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チメドリ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チメドリ科
メジロチメドリ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Passeri
小目 : スズメ小目 Passerida
上科 : ウグイス上科 Sylvioidea
: チメドリ科 Timaliidae sensu AOU
学名
Timaliidae Vigors et Horsfield1827[1]
Timaliidae Horsfield1821[2]
シノニム

Timaliinae Vigors et Horsfield1827[1]

和名
チメドリ(知目鳥)
英名
Babblers
Old World Babblers
亜科(狭義の科)

チメドリ科(チメドリか、学名 Timaliidae)は、鳥類スズメ目の科である。

チメドリ科の範囲については諸説あるが、ここではアメリカ鳥学会 (AOU) が採用した、系統的でかつ伝統分類に比較的近い範囲を基準とする[3][4]

チメドリ(知目鳥)と総称されるが、狭義にはその1種をチメドリと呼ぶ。多様な科であり、マルハシガビチョウソウシチョウヤブドリシマドリなども含まれる。

特徴

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旧大陸の中低緯度(主に熱帯)に生息する。なお、アメリカ西海岸にいるミソサザイモドキ Chamaea は、チメドリ科からダルマエナガ科に移された。

全長9–41cm[5]には斑点がなく、季節による羽毛の生え変わりはなく、かかとがあり、くちばしの基部にヒゲがある[6]

葦原草原竹藪などに群れを作る。飛翔能力は高くなく渡りはしない。主に昆虫食だが、少々の種子食もする。

系統と分類

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系統樹は Gelang et al. (2009)[6]による。Clade I は Johansson et al. (2008)[7]が仮に命名したウグイス上科の下位系統である。

Clade I

ウグイス科 + エナガ科 + メボソムシクイ科

チメドリ科
s. Gelang
チメドリ科

アカガシラチメドリ亜科 Timaliinae

チメドリ亜科 Pellorneinae

ガビチョウ亜科 Leiothrichinae

メジロ科 Zosteropidae

ダルマエナガ科 Sylviidae

ここで扱う範囲のチメドリ科はメジロ科ダルマエナガ科と順次姉妹群であり、3つの亜科に分かれる。この範囲のチドリ科はアメリカ鳥学会 (AOU) が採用している(ただしAOUは亜科を採用していない)。

メジロ科をチメドリ科メジロ亜科 Zosteropinae としてチメドリ科に4亜科を含めることもあり[6]、その場合のチメドリ科の姉妹群はダルマエナガ科である。

チメドリ科の3亜科(およびメジロ科)をそれぞれ独立科とすることもあり、国際鳥類学会議 (IOC) が採用している。

なお、アカガシラチメドリ亜科 Timaliinae はかつてのチメドリ亜科と同じ学名だが、この亜科はチメドリを含まないので、チメドリ亜科とは呼べない。また、かつてガビチョウ亜科 Garrulacinae という分類群が使われたことがあるが、現在のガビチョウ亜科はソウシチョウ類が加わったことから命名規約の「先取権の原則」により学名が変わっており、直訳すればソウシチョウ亜科となる。

分類対照表を以下に示す。「※」はその分類群の一部のみ。

現在の系統分類 伝統分類
(各種)
Sibley & Ahlquist
IOC AOU(亜科はGelang) Gelang
アカガシラチメドリ科



アカガシラチメドリ亜科



アカガシラチメドリ亜科














チメドリ科 チメドリ亜科 チメドリ亜科
ガビチョウ科 ガビチョウ亜科 ガビチョウ亜科
ガビチョウ亜科
メジロ科 メジロ科 メジロ亜科
メジロ科 メジロ科
ダルマエナガ科 ダルマエナガ科 ダルマエナガ科



ミソサザイモドキ族
ダルマエナガ科

歴史

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チメドリ類は19世紀には単独で科を作り、LiotrichidaeTimeliidae という科名も使われたが、Hartert (1910) により拡大されたヒタキ科 Muscicapinae に含められた。Delacour (1946) はヒタキ科の中にチメドリ亜科 Timaliinae を定義し、Amadon (1957) が Hartert のヒタキ科を解体すると、これはチメドリ科となった。

Delacour (1946) はチメドリ亜科(チメドリ科)を

の5族に分け、Delacour (1950) は

を加えた6族とした。ただし、ミソサザイモドキ族とハゲチメドリ族をチメドリ亜科・チメドリ科に含めるかどうかについては論争があり、Wetmore (1960) はチメドリ科からミソサザイモドキ科 Chamaeidae とダルマエナガ科 Paradoxornithidae を独立させた[8]。ダルマエナガ類を含む場合は日本ではダルマエナガ科と呼ぶこともあった。

Sibley & Ahlquist (1990) はチメドリ類(ミソサザイモドキ族を含む、ハゲチメドリ族は含まない)にズグロムシクイ属 Sylvia を加えた群を単系統だと考えたが、それに分類群は与えず、ウグイス科 Sylviidae 内の2亜科に分割した。

  • ダルマエナガ亜科(チメドリ亜科) Sylviinae
    • ミソサザイモドキ族 Chamaeini - ミソサザイモドキ
    • ズグロムシクイ族 Sylviini - ズグロムシクイ属
    • ダルマエナガ族(チメドリ族) Timaliini - チメドリ類の大半・ダルマエナガ類
  • ガビチョウ亜科 Garrulacinae - ガビチョウ類・ヤブドリ属 Liocichla

