コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

スーパーブラディオン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

スーパーブラディオン (: Superbradyon) は、光速よりも数段速く運動することができる仮説上の素粒子である。タキオンと違って、スーパーブラディオンは正の実数質量エネルギーを持つ。

概要

[編集]

スーパーブラディオンは光速より速く伝播する新しい種類の粒子である。これは特殊相対性理論の標準的な因果律を破る。場の量子論では、タキオンが現実の粒子ではなく系の不安定性が粒子の形態を持つのに対して、スーパーブラディオンは粒子が実在性を持つと仮定されている。

この用語[1]、および粒子の実体[2][3]は、ルイス・ゴンザレス・メストレスペイン語版によってブラディオン(ターディオン)の反意語として提案された。メストレのローレンツ対称性の破れに関する研究の意義は、2002年にCERNクーリエ[4]およびニューヨーク・タイムズ[5]の記事で取り上げられている。1997年には、彼の研究はシドニー・コールマンおよびシェルドン・グラショーによって引用されている[6]。1997年、ICRC1997のAUGERプレスカンファレンスワークショップおよび[7]、メリーランドワークショップ「宇宙空間からの> eV粒子の巨大な宇宙線空気シャワーの観測」[8]の講演者として招待された。

特殊相対性理論の特定の表現であるタキオンと反対に、スーパーブラディオンは明示的かつ根本的にローレンツ不変量を破る。それらは従来の粒子(ブラディオン)と類似しているが、真空中の光速 c' より速い限界速度を持つ。そして、光速c音速の百万倍速いように、スーパーブラディオンの限界速度は光速よりもかなり速くなることが可能である。これは、標準的なローレンツ対称性は根本的な対称性ではなく低エネルギーの複合効果であることを示唆している[9]。スーパーブラディオンは、ローレンツ型の新しい不変量を持つ物質の新しい分類を形成する。スーパーブラディオンが持つ不変量は実際の根本的な対称性で、この対称性においては従来の限界速度は新しくより大きな限界速度と置き換えられる。光速を真空の限界速度として持つ特殊相対論のローレンツ対称性は、従来の物質に対する物理法則の低エネルギーでの近似でしかないだろう。[要出典]

アインシュタインによる示唆

[編集]

スーパーブラディオン仮説は一見非常に型破りなものに見えるが、実験結果との矛盾はまだ見つかっておらず、もしクォークレプトンゲージ粒子複合粒子であるなら、その存在は自然にすら思われる。[要出典]それならば、なぜ物質の実際の構成物が複合物と同じ真空中の限界速度を持つのだろうか。ゴンザレス・メストレは、アルベルト・アインシュタインの1921年の講義「幾何学と実験」[10]に言及する。「ここで主張されている(特殊相対論の)幾何学の解釈は分子以下の空間には直接適用することができない。そのような外挿は分子スケールでは温度の概念が不適切であることと同様に明らかである。」そして、メストレは「プランクスケールを超える時空の幾何学は、標準的な素粒子によって感じられるものと同じである理由はない。」と主張する。

メストレは、アインシュタインの意見をプレオン的なモデルに適用することを考える事は普通に思えることを強調する。

物質の構成要素についての示唆

[編集]

ゴンザレス・メストレによると、スーパーブラディオンはプランクスケールかさらに微小なスケールの物質の究極の構成要素でありえる。このとき、スーパーブラディオンはプレオンの新しい形態である[11]。従来の特殊相対論は速度と時間の根本的な性質ではなく、代わりにある与えられたスケールでの標準的な物質から見たときの時空の性質を描写していると考えられる。もしそうであるなら、特殊相対論の標準的なローレンツ対称性はプランクスケールもしくはいくつかの他の基本的なスケールで破れるであろう。

これは、ちょうど音速固体中で音子から見た時空の性質を反映していることを例にして考えることができる。固体格子の中では、音子の大きな限界波長内に、限界速度の役割を果たす音速のローレンツ対称性の形態を定義することが可能である。しかし分散関係によって現れる見かけの時空対称性は、音子は素粒子ではなく、時空の基本的な対称性であることを意味する。

