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キャスター・セメンヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
セメンヤから転送)
キャスター・セメンヤ Portal:陸上競技
2009年世界陸上選手権(ベルリン)
選手情報
フルネーム キャスター・セメンヤ
国籍 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国
種目 中距離走
生年月日 (1991-01-07) 1991年1月7日(33歳)
生誕地 リンポポ州ポロクワネ
身長 178cm
体重 70kg
自己ベスト
400m 49秒62 (2018年)
800m 1分54秒25 (2018年)
1500m 3分59秒92 (2018年)
獲得メダル
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国
陸上競技
オリンピック
2012 ロンドン 800m
2016 リオデジャネイロ 800m
世界陸上選手権
2009 ベルリン 800m
2011 大邱 800m
2017 ロンドン 800m
2017 ロンドン 1500m
コモンウェルスゲームズ
2018 ゴールドコースト 800m
2018 ゴールドコースト 1500m
アフリカ
IAAFコンチネンタルカップ
2018 オストラヴァ 400m
2018 オストラヴァ 800m
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キャスター・セメンヤ
基本情報
選手情報
在籍チーム 南アフリカ共和国の旗 JVW FC
ポジション FW
背番号 99
クラブ1
クラブ 出場 (得点)
2019- JVW FC
1. 国内リーグ戦に限る。
■テンプレート■ノート ■解説■サッカー選手pj

キャスター・セメンヤ(Caster Semenya、1991年1月7日 - )は、南アフリカ共和国の陸上競技選手。2009年ベルリン世界陸上2011年大邱世界陸上2012年ロンドンオリンピック[1]2016年リオデジャネイロオリンピック[2]2017年ロンドン世界陸上[3]の金メダリストである。現在は南アフリカリーグ・女子サッカーサッカー選手

経歴

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セメンヤは、800mを得意とする南アフリカの女子中距離選手である。2009年にベルリンで開催された世界選手権では、南アフリカ代表として800mで金メダルを獲得した。2012年ロンドンオリンピックの開会式では南アフリカ選手団の旗手を務めた[4]。性別検査をめぐり、一部の結果がマスコミに漏れたこと[5]、テストステロン値の高い女子選手としての世界陸上での取り扱いをめぐり注目を集めた[6]。テストステロン値が高い女性の出場資格をめぐり、2018年6月にはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に規定無効を訴えたが、訴えはその後に退けられた[7]。陸上競技を引退した後は、サッカー選手として活動している[8]

私生活

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南アフリカで10代のころから陸上競技を始め、18歳で国際試合に出るようになった。ランナーになることで家族を経済的に支え、家族の中で初めて母は冷蔵庫を買うことができた[9]。2016年1月に、同じ陸上選手で長年の恋人であったバイオレット・ラセボヤ英語版同性結婚をしている[10]

性別検査

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祖母やコーチによると、男性のようなルックスであることから子供の頃からいじめられ、何度も性別を疑われていたという[11]

世界陸上2009での金メダル獲得後、前回大会の金メダリストで2位のジェネス・ジェプコスゲイケニア)に2秒以上の大差をつけ当季世界最高のタイムで圧勝したことや、筋肉質な体格、低い声などから性別を疑われ、国際陸上競技連盟 (IAAF) は医学的な調査を始めた。性別検査の結果は公式には公表されなかったが、一部の結果はマスコミに漏れ、9月11日付のオーストラリア紙シドニー・モーニング・ヘラルドなどによると、医学的検査の結果子宮卵巣が無く体内に精巣があり、通常の女性の3倍以上のテストステロン男性ホルモンの一種)を分泌していることが判明し、性分化疾患を有していると報じられた[5]

当時の苦痛をセメンヤは「ある日、医学的なあれやこれやのせいで、自分は女性ではないと言われることを想像してみてほしい。考えてほしい。全世界の目に、あなたは今や、自分が知っている自分とは違う何かになっている。そして、全世界があなたについて議論する。あなたが死ぬその日まで、あなたは性器や性別、セックスなどについてのジョークのオチにされ続ける」と語る[5]。セメンヤ本人はインターセックスであるとの表現は好まず、自身を「他の女性とは違うタイプの女性」と語る。

IAAFは「人為的なものではないためセメンヤの金メダルが剥奪される可能性は無いだろう」としているものの、過去に同様のケースで4人が競技生活を断念するよう求められている[12]。最終判断は11月20、21日の両日に開かれるIAAFの理事会で行われ、セメンヤの金メダルは確定、性別検査の結果は公表されないと発表した[13]

世界陸上2009の後、セメンヤは非公式に大会への出場の自粛を求められていた。これに反発したセメンヤ側は大会へのエントリーを強行し、2010年3月30日に南アフリカ陸連から公式な出場停止処分を受けた。セメンヤ側の弁護士は、国際陸連は性別問題を法廷に持ち込まれ判例となることを避けるだろうという想定に基づいて、訴訟を前提として6月第一週までに国際陸連にこの問題に対する決定を下すよう文書で要請した[14]。 6月には性別検査をクリアした上で競技に復帰する意向を表明[15]。同年7月6日、国際陸連がセメンヤの女性として競技復帰を認めることが公式に発表された。セメンヤ側の弁護士は国際陸連と10ヶ月に及ぶ交渉を重ね、詳細は明らかではないが「画期的な和解」に達したという声明を出している[16]。復帰の舞台は、同7月にフィンランドで行われた国際競技会となった。