チメドリ類の大半はズグロムシクイ属と同じ亜科となり、先取権の原則により亜科名は Sylviinae となった。ハゲチメドリ類はこの系統から外された。

Cibois (2003)[9]やそれに続く[10][6]DNAシーケンス系統により、論争のあったダルマエナガ類・ミソサザイモドキ・ハゲチメドリ属・ヒゲガラ属と、論争がなかった典型的なチメドリ類からも一部がチメドリ科から外された。ただし Sibley & Ahlquist のガビチョウ亜科はチメドリ科に含まれ、現在のガビチョウ亜科 Leiothrichinae 内の広い範囲に分散する多系統である。また、コシアカセッカ Graminicolaオオセッカ科 Megaluridae からチメドリ科アカガシラチメドリ亜科に移された。

ハゲチメドリ属はハゲチメドリ科 Picathartidae に、ヒゲガラ属 Panurus はウグイス上科のヒゲガラ科 Panuridae に分離された。さらに、ヒメサザイチメドリ属 Pnoepyga がウグイス上科のヒメサザイチメドリ科 Pnoepygidae に分離された。

ダルマエナガ類とミソサザイモドキはズグロムシクイ属と近縁であり、合わせてダルマエナガ科 Sylviidae となった。かつてのチメドリ属 Alcippe は3–5分割(IOCでは3分割)され、うち2属はダルマエナガ科に移された。ほかにも数属が移された。

カンムリチメドリ属 Yuhinaメジロ科に移された。モリチメドリ属 Stachyris は5分割され、うち3属はメジロ科に移された。

特異な例としては、オナガサザイチメドリ属のシロボシサザイチメドリが、単形科 Elachuridaeとして独立した。この科はスズメ小目内においても基底部で枝分かれした系統であり、独自の上科の地位も認めうるとされる。[11]

属と種

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国際鳥類学会 (IOC)[12]より。ただしIOCの科を亜科とした。3亜科39属259種。

アカガシラチメドリ亜科 Timaliinae

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9属56種。

チメドリ亜科 Pellorneinae

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15属70種。

ガビチョウ亜科 Leiothrichinae

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13属133種。

出典

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  1. ^ a b “Timaliidae”, Global Name Index, 0.9.28, http://gni.globalnames.org/data_sources/19?search_term=Timaliidae&commit=Search 
  2. ^ “Family summary for Timaliidae”, AnimalBase, 18-07-2005, http://www.animalbase.uni-goettingen.de/zooweb/servlet/AnimalBase/home/family?id=398 
  3. ^ Billerman, Shawn; Lovette, Irby; et al. (2009), AOU N&MA Check-list Committee, ed., Alter the composition of the Timaliidae by merging Zosterops and moving the Wrentit Chamaea fasciata to the Sylviidae, p. 513–515, http://www.aou.org/committees/nacc/proposals/2009-C.pdf 
  4. ^ AOU, ed., Check-list of North American Birds, http://www.aou.org/checklist/north/full.php 
  5. ^ 竹下信雄, “チメドリ”, 日本大百科全書 (Yahoo!百科事典 ed.), 小学館, http://100.yahoo.co.jp/detail/チメドリ/ 
  6. ^ a b c d Gelang, M.; Cibois, A.; et al. (2009), “Phylogeny of babblers (Aves, Passeriformes): major lineages, family limits and classification”, Zoologica Scripta 38 (3): 225–236, doi:10.1111/j.1463-6409.2008.00374.x, http://www.nrm.se/download/18.2656c41712139f1fb5b80006026/Gelang+et+al+Timaliidae+ZSC+09.pdf 
  7. ^ Johansson, U.S.; Fjeldså, J.; Bowie, Rauri C.K. (2008), “Phylogenetic relationships within Passerida (Aves: Passeriformes): A review and a new molecular phylogeny based on three nuclear intron markers”, Mol. Phylogenet. Evol. 48: 858?876, http://www.nrm.se/download/18.7d9d550411abf68c801800015111/Johansson+et+al+Passerida+2008.pdf 
  8. ^ Sibley, C.G. (1970), Family Timaliidae, Babblers, “A Comparative Study of the Egg-White Proteins of Passerine Birds”, Peabody Museum of Natural History and Department of Biology, Yale University, Bulletin 32 (New Heaven, CT)  - 1970年までの分類史は主にこの文献による
  9. ^ Cibois, Alice (2003), “Mitochondrial DNA phylogeny of babblers (Timaliidae)”, Auk 120: 35–54, http://www.jstor.org/pss/4090138 
  10. ^ Alström, P.; Ericson, P.G.P.; et al. (2006), “Phylogeny and classiWcation of the avian superfamily Sylvioidea”, Mol. Phylogenet. Evol. 38: 381–397, http://www.nrm.se/download/18.4e1d3ca810c24ddc7038000946/Alstr%C3%B6m+et+al+Sylvioidea+MPEV+2006.pdf 
  11. ^ Alström, Per; Hooper, Daniel M.; et al.. (2014), “Discovery of a relict lineage and monotypic family of passerine birds”, Biol. Lett. 10 (3), http://rsbl.royalsocietypublishing.org/content/10/3/20131067.full.pdf+html?sid=cf0cc798-5a9e-44ab-b2fd-7529b38a804b 
  12. ^ Gill, F.; Donsker, D., eds. (2010), “Old World Warblers & babblers”, IOC World Bird Names, version 2.6, http://www.worldbirdnames.org/n-warblers.html