メストレは2009年8月の論文[11]で、1970年代に弦構造の双対モデルハドロンの複合構造の結果として解釈された(弦理論参照)ことについて言及した。彼は「今日、弦理論は従来の«素»粒子に適用されてきている。それゆえ、究極の素粒子を探求することは、プレオンモデルを正当化するように見える。」ということを強調する。メストレは、「ホルガー・ベック・ニールセンポール・オレセンによって開発された非常に高次元のファインマンダイアグラムから双対振幅を引き出すための"漁網"アプローチ (fishnet Feynman diaglam) [12]は、ハドロンの構成物質によって感じられる実際の時空の構造に対して敏感ではない。」と、主張する。「それゆえ、内線としてスーパーブラディオンを含む漁網ファインマンダイアグラムは、標準的な特殊相対論と適合する従来の素粒子の限界を弦構造へと拡張することと同様の原理を導くことができる。」と、結論付ける。

起こりうる現象についての示唆

[編集]

もしスーパーブラディオンがわれわれの宇宙に自由粒子として存在することができるなら、それらは"従来の"粒子の形で自発的に放射を放ち、超高エネルギー宇宙線の放射源となることが予想される。その自由粒子は、それらの速度が光速に等しいかそれより小さくなったとき、そのような放射を放出するのを止める。それゆえ、宇宙は光速に近い速度のスーパーブラディオンの海を含むだろう。スーパーブラディオンはインフレーション暗黒物質および暗黒エネルギーについても新しい方法を与える[13][14]

シドニー・コールマンおよびシェルドン・グラショーは、ゴンザレス・メストレの超光速粒子に関する1995-96年の論文について引用して、従来の粒子は厳密に同じ限界速度を持てないであろうとする標準THεμシナリオにおけるローレンツ対称性の破れの限界を定めるため、類似の真空中のチェレンコフ放射を用いた[6]

スーパーブラディオンの仮説は、従来の"素"粒子は非常に小さい距離スケールでは場の理論的な点様の物体ではないであろうことを示唆する。そして、ローレンツ対称性の破れは、運動量の減少に伴いエネルギー依存のパラメータによって支配されることが期待される。そのような場合は、特権的な局所慣性系("真空静止系")の存在を必要とする。それらは、ピエール・オージェ観測所のような超高エネルギー宇宙線実験によって少なくとも部分的に検証することができる[15][16]。そのような実験は超光速宇宙粒子の存在を直接捉えることが可能である[17][8]

現象論的な対称性の破れパラメータはエネルギー依存的であることが期待されているように、既存の低いエネルギー限界は高エネルギー現象に適用することができない。

2009年5月の論文では[18]、メストレはもしわれわれの宇宙の自由スーパーブラディオンが新しい種類のスーパーブラディオン的な凝縮系準粒子であるなら、原型の基本的なスーパーブラディオンは従来の量子力学の法則に従わないことがありうることを議論している。彼はまた、スーパーブラディオンの自発的な崩壊および類似の相互作用は、可能な暗黒物質の候補とみなされている電子および陽電子の存在量のデータ (PAMELA, ATIC, Fermi LAT, HESS, PPB-BETS) を説明する候補になりうるとしている。

