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シフゾウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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シフゾウ
シフゾウ
シフゾウ Elaphurus davidianus
保全状況評価[1]
EXTINCT IN THE WILD
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目/鯨偶蹄目
Artiodactyla/Cetartiodactyla
: シカ科 Cervidae
亜科 : シカ亜科 Cervinae
: シフゾウ属 Elaphurus
Milne-Edwards, 1886[2]
: シフゾウ E. davivianus
学名
Elaphurus davidianus
Milne-Edwards, 1866[1][2]
和名
シフゾウ[3][4]
英名
Pere David's deer[1][2][3][4][5]

シフゾウ (四不像、Elaphurus davidianus) は、哺乳綱鯨偶蹄目(かつては偶蹄目とされていた)シカ科シフゾウ属に分類される偶蹄類。シフゾウ属における唯一の現生種である。

形態

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頭胴長(体長)183 - 216センチメートル[3][5]。尾長22 - 35.5センチメートル[3]。肩高122-137センチメートル[3]体重オス214キログラム、メス159キログラム[3]。尾は長く、先端の体毛は房状に伸長する[3]。属名Elaphurusは「尾のあるシカ」の意[4]。頸部の体毛は伸長し、鬣状になる[3]

頭部は細長い[3]。眼は大型[3]。鼻孔周辺の体毛に覆われない裸出部(鼻鏡)は大型で、アルファベットの「V」字状[3]。四肢は長く、蹄も大型[3]。眼下部には臭腺(眼下腺)が発達する[3]

分類

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種小名davidianusは、フランスの宣教師Pere Armand Davidに由来する[4]。Davidは1865年に南苑(皇帝の狩猟用施設)の個体を発見し[3][5]、パリの博物館へ毛皮を送りその毛皮が模式標本となって新属新種として記載された[1][4]

生態

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オスの成獣。

シフゾウ属の現生種は本種のみであり、更新世まではシカマシフゾウなどが日本列島に生息していたなど本属の分布は現代より広かったが、シフゾウ(現生種)は中華人民共和国にのみ分布する。

低地にある湿原に生息していたと推定されている[3]。雌雄別々に群れを形成し生活する[1][3][5]。泳ぎは上手く、肩部まで水に漬かることもある[5]

草、木の葉、抽水植物などを食べる[1]

繁殖様式は胎生。繁殖期になると、オスは多数のメスと群れ(ハレム)を形成する[3]。妊娠期間は288日[3]。妊娠期間は9ヶ月前後。1回に1 - 2頭の幼獣を産む[3]。生後2年3か月で、性成熟する[3]。23年3か月の生存例がある[3]。14ヶ月ほどで成獣となる[要出典]

人間との関係

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北京にある繁殖公園(麋鹿苑)に設置されたベッドフォード公爵ハーブランド・ラッセル英語版の彫刻。

角がシカ、頸部がラクダ(もしくはウマ)、蹄がウシ、尾がロバに似ているが、そのどれでもないと考えられたことが名前(四不像、四不相や四不象と表記されることもあり ピンイン表記: si bu xiang / sze pu shiang)の由来という説(像は体の意)が有力とされる[3][4][5]。また、中国語では現在、[麋鹿] (ピンイン表記: mílù)と呼ぶ。

一方で四不像は、北満州ではトナカイを指す呼称として用いられることもあった[4]

1865年にDavidに発見される以前に、北京の皇帝の狩猟園である南苑の個体を除いて絶滅した[3][4]。1890年代に南苑の外壁が洪水で破壊されたことにより[3]、南苑の残存個体群も洪水による溺死、飢餓によって周辺の住民および義和団の乱に伴う狩猟によって清朝末期に絶滅したと考えられている[1][5][4]。ただイギリスの大地主の貴族である第11代ベッドフォード公爵ハーブランド・ラッセル英語版が自らの所領であるウォバーン・アビーへ持ち込んだ個体もあって、ヨーロッパの動物園でもそれらの個体を元に飼育下繁殖が進められた[3][4]。ウォバーンの個体群は1901年には20頭以上、1907年には30頭以上、最大で200頭に達した[4]。1948年に7頭がロンドン動物園に、4頭がニューヨーク動物園に売却された[4]。1956年にはウォバーンで飼育下繁殖された個体4頭が、北京動物園に贈られている[1][3]

1985年からヨーロッパで飼育下繁殖させた個体を、中華人民共和国で再導入する試みが進められている[3]。1985年に20頭(オス5頭、メス15頭)、1987年にメス18頭が南苑のあった北京周辺にウォバーンで飼育下繁殖させた個体が再導入された[1]1986年に本来の生息地と考えられている上海北部にある大豊保護区にも、イギリスの動物園で飼育下繁殖させた個体39頭が再導入された[1][5]。1993年に北京周辺の個体がTianezhou保護区へ、2002年に北京周辺と大豊保護区の個体がDafeng保護区へ再導入されている[1]。2017年の時点でIUCNのレッドリストではExtinct in the Wildと評価されているが、近年は個体数は増加傾向にあり放獣された個体群が近い将来に確立されれば評価が改訂されることが示唆されている[1]。北京周辺での1990年における個体数は100頭、1998年における個体数は180頭と推定されている[3]。上海北部にある大豊保護区での1993年における個体数は122頭、1999年における個体数は354頭と推定されている[3]。1998年に8頭が野生に返され、2010年には野生個体数は156頭になったとみられ、また三代目の野生個体も生まれていることから、中国科学院動物研究所は野生復帰に成功したとした[6]

日本では2006年2月にシカ亜科他種が分布域外で移入・定着した例があること・ニホンジカとの遺伝子汚染が懸念されることから、本種を含むシカ亜科の構成種が特定外来生物に指定された[7]

日本では1888年にペアが恩賜上野動物園へ寄贈されたが、オスは1896年に、メスは1898年に死亡した[4]。このペアは1890年と後にもう1回繁殖に成功しているが、1890年に産まれた個体は成獣になる前に死亡、後に産まれた個体も成獣になったものの明治時代のうちに死亡している[4]。1936年にシフゾウが京都市動物園で飼育されたが、これはトナカイだったとされる[4]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l Jiang, Z. & Harris, R.B. 2016. Elaphurus davidianus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T7121A22159785. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T7121A22159785.en. Downloaded on 06 January 2021.
  2. ^ a b c Peter Grubb, "Order Artiodactyla". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 637 - 722.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 小原秀雄 「シフゾウ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、151 - 152頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 高島春雄四不像盛衰史」『山階鳥類研究所研究報告』第1巻 1号、山階鳥類研究所、1956年、5 - 14頁。
  5. ^ a b c d e f g h Erin Jacobson, 2003. "Elaphurus davidianus" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed January 06, 2021, at http://animaldiversity.org/accounts/Elaphurus_davidianus/
  6. ^ 中国、絶滅危惧種シフゾウ(四不像)の野生個体数が徐々に回復”. 国立環境研究所. 2023年3月29日閲覧。
  7. ^ 特定外来生物等一覧特定外来生物等一覧(指定日別)特定外来生物の解説環境省 ・2021年1月6日に利用)

参考文献

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関連項目

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