ゾアハンター
ゾアハンター | |
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ジャンル | 近未来、SF、ハードボイルド、アクション |
小説 | |
著者 | 大迫純一 |
イラスト | 小島文美→BUNBUN |
出版社 | 角川春樹事務所→SBクリエイティブ |
レーベル | GA文庫
ハルキ・ノベルス、ハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズ |
刊行期間 | 2007年9月15日 - 2009年6月15日(GA文庫) |
巻数 | 全7巻(GA文庫)、全5巻絶版(角川春樹事務所) |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | ライトノベル |
『ゾアハンター(Zoahunter)』は、大迫純一のライトノベル作品。イラストは小島文美(ハルキ版)→BUNBUN(GA文庫版)が担当。かつては角川春樹事務所より5巻刊行されていたが、2007年9月よりGA文庫から刊行された。全7巻。
梗概
[編集]当初は著者である大迫が、映像化を前提に「闘う男の物語が書きたい」という目的をもって書いた物語で[1]、これを角川春樹事務所の『小松左京賞』へ応募したことが発端[2]。その後シリーズ化されたが、二度のレーベル移行によって物語が途切れたこともあり、『贖罪のカルネアデス ―ゾアハンター(ハルキ・ノベルス)』以降事実上の絶版となる。 その後、2005年初夏、GA文庫の立ち上げにあたった最初の顔合わせの際に大迫が「実は『ゾアハンター』を再版してくれる版元を探してるんですよね[3]」と口にしたところ、再版から完結までの上梓が約束され、それからおよそ2年を経て復活、2009年6月発売の『ゾアハンター7(GA文庫)』をもって完結した。
ストーリー
[編集]この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
人口増加による生活環境の悪化は、すなわち生存の危機を意味していた。これを回避すべく、人類の環境適応能力を高めることで生存に適さない環境下でも生存可能な新人類を造り上げる極秘プロジェクト・「アザエル計画」が発動される。しかしウイルスによるヒトゲノム干渉により、結果誕生したのは人喰いの生物・ゾーンだった。
バトル・ホイール・レースのデビュー戦で自身以外の出場者をすべてクラッシュさせるという歴史的な勝利をおさめた黒川丈は、その祝賀会の会場でゾーンに襲われ、瀕死の重傷を負う。目覚めた丈の四肢はアザエルに感染・ゾーン化し、もはや頭部を切り離す他生き延びる術はなかった。だが生身でゾーンに立ち向かい生き延びた丈はその格闘技術を買われ、喪失した四肢をサイバネティック技術で補うことで、ゾアハンターとしてゾーンと闘うことになる。
登場人物
[編集]主要人物
[編集]- 黒川丈(くろかわ・じょう)
- 今作の主人公である男性。2034年7月21日に新潟県阿賀野市にて生まれる。物語開始時では31歳だったが、最後に登場した時点ではゴーストとの戦いから年が経過していたため、41歳だった。
- 右の額から右の頬まで縦一直線の傷跡があり、その上に黒い防弾樹脂製のアイパッチをしている。
- 普段は黒いシャツに黒い革のパンツ、黒いブーツ、その上に右腕を肘まで捲くり上げ、左肩口からは袖が千切れて腕が剥き出しという黒い革のジャンパーを羽織るという黒づくめの服装をしており、左手首に太い革のリスト・バンドを巻いている。
- 不器用な人柄で、人に説明することが苦手である上、低血圧で寝起きが悪い。また子供じみた味覚をしており、ハンバーグが好物である。
- 我流の格闘技を習得していて、それらは全て頸椎下部の補助脳に記憶されている。
- 妹がいるが、丈に専用のモノサイクルが届いたその日、故郷の伯父から両親と彼女の訃報が知らされた。
- 幼い頃からやんちゃな性格であり、小学生時代にバトル・ホイールの中継放送を偶然目にして以来、「力」への憧憬を胸に秘めつつも、「勝ち目のない闘いはしない」という信条をもって闘い続けてきた。少年時代に数件の暴力沙汰を起こしたことがあるものの、いずれも「売られたケンカ」であり、自ら手を出したことはない。一時は地元の印刷屋(版下)に就職していたが、バトル・ホイールへの想いを捨てきれずに退職し、両親からは勘当同然とされながらも上京してアルバイトとトレーニングをつづけながら10年がかりでライダーとなる。デビュー戦では他の出場者・26人全員をクラッシュさせるという鮮烈な勝利を飾るものの、その日の祝賀会の会場でゾーン01に襲われ、首から下を失ってしまう。
