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セイファー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
セイファー
基本情報
船籍 イエメンの旗 イエメン
建造所 日立造船有明工場
IMO番号 7376472
経歴
起工 1974年10月14日
進水 1975年11月14日
竣工 1976年5月1日
その後 1987年FSOに転用
要目
総トン数 192,673 トン
載貨重量 400,219 トン
全長 362.0 m
型幅 70.00 m
深さ 28.12 m
喫水 22.15 m
主機関 蒸気タービン
航海速力 15.5ノット
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セイファー (Safer)(正式な発音はサファー "saffer" [ˈsæfər]) は、イエメン西部の都市フダイダ沖の紅海に存在する浮体式貯蔵積出設備 (FSO)。前身は石油タンカーであった。

船歴

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エクソン傘下のエッソ・タンカーズ社によって発注され、日立造船有明工場にてエッソ・ジャパン (Esso Japan)の船名で1976年5月に竣工。竣工時のサイズは全長362.0m、型幅70.0mで、総トン数は192,679トン、載貨重量トン数は406,640トンであり、動力源は蒸気タービンで速力は15.5ノットであり、およそ300万バレルの石油を積載可能とされていた[1]

1986年イエメンの国営石油企業に売却。売却直後は引き続きタンカーとして使用されていたが、翌1987年には現在の船名に改名されるとともに自力航行不能な貯蔵船へと改造され、1988年には現在のイエメン西部の都市フダイダ沖およそ4マイルの北緯15度7分9.1秒 東経42度35分40.2秒 / 北緯15.119194度 東経42.594500度 / 15.119194; 42.594500の地点に係留された[2]。貯蔵設備となった本船の船体はパイプラインにておよそ400km先の内陸の都市マアリブの油田と接続され、内陸部で産出した原油を貯蔵しこれを輸送するタンカーへと積み出すFSOとして機能していた。FSOになって以降の本船を含む設備は、地元企業のSafer Exploration and Production Co. 社によって管理されていた[1]

船体の老朽化・環境破壊の懸念

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2015年3月、同年に勃発したイエメン内戦の結果、セイファーが係留されている地点付近の海岸線を反政府武装勢力フーシ派が制圧。これに伴って、本船を含む施設もフーシ派の手に渡った。その後、本船をはじめとする石油備蓄施設は内戦の激化に伴って石油輸出がストップした結果、今日に至るまでメンテナンスされることなく放置されたことによって著しく老朽化が進展しており、国際連合グリーンピースなどの団体から本船の老朽化によってもたらされる周辺環境への被害を懸念する意見が上がっている[3][4]

現在、本船はエンジンを作動していない状態で放置されており、船内には推定110万バレルの原油が貯蔵されている状態にあり、この量は1989年3月24日に発生したエクソンバルディーズ号原油流出事故で流出した原油の量の4倍以上に相当する[5]。このため、本来は船内で不活化ガスを精製し貯蔵タンクに送ることで食い止められる原油から発生する揮発性のガスの滞留を食い止めることができておらず、国連の担当者は本船が「壊滅的な爆発」を引き起こす可能性を指摘している[6]。また、船体に亀裂が入ることによって原油が直接紅海に流出すれば周辺海域に大打撃が及び、流出した原油はスエズ運河ホルムズ海峡に至る可能性も指摘されている[5][6]2020年には海水が船内に漏れたことが原因で機関室が浸水し、船内の消火システムが作動しなくなる事態も発生している。

現地を事実上勢力下に置いているフーシ派は国連に対し本船の点検整備を要求しているが、イエメンの現政権の後ろ盾となっているサウジアラビアアラブ首長国連邦などの国々が国連調査団の本船への立ち入りを妨害しているとして、かつては調査団の立ち入りを拒否していた[5]2020年7月になってフーシ派が調査団の派遣に同意し、11月には国連とフーシ派の間でタンカーの安全を確保するための合意が交わされたが、その後も調査団が本船に立ち入ることができない状況に置かれた。背景には、およそ4000万USドル相当に換算される船内に残された原油の権利を確保したいフーシ派の思惑があると指摘されている[7][8]

2023年3月18日、国際連合開発計画(UNDP)はタンカーを船舶解体所へ曳航する準備のため、110万バレルの原油を抜き取って代替船へ移す計画を発表。そのために、2008年建造の中古VLCC”NAUTICA"を5500万USドルで購入しFSO "YEMEN"に改造する[9][10]。またオランダの大手マリコンBoskalis社とSMIT社と契約。2023年5月に現場海域に専門家を派遣した[11]