脚注

[編集]
  1. ^ Luis González-Mestres (December 1997), Lorentz symmetry violation at Planck scale, cosmology and superluminal particles, https://arxiv.org/abs/physics/9712056 , Proceedings COSMO-97, First International Workshop on Particle Physics and the Early Universe : Ambleside, England, September 15–19, 1997.
  2. ^ Luis González-Mestres (May 1995), Properties of a possible class of particles able to travel faster than light, https://arxiv.org/abs/astro-ph/9505117 , Proceedings of the 30th Moriond Workshop Dark Matter in Cosmology, Clocks and Tests of Fundamental Laws, January 22–29, 1995
  3. ^ Luis González-Mestres (January 1996), Cosmological Implications of a Possible Class of Particles Able to Travel Faster than Light , https://arxiv.org/abs/astro-ph/9601090 , Proceedings of the Fourth International Workshop on Theoretical and Phenomenological Aspects of Underground Physics, Toledo (Spain) September 17–21, 1995, Nucl.Phys. - Proc.Suppl. 48 (1996) 131-136.
  4. ^ Nick E. Mavromatos (August 2002), Testing models for quantum gravity, CERN Courier, http://cerncourier.com/cws/article/cern/28696
  5. ^ Dennis Overbye (December 2002), Interpreting the Cosmic Rays, The New York Times, December 31, 2002, http://www.nytimes.com/2002/12/31/science/interpreting-the-cosmic-rays.html?n=Top/News/Science/Topics/Space
  6. ^ a b Sidney Coleman and Sheldon L. Glashow (March 1997), Cosmic Ray and Neutrino Tests of Special Relativity, https://arxiv.org/abs/hep-ph/9703240 , Phys.Lett. B405, 249-252, 1997.
  7. ^ Luis González-Mestres (June 1997), Possible Effects of Lorentz Symmetry Violation on the Interaction Properties of Very High-Energy Cosmic Rays, https://arxiv.org/abs/physics/9706032
  8. ^ a b Luis González-Mestres (December 1997), Observing air showers from cosmic superluminal particles, https://arxiv.org/abs/physics/9712049 , Proceedings of the Workshop on observing giant cosmic ray air showers from >10E20 eV particles from space, Univ. of Maryland, Nov 13-15, 1997. AIP Conf. Proc. Volume 433, pp. 418-427 (1998).
  9. ^ Luis González-Mestres (April 1997), Vacuum Structure, Lorentz Symmetry and Superluminal Particles, https://arxiv.org/abs/physics/9704017
  10. ^ Albert Einstein (January 1921), Geometry and Experiment, address given on 27 January 1921 at the Prussian Academy of Sciences in Berlin, from The MacTutor History of Mathematics archive, http://www-history.mcs.st-and.ac.uk/Extras/Einstein_geometry.html , originally published by Methuen & Co. Ltd, London, in 1922
  11. ^ a b Luis González-Mestres (August 2009), Preon models, relativity, quantum mechanics and cosmology (I), https://arxiv.org/abs/0908.4070
  12. ^ H. B. Nielsen and P. Olesen, A Parton view on dual amplitudes, Phys. Lett. 32B, 203 (1970)
  13. ^ Luis González-Mestres (February 2009), AUGER-HiRes results and models of Lorentz symmetry violation, https://arxiv.org/abs/0902.0994 , Proceedings of CRIS (Cosmic Ray International Seminar), La Malfa, September 15–19, 2008, Nuclear Physics B - Proc. Suppl., Volume 190, May 2009, Pages 191-197.
  14. ^ Luis González-Mestres (December 2009), Lorentz symmetry violation, dark matter and dark energy, https://arxiv.org/abs/0912.0725 , Contributed paper to the Invisible Universe International Conference, Paris June 29 - July 3, 2009.
  15. ^ Luis González-Mestres (May 1997), Absence of Greisen-Zatsepin-Kuzmin Cutoff and Stability of Unstable Particles at Very High Energy, as a Consequence of Lorentz Symmetry Violation, https://arxiv.org/abs/physics/9705031 , Proceedings of the 25th International Cosmic Ray Conference, Durban (South Africa), July 28 - August 8 , 1997
  16. ^ Luis González-Mestres (December 1997), Physics Opportunities Above the Greisen-Zatsepin-Kuzmin Cutoff: Lorentz Symmetry Violation at the Planck Scale, https://arxiv.org/abs/physics/9712047 , Proceedings of the Workshop on observing giant cosmic ray air showers from >10E20 eV particles from space, Univ. of Maryland, Nov 13-15, 1997. AIP Conf. Proc. Volume 433, pp. 148-158 (1998).
  17. ^ Luis González-Mestres (June 1996), Superluminal Matter and High-Energy Cosmic Rays, https://arxiv.org/abs/astro-ph/9606054
  18. ^ Luis González-Mestres (May 2009), Superbradyons and some possible dark matter signatures, https://arxiv.org/abs/0905.4146

関連項目

[編集]