- 頭部から下を全てサイバネティクスの機体に換装したため、体重は130キロを超える。また、高所からの落下および着地の際に緩衝液の濃度を高めて生身の脳を保護するために、頭蓋骨も後ろ半分が強化樹脂で形成されている。両方の前腕は武装ポッドになっており、右腕は大型のリヴォルバーがパーツごとに分解されて彼の腕に収納、左腕は上腕の背面を分割、肘も同様に展開することで折り畳まれていたブレードが飛び出し、展開した拳から出現したグリップを掴んで「抜刀」することで使用可能になる。
- 3年後アンドロイドの相棒・ダリアとともにゾーン討伐する中で、戦闘中にゾーンがただの「悪」でなく「イキモノ」であることを知って一時的な無気力状態になるが、当時首だけになった丈を世話していた看護師・安次嶺美咲の言葉で立ち直った。その後、村瀬の目的を知ったために殺された美咲の復讐を果たすべく防衛省附属生化学研究所へ乗り込むが、そこで自身の切り離された四肢が成長したゾーン01を吸収することで生まれた「もう一人の黒川丈」と出逢う。
- 丈の容姿は俳優の渡洋史をモデルとしている[4]。
- 結城音緒(ゆうき・ねお)
- 今作のヒロインである坂栄第一高等学校に通う高校3年生。2052年8月20日に北海道北斗市にて生まれ、初登場時は17歳だったが、その後18歳の誕生日を迎える。
- 幼稚園のころから「超演繹能力」と呼ばれる『才能』を持っており、小学1年生時にそれによってクラスメイトの溺死を予測してしまってから、何が見えても口を閉ざすようになる。だが丈と出逢ったことで『才能』の必要性を知り、次第にゾアハントに協力し始める。当初は丈のことを快く思っていなかったが彼の言動や行動に惹かれて、次第に心を開いてゆく。ゾーンに関する情報は、自宅で携帯端末によるやりとりに過ぎなかったが、その後丈達の居る「ゾアハンター基地」へと移り住む。
- 基地ではゾーンの出現位置の予測と、丈の身の回りの世話を担当する。
- 読書家ではあるが、文学少女ではない。
- ダリア(D・18型アンドロイド)
- 丈がゾアハンターとなった際に委員会から貸与されたアンドロイド。ダリアは通称名で、正式名称はD・18型アンドロイド。OSは『CYBUS』。初対面の時は丈に対し艶然と微笑んで見せたが、彼の「笑いたいと思うまで笑うな」という命令により、以後その表情を変えることはない。
- 命令に忠実だが、その言動やしぐさは妙に人間くさい。
ゾーン
[編集]- ゴースト
- アザエルの感染により切断された丈の四肢が、ゾーン01を吸収することで誕生した「もう一人の『黒川丈』」。切断間際に本体から脳をコピーすることで、丈の記憶をそっくりそのまま持っている。
- 喋り方や癖は丈と同じで、つねに白いスーツを着用。また他のゾーンとは違って知性を持っていることから、「特異体一号」とも呼ばれている。新宿のコミューンでゾアハンターと闘った時には、アザエルの『信者』達を乗っ取って巨大なゾーンへと変貌するが、ゾアハンターが発見した「弱点」を突かれ敗北。自らの肉体を爆発させるが死ぬことはできなかった。
- 関根杏子(せきね・きょうこ)
- 坂栄第一高等学校に通う少女で、音緒のクラスメイト。バトル・ホイールにおける伝説のレーサー・サムライ・ジョウのファンであり、二年の冬休み時に彼を偶然見かけた彼女は、それがゴーストであると知らずに接近する。その後彼によって胸を喰われたことでアザエルに感染・ゾーン化し、特異体となり、相思相愛の仲となる。一度は巨大ゾーンによるマンション倒壊に巻き込まれて『死亡』したと思われていたが、ゴーストが記憶を転写した腕を見つけたことで彼に取り込まれる。そして彼の中で成長した彼女は『関根杏子』として復活するも、出動したゾアスクァッドによって殺される。
- レムレス
- 自爆したゴーストの前に現れた謎のゾーン。抜けるような白い肌に銀色の髪、緑色の瞳が特徴で、なぜか関根杏子に酷似している。
ゾアスクァッド
[編集]- 宇崎裕隆(うざき・ひろたか)
- ゾアスクァッド隊長・コマンダー。都内13ヶ所で同時に出現したゾーンとの『戦争』の際にはコブラ・チームの射撃手であるコブラ・スリーを担当。
- 市野瀬華乃(いちのせ・かの)
- ゾアスクァッド隊員で、副指揮官兼通信士。都内13ヶ所で同時に出現したゾーンとの『戦争』の際にはコブラ・チームの斬撃手であるコブラ・ワンを担当。
- フリージア(F・3型アンドロイド)
