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タイ国鉄KP型ディーゼル機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タイ国鉄KP型ディーゼル機関車
KP型 3121号機
KP型 3121号機
基本情報
運用者 タイ国有鉄道
製造所 クルップ
クラウス=マッファイ
製造年 1969年
製造数 30両
主要諸元
軸配置 Bo-Bo
軌間 1,000 mm
全長 12,800 mm
機関車重量 54.8 t
動力伝達方式 液体式
機関 マイバッハ・メルセデス Mb835DDb12
設計最高速度 90 km/h
定格出力 1,500 PS / 1,400 rpm
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タイ国鉄KP型ディーゼル機関車(タイこくてつKPがたディーゼルきかんしゃ)は、1969年に製造されたタイ国有鉄道液体式ディーゼル機関車である。その車番から3100形と呼ばれる場合もある[1][2]

導入の経緯

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タイ国鉄では、1963年からアメリカゼネラル・エレクトリックGE型を50両、西ドイツヘンシェル製HE型を27両それぞれ投入し、幹線の優等列車牽引用として運用していた。しかしながら、当時は各路線の軌道強化が進んでおらず、動力伝達方式電気式の大型機であるGE型が入線できる線区は限られていた。そのため、軌道強化が遅れた線区の急行列車については、出力では若干劣るものの液体式で軽量なHE型が主に牽引を担当していた。

1960年代末でもまだ軌道強化が遅れた線区が各地に残っていたことから、年々増大する輸送需要への対応と、無煙化の更なる促進に向けて、HE型のような小型軽量で運用線区を選ばない機関車を増強するために製造されたのが本形式である。

車両

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構造

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HE型を含むそれまでの多くの機関車で採用されていたBo-Bo軸配置を踏襲した。また、動力伝達方式に発電機やモーターの重量が嵩む電気式ではなくHE型同様の液体式を採用、自重の軽減に努めるなど、全般的にHE型を下敷きとした設計となっている[注釈 1]

液体変速機はHE型で用いられたヘンシェル製ボイス変速機ではなくクルップの設計によるものを使用した。しかしこの独自設計の変速機は故障が多く、部品調達にも困難が生じたため、後年HE型同様のヘンシェル製のものに交換されている。この他にも製造当初には各種故障が発生し、目標とした最高速度90 km/hに達することが出来なかった。

本形式の導入時には、1952年登場のDA型、1958年登場のHI型、1963年登場のGE型などの電気式ディーゼル機関車と、1963年登場のHE型液体式ディーゼル機関車のように、電気式、液体式双方の近代的な中・大型機がタイ国鉄において共存していた。しかし、液体式である本形式で当初多発した故障が一因となり、タイ国鉄では電気式の方が有利と判断された。また、その後各路線の軌道強化が進み、電気式を採用することによる重量増のデメリットも小さくなったため、国鉄本線用の液体式機関車は本形式が最後となり、以降は長らく電気式のディーゼル機関車のみが導入されることとなる[注釈 2][注釈 3]

車体

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小型で角ばった箱型の車体をしている。前面は庇が飛び出しており、かつての日本国鉄の旧型電機のようなスタイルである[5]。ヘッドライトは当時主流だった白熱球ではなくシールドビームを採用している。

塗装

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登場直後[1]から現在まで、前面周りが黄色、側面は橙色に黄色い帯という塗装を維持している。

運用

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登場当初は先述の通り故障が多発したが、改良後は主幹線にて運用された。

2000年時点では事故廃車となった2両を除く28両全車が現役で、スラ―トターニー周辺やハジャイ周辺などの南本線南部区間にて、区間旅客列車や貨物列車の牽引を担当していた。

2023年現在では1両を除き全て廃車または国外譲渡(後述)されている。3118号機はタイ国鉄において唯一現役の個体で[6]、バンコクのトンブリー機関区に所属している。定期運用は持たないものの、洪水が発生した際などに稀に列車を牽引することがある[注釈 4][6][7]

国外譲渡

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DMIAに譲渡され、工事列車を牽引中のKP型

2016年の下半期に、タイ国鉄内において廃車となった4両が、マレー鉄道の様々な改良工事を担当しているマレーシアの工事・保線会社(Dhaya Maju Infrastructure (Asia) Sdn Berhad:DMIA)[8]へ譲渡された。本形式は、元インド鉄道YDM4型英語版や元日本国鉄JR西日本DD51形と共にSerendah Yard(スレンダ貨物駅の北方)に配置され、主に工事列車の牽引を担当している[9]。塗装は、全体が茶色に塗装され、中央にオレンジ色の太帯を巻いたものである。また、回転灯の追加やタイフォンの移設などが行われている。

DMIAへ譲渡された本形式のうちの1両は、タイ国鉄レッドラインの建設を担当した民間企業によって買い取られ、タイ国内で再度利用された[10]後、2023年1月にはカンボジアロイヤル鉄道へ移籍した[11]。塗装はDMIA時代のものを維持している。

脚注

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注釈

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  1. ^ ただしHE型と比べると約3 t重量が増加している。
  2. ^ その後も1986年製のHAS型(70形)や国鉄所有でない専用線所属機、近年輸入された元JR北海道DD51形のような工事会社所属機など、タイ国内への液体式ディーゼル機関車の導入実績は存在する。しかし、これらはいずれも入換機や工事列車の牽引用として製造・導入されており、国鉄の本線運用を目的としたものではない。
  3. ^ 2022年には新たに蓄電池機関車の試作車が納入され、翌2023年1月に公開された[3][4]
  4. ^ 電気式ディーゼル機関車はモーターなどの電装品を多く抱えており浸水区間を走行できない一方、液体式ディーゼル機関車は浸水区間を走行することが可能なため[6]

出典

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  1. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』1970年12月号 (No.245) p.61 電気車研究会
  2. ^ 『鉄道ピクトリアル』2000年4月号 (No.683) p.101 電気車研究会
  3. ^ ศักดิ์สยาม เปิดตัวรถไฟ EV คันแรกในไทย เตรียมประกอบเพิ่ม 3 คัน” (タイ語). プラチャーチャート・トゥラギット (2023年1月11日). 2023年2月2日閲覧。
  4. ^ มิติใหม่รถไฟไทย EV on Train” (タイ語). プラチャーチャート・トゥラギット (2023年1月18日). 2023年2月2日閲覧。
  5. ^ 『鉄道ピクトリアル』第683号、電気車研究会、2000年4月、101頁。 
  6. ^ a b c โรงเรียนวิศวกรรมรถไฟ(鉄道工科学校)|Facebook” (2022年10月12日). 2023年2月10日閲覧。
  7. ^ ทีมพีอาร์การรถไฟแห่งประเทศไทย(タイ国有鉄道PRチーム)|Facebook” (2022年10月10日). 2023年2月9日閲覧。
  8. ^ ABOUT US|DHAYA MAJU INFRASTRUCTURE (ASIA) SDN BERHAD”. 2023年2月10日閲覧。
  9. ^ EQUIPMENTS|DHAYA MAJU INFRASTRUCTURE (ASIA) SDN BERHAD”. 2023年2月10日閲覧。
  10. ^ โรงเรียนวิศวกรรมรถไฟ(鉄道工科学校)|Facebook” (2020年8月5日). 2023年2月10日閲覧。
  11. ^ Royal Railway Cambodia|Facebook” (2023年1月30日). 2023年2月10日閲覧。

参考文献

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  • 『鉄道ピクトリアル』第683号、電気車研究会、2000年4月、100-103頁。 
  • タイ国鉄のDL/KP型”. タイ国鉄友の会. 2023年2月9日閲覧。

関連項目

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