国際陸上競技連盟(IAAF)は2018年4月に「テストステロン値が高い女性の出場資格を制限する」という内容の新規定を2018年11月から導入すると発表した。セメンヤと南アフリカ陸連は、同規定の無効を求めて2018年6月にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えた。スポーツ仲裁裁判所は2019年5月1日に「テストステロン値が高い女性の出場資格を制限する」という国際陸上競技連盟の新規定を容認し、セメンヤらの訴えを棄却した。今後、セメンヤが大会に出場するには、テストステロン値を下げる薬の服用が必要とされる。セメンヤは薬を服用せず、不服申し立てを行う意向を表明した[6]が、CASに次いでスイス連邦最高裁(SFT)に訴えた裁判でも2020年9月にセメンヤの敗訴が確定した[17]。SFTは競技の前提条件として女性アスリートに薬物、または外科的処置を施すことはスイスの公序に反しないと見解を示したが、セメンヤは「世界陸連が私に薬を投与したり、私が私であることをやめさせることを拒否する。私は女性が生まれたままの形で自由に走れるようになるまで、トラック内外で女性アスリートの人権のために戦い続ける」としている[17]

サッカーキャリア

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2019年9月、セメンヤは陸上競技を引退し、Janine van Wykが所有する南アフリカ SAFA Sasol女子リーグ協会のサッカークラブJVW FCに加入した。[8]

自己ベスト

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  • 400m - 49秒62(2018年9月8日)
  • 800m - 1分54秒25(2018年6月30日)
  • 1500m - 3分59秒92(2018年5月4日)

主な実績

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大会 場所 種目 結果 記録
2009 2009年世界陸上選手権 ベルリンドイツ 800m 1位 1分55秒45
2011 2011年世界陸上選手権 大邱大韓民国 800m 1位 1分56秒35
2012 ロンドンオリンピック ロンドンイギリス 800m 1位 1分57秒23
2015 2015年世界陸上選手権 北京中国 800m 8位(sf) 2分03秒18
2016 リオデジャネイロオリンピック リオデジャネイロブラジル 800m 1位 1分55秒28
2017 2017年世界陸上選手権 ロンドンイギリス 800m 1位 1分55秒16
2017 2017年世界陸上選手権 ロンドンイギリス 1500m 3位 4分02秒90

脚注

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  1. ^ Company, The Asahi Shimbun. “朝日新聞デジタル:セメンヤ、性別疑惑乗り越え銀 リオ五輪にも意欲”. www.asahi.com. 2024年8月2日閲覧。
  2. ^ セメンヤが初の金メダル、女子800メートルを制覇”. www.afpbb.com (2016年8月21日). 2024年8月2日閲覧。
  3. ^ 女子800、セメンヤが3度目の優勝 世界陸上”. 日本経済新聞 (2017年8月14日). 2024年8月2日閲覧。
  4. ^ 五輪=南ア旗手のセメンヤ、「プレッシャーはない」”. Reuters. 2024年8月2日閲覧。
  5. ^ a b c Semenya, Caster (2023年10月28日). “‘You are not here for a doping test. You are here for a gender test’: athlete Caster Semenya on how her life changed for ever” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/sport/2023/oct/28/athlete-caster-semenya-memoir-race-to-be-myself-extract 2024年8月2日閲覧。 
  6. ^ a b 週刊金曜日』(2019年5月17日)「セメンヤ選手の訴え棄却 男性ホルモン値の高い女性選手の競技出場制限
  7. ^ 国際陸連新規定撤回 セメンヤ訴えをCAS棄却… - スポニチ Sponichi Annex スポーツ”. スポニチ Sponichi Annex. 2024年8月2日閲覧。
  8. ^ a b 陸上競技を引退し、サッカーへ
  9. ^ Semenya, Caster (2023年10月21日). “Opinion | Running in a Body That’s My Own” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2023/10/21/opinion/running-body-semenya.html 2024年8月2日閲覧。 
  10. ^ リオ五輪金メダリストのセメンヤが結婚、過去には性別疑惑も”. www.afpbb.com (2017年1月8日). 2024年8月2日閲覧。
  11. ^ セメンヤの家族は性別疑惑を一蹴、世界陸上ベルリン大会
  12. ^ 世界陸上女子800m金のセメンヤ選手は両性具有
  13. ^ セメンヤの金メダルが確定、検査結果は機密事項に
  14. ^ BS世界のドキュメンタリー 早すぎた女性ランナー~キャスター・セメンヤの苦悩 NHKBS1 2012年8月17日放送、英Rise Films 2010年作成
  15. ^ “セメンヤが性別検査クリア宣言、陸上復帰へ”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2010年6月10日). https://web.archive.org/web/20100613151332/http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20100610-OYT1T00322.htm 2010年6月10日閲覧。 
  16. ^ 性別疑惑のセメンヤ、女性として競技復帰へ - ロイター
  17. ^ a b 陸上=セメンヤが敗訴確定、男性ホルモン値規制に訴え」『Reuters』2020年9月9日。2024年8月2日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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