2023年4月9日、中国船山地区よりFSOに改造されたYEMENが出航。

2023年5月29日、Boskalis社の多目的支援船"NDEAVOR"がジブチより出航、同5月30日にFSO SAFERへ到着、同6月9日にNDEAVORをSAFERへ横づけ、6月27日に船体検査と原油輸送準備が完了した[12]

2023年7月25日、SAFERに横づけしたYEMENに対して、原油の移送を開始。同8月11日にすべての原油を移送。同8月29日にタンク洗浄が完了した[12]

今後、SAFERは船舶解体所にて解体され、YEMENは原油売却に関する法的問題が解決するまで同じ位置にて係留される予定となっている[13]

出典

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  1. ^ a b “Esso Japan - IMO 7376472”. shipspotting.com. (2021年2月25日). http://www.shipspotting.com/gallery/photo.php?lid=3262533 2021年10月19日閲覧。 
  2. ^ “SAFER (Floating Storage/Production) Registered in Yemen - marinetraffic.com”. marinetraffic.com. (2021年10月19日). https://www.marinetraffic.com/en/ais/details/ships/shipid:683733/mmsi:473111194/imo:7376472/vessel:SAFER 2021年10月19日閲覧。 
  3. ^ “イエメン内戦、緊張高まる放置タンカー 石油漏出の懸念”. 朝日新聞. (2021年3月1日). https://www.asahi.com/articles/ASP2T3GJ5P2HUHBI02N.html 2021年10月19日閲覧。 
  4. ^ “イエメン沖に放置の石油貯蔵施設「いつ爆発してもおかしくない」 環境NGO”. AFP通信. (2021年6月4日). https://www.afpbb.com/articles/-/3350072 2021年10月19日閲覧。 
  5. ^ a b c “イエメン沖の放置タンカー、石油流出の恐れ強まる 壊滅的な影響を懸念”. CNN.co.jp. (2021年10月13日). https://www.cnn.co.jp/world/35177971.html 2021年10月19日閲覧。 
  6. ^ a b “イエメン沖に放置された老朽タンカー、「壊滅的な爆発」の恐れ”. CNN.co.jp. (2019年7月24日). https://www.cnn.co.jp/world/35140342.html 2021年10月19日閲覧。 
  7. ^ “Deserted oil tanker in Yemen: Houthis ask for help”. アルジャジーラ. (2019年12月15日). https://www.aljazeera.com/videos/2019/12/15/deserted-oil-tanker-in-yemen-houthis-ask-for-help/ 2021年10月19日閲覧。 
  8. ^ “レバノン並みの大惨事に? イエメン沖に放置の「時限爆弾」 対応に手詰まり感”. AFP通信. (2020年8月18日). https://www.afpbb.com/articles/-/3299562 2021年10月19日閲覧。 
  9. ^ “イエメン沖で超大型タンカーを30年余放置、漏出防止で油移送へ”. CNN.co.jp. CNN. (2023年3月18日). https://www.cnn.co.jp/world/35201473.html 2023年6月1日閲覧。 
  10. ^ FSO SAFER: Call for equipment for oil spill response preparedness”. IMO (2023年4月24日). 2023年10月28日閲覧。 “On 9 March, the UN Development Programme (UNDP) signed an agreement to purchase a very large crude carrier (VLCC), the Nautica, to take on the oil from the FSO SAFER by emergency ship-to-ship transfer.”
  11. ^ “訂正:イエメン沖に長年放置「忘れられた巨大タンカー」、国連が原油抜き取りへ(字幕・31日)”. ロイター. (2023年5月31日). https://jp.reuters.com/video/watch/idOWjpvCDCJB71ZB4DBPV3YQ7PUAKES6F 2023年6月1日閲覧。 
  12. ^ a b Oil Removal FSO Safer” (英語). Royal Boskalis Westminster NV. 2023年10月28日閲覧。
  13. ^ 7. What is the plan for the FSO SAFER? FSO SAFER: Ship-to-ship transfer of oil completed”. IMO. 2023年10月28日閲覧。 “Following the emergency operation to transfer the oil to a safe temporary vessel, a catenary anchor leg mooring (CALM) buoy will be installed to which the replacement vessel will be tethered, and the removal of the FSO Safer for safe recycling will take place (read more here).”

外部リンク

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  • Esso Japan - エッソ・ジャパン当時のデータ