境遇や感情などの共通点を言葉で確かめ合う特徴があり[1]、主に学校内での活動が中心である[3]。ギャンググループが外面的な同一行動による一体感の確認を特徴とする一方で、チャムグループは内面的な類似性の同一言語での確認による一体感を特徴とする[2][4]。チャムグループの次の発達段階は、互いの個性を認め合う共存状態のピアグループである[2]。なお、チャムグループの「チャム」は「親友」を意味する"Chum"から来ており、サリヴァンによる"Chum-ship"(親友関係)の研究が代表的である[5]

ギャンググループが男子児童において特徴的だった一方、チャムグループは女子生徒において顕著に見られ[1]、男子生徒においてはギャンググループからピアグループに発展する[注釈 2][6]。また、チャムグループの形成による「同類である」という感じは、安心感や精神的安定がもたらされる[7]

チャムグループの特徴的な行動としては、交換日記や授業中にまわされる秘密の手紙が挙げられる[1]。また、友達に合わせる同調圧力が極めて高く、万引き喫煙などの反社会的行動が仲間の圧力によって黙認されるほか、評価されることがある[3]

チャムグループの肥大化

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保坂亨は2000年の時点の傾向として、ギャンググループの消失とチャムグループの肥大化、ピアグループの遅延化を指摘している[8]ギャングエイジを経験しないまま中学生となり、チャムグループを形成すると、行動を通じた集団への一体感を経験していないため、いじめや排斥によって一体感を得る傾向にあるほか[3]、関係の希薄化や強い同調性が見られるようになる[9]。保坂は、中学生によるいじめはチャムグループ段階で行われる失われた「ギャンググループ」体験であるとしている[8]

また、チャムグループに見られる同質性、同調性、排他性を求める心理状態が高校生以上になっても続く場合もある[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ 小学校中学年ごろからみられ、同一行動を特徴とした仲間関係であり、排他的で閉鎖的である[1]
  2. ^ 男子生徒はギャンググループの関係から互いの相違点を理解し、互いを尊重する関係に変化する[6]

出典

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  1. ^ a b c d e f 木村 2017, p. 97.
  2. ^ a b c 保坂・岡村 1992, p. 114.
  3. ^ a b c 杉江 2007, p. 56.
  4. ^ 黒沢ほか 2005, p. 13.
  5. ^ 須藤 2008, p. 626.
  6. ^ a b 國枝・古橋 2006, p. 117.
  7. ^ 須藤 2008, p. 628.
  8. ^ a b 吉田・善明 2016, p. 30.
  9. ^ 山口ほか 2017, p. 160.
  10. ^ 木村 2017, p. 98.

参考文献

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  • 木村洋太「大学生のチャム・グループ傾向を配慮した学生相談についての一考察」『桜花学園大学学芸学部研究紀要』第9巻、桜花学園大学学芸学部、93-100頁、2017年。 
  • 黒沢幸子・有本和晃「女子中学生の仲間関係のプロフィールとストレスとの関連について」『目白大学心理学研究』第1巻、目白大学、13-21頁、2005年。 
  • 國枝幹子・古橋啓介「児童期における友人関係の発達」『福岡県立大学人間社会学部紀要』第15巻、福岡県立大学、105-118頁、2006年11月30日。 
  • 須藤春佳「前青年期の親しい同性友人関係"chumship"の心理学的意義について : 発達的・臨床的観点からの検討」『京都大学大学院教育学研究科紀要』第54巻、京都大学大学院教育学研究科、626-638頁、2008年3月31日。 
  • 杉江修治 編『教育心理学』学文社〈[教師教育テキストシリーズ4]〉、2007年4月20日。ISBN 978-4-7620-1654-7 
  • 吉田知功・善明宣夫「中学生のいじめ関連行動と友だちとの関係」『教職教育研究:教職教育研究センター紀要』第21巻、関西学院大学教職教育研究センター、29-37頁、2016年3月31日。 
  • 保坂亨・岡村達也「キャンパス・エンカウンター・グループの意義とその実施上の試案」『千葉大学教育学部研究紀要』第40巻、千葉大学教育学部、113-122頁、1992年2月28日。 
  • 山口豊一・西野秀一郎・市川実咲・関知重美・下村麻衣・高橋美久・野島一彦「中学生に対する構成的グループ・エンカウンターの効果に関する研究―固定化された人間関係の活性化を目指して―」『跡見学園女子大学文学部紀要』第52巻、跡見学園女子大学、2017年3月。 

関連項目

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