スーパーマリン シーガル (初代)
- 用途:偵察機
- 製造者:スーパーマリン
- 運用者
- 初飛行:1921年5月
- 生産数:34
- 運用状況:退役
- 原型機:スーパーマリン シール
- 派生型:スーパーマリン ウォーラス
スーパーマリン シーガル(英語: Supermarine Seagull)は、イギリスのスーパーマリンが製造した複葉飛行艇。スーパーマリン シールの派生型であり、同様に水陸両用機としての運用が可能であった。
開発
[編集]1921年、スーパーマリン シールIIの改造により、後にシーガル Mk Iとして知られる試作型が製造された。エンジンにネイピア ライオンIIを採用し、ナセルを変更した機体は、1機のみが製造された。
1922年にはネイピア ライオンIIIをエンジンとした量産型シーガル Mk IIが生産に入り、25機が空軍省とイギリス海軍に納入された。Mk IIには、後に改修された機体も存在している。
1925年、オーストラリア向けにシーガル Mk IIIが開発された。これはMk IIのエンジンをネイピア ライオンVに変更、ラジエーターを熱帯向けに調整した機体となった。6機がオーストラリア空軍に、1機が日本に輸出された。
シーガル Mk IIにハンドレページ式の前縁スロットを設け、双尾翼式に改造された機体が1928年に出現した。これは、スーパーマリン公式の分類ではないが、俗にシーガル Mk IVとみなされた。また、3機のシーガル Mk IIが民間機として登録された。
1930年、同規模・同配置であるが、まだ主流とはなっていなかった金属製の機体を有し、ブリストル ジュピターIXをエンジンとしたプッシャー式飛行艇の開発が開始された。シーガルVとして知られた機体は、1933年に初飛行を遂げた。これが、後のスーパーマリン ウォーラスである。
運用
[編集]1923年4月1日の再編に伴い、5月1日イギリスの空母イーグルに編成された第440艦隊偵察飛行隊に配備され、観測機として運用された。従来この任務は、3個飛行隊に配備されたパーナル パンサーによって行われていた[1]。イーグルは、フェアリー フライキャッチャー(第402飛行隊)、ブラックバーン ブラックバーン(第422飛行隊)、ブラックバーン ダート(第460飛行隊)と第440飛行隊の4個飛行隊を有していたが、1個飛行隊は地上運用に充てられていた[2]。1925年、イギリス初のカタパルトによる発艦を記録した飛行艇となった。
イギリス海軍のシーガル Mk IIは、フェアリー IIIDによって1925年1月に更新された。
1926年6月、6機のシーガル Mk IIIを導入したオーストラリア空軍ではフェアリー IIIDを更新し、第101飛行隊をポイント・クックのウィリアムズ空軍基地で編成、8月に第101飛行隊は、リッチモンドの空軍基地へ移動した[3]。1927年まで、写真偵察機としてモーズビーを支援し、グレート・バリア・リーフの調査に用いられた[4][3]。1927年1月にイギリスから購入した中古機3機を追加し、ニューギニアまで調査範囲を拡大した。1929年には6機が水上機母艦アルバトロスの飛行隊として編成され、1933年にアルバトロスが予備役となるまで続いた[5]。1934年には重巡洋艦キャンベラとオーストラリアに配備された[5]。オーストラリアでの運用はシーガルVによって更新され、1936年3月3日のキャンベラと陸上からの運用が最後となった。
機体
[編集]機体は木造で、断面は楕円形。これに浮力を持つ底部と昇降段が二段取り付けられていた。下翼は高翼式の構造を有しており、翼間支柱は3組の2ベイ複葉機、上翼中央にナセルを吊り下げ、4翅式のプロペラを駆動した。武装はルイス軽機関銃 1挺、典型的な乗員はパイロット、無線手、観測手の3人であった。
運用者
[編集]現存する機体
[編集]- イギリス海軍航空博物館に機体前方が残されている。1974年までは庭園の小屋として使用されていたが、新しい小屋と交換されている。その後、サウサンプトンのソレント航空博物館に長期貸し出し中となっている[6]。
- イギリス空軍博物館にシーガルV(ウォーラス)がバトル・オブ・ブリテンホールに2016年10月まで展示され、その後収蔵品として扱われている[7]。
要目(シーガル Mk III)
[編集]出典: [3]
諸元
- 乗員: 3
- 全長: 11.28m (37ft)
- 全高: 3.66m (12ft)
- 翼幅: 14.02m(46ft)
- 空虚重量: 1768kg
- 運用時重量: 2571kg
- 動力: ネイピア ライオンV レシプロ、340kW (450hp) × 1
性能
- 最大速度: 174km/h (94kt)
- 実用上昇限度: 2789m (9150ft)
- 上昇率: (454.5ft/m)
- *最大飛行時間 4.5時間
武装
- 固定武装: 7.7mmルイス軽機関銃 1挺
出典
[編集]- ^ Sturtivant 1984, p.467
- ^ Brown 1973, p.254.
- ^ a b c d “Supermarine Seagull III”. オーストラリア空軍. 2017年1月8日閲覧。
- ^ Brown 1972, p.27.
- ^ a b “Supermarine Seagull III”. Fleet Air Arm Association. 2017年1月8日閲覧。
- ^ “Supermarine Seagull”. Solent Sky. December 15, 2012閲覧。
- ^ “Supermarine Seagull V”. Royal Air Force Museum. October 30, 2015閲覧。
参考文献
[編集]- Andrews, C.F.; Morgan E.B. (1987). Supermarine Aircraft since 1914. London: Putnam. ISBN 0-85177-800-3
- Brown, David. "Supermarine Walrus I & Seagull V Variants". Aircraft in Profile, Volume 11. Windsor, Berkshire, UK: Profile Publications Ltd., 1972.
- Kightly, James and Wallsgrove, Roger. Supermarine Walrus & Stranraer. Sandomierz, Poland/Redbourn, UK: Mushroom Model Publications, 2004. ISBN 83-917178-9-5.
- Shelton, John (2008). Schneider Trophy to Spitfire - The Design Career of R.J. Mitchell (Hardback). Sparkford: Hayes Publishing. ISBN 978-1-84425-530-6
- Thetford, Owen. British Naval Aircraft Since 1912. London: Putnam, 1982 (5th ed.) ISBN 0 370 30021 1
- Ray Sturtivant: The Squadrons of the Fleet Air Arm, Air-Britain Tonbridge, 1984, ISBN 0-85130-120-7
- David Brown: HMS Eagle, Warship Profile 35, 1973
- Kenneth Munson: Flugboote und Wasserflugzeuge seit 1910, Orell Füssli; Zürich, 1972
- Neville Doyle; from Sea Eagle to Flamingo - Channel Island Airlines 1923-1939, Upton-upon-Severn 1991, ISBN 1-85421-103-X
- Peter London: British Flying Boats, The History Press, Stroud 2003, ISBN 978-0-7524-6055-0
外部リンク
[編集]- Supermarine Seagull IIIオーストラリア空軍