- D型のバージョンアップ版だったE型に対し、新規設計によるD型の後続機。愛称は『フリージア』。頭部からの放熱効果を上げるため、ボリュームのある髪型をしており、金髪も相まって顔の造作もいくらか西洋風である。
用語
[編集]- アザエル計画
- 悪化する地球環境に対応するため、2060年に持ち上がった『人類強化計画』のうちの一つであり、人工的につくられたウイルス・アザエルによる人為的な『変身』を促すことで、環境を人類に適応させるのではなく人類を環境に適応させるという逆転の発想から計画がすすめられたが、怪物ゾーンが生まれたことにより、とん挫する結果となった。
- アザエル
- 人造ウイルス。名称の由来は神の力で強さを得た、聖書に登場する天使の名から。血液中に感染すると爆発的に増殖して改造能を発揮すると、ジャンク遺伝子から無差別に遺伝子形質を変化させる。
- ゾーン(ZOON)
- 旧ギリシャ語で『動物』や『獣』を表す言葉。アザエル・ウイルスによるヒトゲノム干渉によって、その形質を無差別に改変されたことで誕生した怪物。二つとして同じ個体が存在せず、極端な環境に適応しようと行う『変身』は膨大なカロリーを消費する為に、ゾーンは例外なく肉食の獣となる。村瀬いわく「極端な生物」。
- ゾーンに襲われた者はアザエルに感染して次のゾーンとして現場から去ってしまう為、その痕跡が残らない。アザエルが漏洩してから二年間ゾーンの生存が明らかにされてなかったのはそれが原因とされている。
- 基本的には知性が欠けているが、『特異体』と呼ばれる知性を持った個体も存在する。
- ゾアスクァッド(ZOA-SQUAD)
- ゾアハンター機構における分隊。対ゾーンの特殊部隊であり、隊員は自衛官たちから選ばれている。自衛隊の陸自東部方面隊・普通科特殊作戦連隊から独立してからは、防衛省直轄の特殊戦闘組織となり、その後の作戦指揮車に『BAD WOLF』というコード・ネームが割り当てられた。
- ゾーンの存在が公表されてからは、「任せるんだ、俺達に!」というキャッチコピーのTVCMを流すようになる。
- 超演繹能力
- 音緒の持つ特異な「才能」。見聞きする情報を無意識に集積し、そこから存在し得る様々な可能性を計算して、その中から最も確率の高い結論を瞬間的に無意識で選択するもの。また現状から帰納によって過去に遡ったものも含まれている可能性があり、それらを組み合わせて未来を「予測」する。
既刊一覧
[編集]角川春樹事務所
[編集]ハルキ・ノベルズ、ハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズ、併せて全5巻絶版。
巻数 | タイトル | 初版発行日 | ISBN |
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1 | ゾアハンター | 2000年11月30日 | ISBN 978-4-8945-6273-8 |
2 | ウリエルの娘―ゾアハンター― | 2001年2月9日 | ISBN 978-4-8945-6280-6 |
3 | 復讐のエムブリオ―ゾアハンター― | 2001年3月30日 | ISBN 978-4-8945-6285-1 |
4 | カムラッドの証人―ゾアハンター― | 2001年7月13日 | ISBN 978-4-8945-6874-7 |
5 | 贖罪のカルネアデス-ゾアハンター― | 2002年9月30日 | ISBN 978-4-7584-2000-6 |
SBクリエイティブ
[編集]GA文庫、全7巻。
巻数 | タイトル | 初版発行日 | ISBN |
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1 | ゾアハンター | 2007年9月15日 | ISBN 978-4-7973-4295-6 |
2 | ゾアハンター2 | 2007年12月15日 | ISBN 978-4-7973-4537-7 |
3 | ゾアハンター3 | 2008年3月15日 | ISBN 978-4-7973-4748-7 |
4 | ゾアハンター4 | 2008年6月15日 | ISBN 978-4-7973-4920-7 |
5 | ゾアハンター5 | 2008年9月15日 | ISBN 978-4-7973-5055-5 |
6 | ゾアハンター6 | 2009年2月15日 | ISBN 978-4-7973-5173-6 |
7 | ゾアハンター7 | 2009年6月15日 | ISBN 978-4-7973-5490-4 |