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ダール川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ダール川
ダール川 2012年撮影
西ダール川と東ダール川の合流点。ここから下流がダール川。
延長 520 km
平均流量 348[1] m3/s
流域面積 29,000 km2
水源 ダーラナ地方西部
河口・合流先 ボスニア湾イェヴレ南東)
流域  スウェーデン
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ダール川(ダールがわ、スウェーデン語: Dalälvenダーラ川とも表記)は、スウェーデンの中南部、ダーラナ地方ウップランド地方を流れる河川である[n 1]。総延長520km、流域面積は29,000km2。スウェーデン国内では3番目に長く、流域面積は第4位の河川である[2][3][n 2]

地理

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ダール川の流路

上流部はエステルダール川英語版スウェーデン語版(東ダール川)とヴェステルダール川英語版スウェーデン語版(西ダール川)の2大支流に分かれる。いずれもダーラナ地方西部、スウェーデンとノルウェーの国境付近のスカンディナヴィア山脈中部に端を発し、東ダール川の源流部はノルウェー国内のヘードマルク県にかかっている。「ダーラナ地方」という地名は、この両支流の名に由来する[2][4]

両支流は概ね並行して、スウェーデン中南部の針葉樹林帯を南東方向に流れる。東ダール川は両岸の崖が100mに達する深い氷食谷を形成し、途中でダーラナ地方の中心であるシリヤン湖へ入る。シリヤン湖付近の谷は盆地状を呈し、同湖を通過後は起伏の緩やかな森林地方を流れる。シリヤン湖の下流30km付近、ダーラナ地方南部のユールオース英語版スウェーデン語版付近で西ダール川と合流してダール川となり、ボーレンゲ英語版スウェーデン語版を通過する。河口から70~80kmのアーヴェスタ英語版スウェーデン語版付近で北東方向に流れを変え、イェヴレの東方やや南でボスニア湾へ流入する。アーヴェスタより下流は湖が連続し、滝となっている[2][3][5]

下流部の主要都市は、ボーレンゲ、ヘーデモラ英語版スウェーデン語版、アーヴェスタなど[2]

産業

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トレングスレートダム
20世紀初頭に行われていた木材流送

東ダール川にはダム湖の延長が70kmに及ぶトレングスレートダム英語版スウェーデン語版が設けられているなど水力発電が盛んである。ダール川流域には、シリヤン湖を除いても40を超える発電所と13の大規模ダムがあり[6]、流域全体でスウェーデン国内発電量の8%を賄っている[2]。かつては木材の筏流しの流路としても重要であった[4]

ファールンの銅山跡地

流域には亜鉛などが豊富に埋蔵されており[7]、特に銅山で栄えたファールンは、鉱山跡地が世界遺産となっている。河口から20km程度上流のサンドビーケン英語版スウェーデン語版は世界的工具メーカーサンドビックの拠点であり、スウェーデン鋼製の切削機器の産地として発達した[4]。シリヤン湖畔のモーラも刃物の町で、モーラ・ナイフで知られる。一方で鉱毒の問題もあり、中流以下では流域の鉱山を原因とした重金属リンなどにより河水が汚染されている[2]

モーラは国際的クロスカントリースキー大会のバーサーロペット英語版スウェーデン語版が開催される都市としても知られ、世界遺産の銅山街ファールンとともに上流域の観光地としてよく知られている[3]

シリヤン湖付近は重要な農業地帯となっている。下流部は滝が多く舟運には不向きである[5]

自然保護

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ダール川の下流部は概ねノールランドスヴェアランド分布境界線をなし、両者の生物相が接触する場所となっている。この一帯はダール川下流部生物圏保護区スウェーデン語版として、2011年にユネスコの指定する生物圏保護区となっている[8][9]。主にフェルネボフィエルデン国立公園英語版からなる一帯は北方の針葉樹林オークシナノキ属などからなる落葉広葉樹林地域の境界線で、森林草地水辺などの生態系には7種のキツツキフクロウミサゴオオハクチョウなどの鳥類、多数のヘラジカノロジカノウサギテン属およびオオヤマネコビーバーカワウソクマなどの哺乳類、ヨーロッパツヤハダクワガタ英語版ヒゲナガモモブトカミキリ英語版などの昆虫類が生息しており、オオカミクズリもこの地域を通過することがある[9]

また、本流を含む中流部のホヴランスウェーデン語版地域と下流部のフェルネボフィエルデンスウェーデン語版には湿地が多く、それぞれラムサール条約に登録されている。スゲ属が多く生えるホヴラン湿地はオオハム、オオハクチョウ、クロヅルなどの休憩地とダイシャクシギウズラクイナアカマシコなどの繁殖地である[10]。フェルネボフィエルデン国立公園一帯は広く浅い湖が連なっており、泥炭地フェン牧草地が発達している。一帯には多くの種の鳥類と魚類のほか、スウェーデン国内で最大個体数のロシアヤブカスウェーデン語版の集団が生息している[11]

文化

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スウェーデンの作家セルマ・ラーゲルレーヴによる児童文学『ニルスのふしぎな旅』にダール川が登場する[12]

画像

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脚注

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  1. ^ 一部のみイェストリークランド地方であるイェヴレボリ県も通過する。
  2. ^ 資料によって長さが国内2番目とされる場合もある(例:WorldAtlasstatista)。これはトルネ川フィンランドとの共有であることや、イェータ川ヴェーネルン湖クラール川英語版と一体の河川と見なすかにより解釈が分かれるため。

出典

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  1. ^ Sveriges vattendrag - smhi,2010.(2024-04-29閲覧).
  2. ^ a b c d e f 塚田(2016,『世界地名大事典』)。
  3. ^ a b c 田口(1987,『日本大百科全書』)。
  4. ^ a b c 太田(1988/2007,『世界大百科事典』)。
  5. ^ a b 『コンサイス 外国地名事典』(1998)。
  6. ^ Schematisk bild av Dalälven” (pdf). Vattenregleringsföretagen (2022年11月2日). 2024年4月29日閲覧。
  7. ^ 『ブリタニカ』(1974/1991)。
  8. ^ NEDRE DALÄLVEN
  9. ^ a b Nedre Dalälven River Landscape”. UNESCO. 2024年5月1日閲覧。
  10. ^ Hovranområdet | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2017年10月4日). 2024年5月1日閲覧。
  11. ^ Färnebofjärden | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2017年3月31日). 2024年5月1日閲覧。
  12. ^ 蟹澤聰史文学作品の舞台・背景となった地質学 -6- 『ニルスのふしぎな旅』『ペール・ギュント』と北欧の地質」『地質ニュース』第613号、産総研地質調査総合センター、2005年9月、48-49頁。  地質ニュース2005年9月号

参考文献

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  • 塚田秀雄 「ダール川」、『世界地名大事典 6 ヨーロッパ・ロシア〈サ-ハ〉』 朝倉書店、2016年、1753頁。
  • 田口雄作 「ダール川」、『日本大百科全書 14』 小学館、1987年、920頁。
  • 太田昌秀 「ダーラ[川]」、『世界大百科事典 17』 平凡社、1988年初版/2007年改訂新版、415頁。
  • 「ダール川」、『ブリタニカ国際大百科事典 4 小項目事典TBSブリタニカ、1974年初版/1991年第2版改訂、233頁。
  • 「ダール川」、『コンサイス 外国地名事典 〈第3版〉』 三省堂、1998年、550頁。