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輝板

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タペタムから転送)
子牛の輝板
カメラのフラッシュを反射する猫の目。片側の目は、網膜の血管を反射して赤目現象を起こしている。
カメラのフラッシュを目の輝板で反射するヨダカ

輝板(きばん、: tapetum)は、網膜後ろの網膜色素上皮脈絡膜に存在し、網膜を通過後の光を反射して再び網膜の光受容体を活性化させるために存在する金属光沢をもつ反射板である[1][2]輝膜(きまく)とも呼ばれ、英語からタペタム(またはタペータム)ともよばれる。

明るい場所で活動する動物には見られず、夜行性薄明薄暮性の動物、深海のような視界の悪い無光層でも視界を活用する深海魚などに見られる。大きく分けて以下の4種類ある[3]

  1. 網膜輝板(retinal tapetum) ‐ 例:硬骨魚類、ワニ類、有袋類、オオコウモリ
  2. 脈絡膜グアニン輝板(choroidal guanine tapetum) ‐ 例:軟骨魚類
  3. 脈絡膜細胞性輝板(choroidal tapetum cellulosum) ‐ 例:肉食動物、げっ歯類、鯨類
  4. 脈絡膜線維性輝板(choroidal tapetum fibrosum) ‐ 例:ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ

深海魚の魚眼では、網膜の桿体層の後ろの網膜色素上皮脈絡膜グアニンなどの金属光沢のある結晶を持つものが多い[1]

細胞性輝板

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細胞性輝板は輝板細胞が網膜面と平行に層板上に積み重なった構造物であり、食肉類[4][5]鯨類[6]原猿類に存在する。夜にネコの目が光って見えるのはこのため。

輝板は、肉食獣では亜鉛とシステイン複合体の結晶、キツネザルではリボフラビンからなる[7]

亜鉛を多く含むため、キレート作用のある薬剤で変色したり反射率の低下が起きる[8][9]

線維性輝板

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線維性輝板は、少数の線維芽細胞を含む規則的にならんだ膠原線維層(コラーゲン繊維)からなる構造物であり[10]有蹄類[11][12]に存在する。網膜を通過した光線の内、網膜最外層の色素上皮細胞および脈絡膜に吸収されず、輝板に達したものはここで反射して再び網膜の視神経を刺激する。

クモ

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脊椎動物ではない蜘蛛にも、タペタムを持つ種がおり、タペタムの分類は3種類ある[13]

  1. Primitive type - 網膜の後ろに単純な反射膜がある (例:ハラフシグモ亜目トタテグモ下目など)
  2. カヌー型 ‐ 神経線維のための隙間によって隔てられた2枚の外側壁(例:コガネグモ科ヒメグモ科など)
  3. 格子型 ‐ 格子型となった反射板を形成したもの(例:キシダグモ科など)

脚注

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  1. ^ a b 田村保 (東海大海洋) , 丹羽宏 (名古屋大農)「深海の魚眼とウキブクロとスクワレン」『化学と生物』第24巻第5号、1986年、326–333頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.24.326ISSN 0453-073X 
  2. ^ 中村眼科. “動物の目が光る理由”. 医療法人 中村眼科. 2022年9月25日閲覧。
  3. ^ Ollivier, F. J.; Samuelson, D. A.; Brooks, D. E.; Lewis, P. A.; Kallberg, M. E.; Komáromy, A. M. (2004-03). “Comparative morphology of the tapetum lucidum (among selected species)” (英語). Veterinary Ophthalmology 7 (1): 11–22. doi:10.1111/j.1463-5224.2004.00318.x. ISSN 1463-5216. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1463-5224.2004.00318.x. 
  4. ^ 山植, 康弘『イヌ眼底で観察される細胞性輝板の形態学的研究』(pdf)山口大学、2015年3月16日。獣博甲第345号。 国立国会図書館内限定公開。
  5. ^ 参天製薬株式会社. “猫の目の仕組み・不思議:暗闇のなかでキラリと光る印象的な大きな瞳”. 参天製薬. 2022年9月25日閲覧。
  6. ^ 市立しものせき水族館「海響館」. “第193回「イルカの眼」”. 公益財団法人下関海洋科学アカデミー. 2022年9月25日閲覧。
  7. ^ Pirie, Antoinette (1959-04). “Crystals of Riboflavin making up the Tapetum Lucidum in the Eye of a Lemur” (英語). Nature 183 (4666): 985–986. doi:10.1038/183985a0. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/183985a0. 
  8. ^ 荒木, 智陽「3.実験動物における眼科学的検査」2017年9月19日、doi:10.50971/tanigaku.2017.19_61 
  9. ^ 久世, 博「イヌにおけるジンクピリチオン誘発網膜症」1999年、doi:10.11254/jscvo.18.3-4_75 
  10. ^ Bellairs, Ruth; Harkness, MargaretL.R.; Harkness, R.D. (1975-03). “The structure of the tapetum of the eye of the sheep” (英語). Cell and Tissue Research 157 (1). doi:10.1007/BF00223231. ISSN 0302-766X. http://link.springer.com/10.1007/BF00223231. 
  11. ^ Aya, Shinozaki「羊眼球における線維性輝板の分布および網膜色素上皮層との関係」『解剖学雑誌』第85巻第2号、2010年、81頁、ISSN 0022-7722 
  12. ^ 佐野悠人『健常ウマ眼球の組織学的・免疫組織化学的研究 (健常眼球組織と抗原提示細胞の免疫組織化学的検索)ならびにイヌの眼球および口腔内黒色細胞性 腫瘍の悪性度とマクロファージ浸潤に関する研究)』酪農学園大学大学院 獣医学研究科、2015年。 獣医病理・免疫学 指導教員 教授 谷山弘行 2015年度。
  13. ^ Rainer F. Foelix (1996). Biology of Spiders, 2nd ed.. Oxford University Press. pp. 84–85. ISBN 978-0-19-509594-4. https://archive.org/details/biologyofspiders00foel_0/page/84 

参考文献

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  • 日本獣医解剖学会 (編集)『獣医組織学』(改訂第二版)学窓社、2003年。  ISBN 4873621135

関連項目

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