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スーパーウィード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

スーパーウィード英語: superweed)とは、除草剤の効果がない雑草のこと。スーパー雑草とも表記される。遺伝子組み換え作物との受粉により、除草剤に対する薬剤抵抗性を持った野生の植物である[1]。広義には植物から微生物にわたる超雑種の意味で用いられる。

概況

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パーマーアマランス 成長が早く、大きいものは3mを超える高さに生育する[2]

アメリカ合衆国では、1970年代モンサントが開発したグリホサート系除草剤ラウンドアップが普及し、また、1996年に同社の遺伝子組み換え作物「ラウンドアップレディ」が発売されると両者を併用しての耕作が広く用いられることとなった[3]。米国産の大豆の90%以上、トウモロコシ綿花の80%はモンサントの技術を内包する種子により栽培されている[4]

ラウンドアップに耐性のあるラウンドアップレディの出現は、農家にとって手入れ作業の効率化につながり長年にわたり効果を上げてきた。ところが2010年代に入ると、グリホサートに耐性のあるスーパーウィードが繁殖するようになり、米国内の20州以上に及ぶ580万ヘクタールを超える農地に拡大している[3][4]。スーパーウィードの存在は2000年デラウエア州の大豆畑で既に見つかっていたが[5]、年々深刻さが増している[注 1]

スーパーウィードの発生要因は、ラウンドアップレディなどの遺伝子組み換え作物と、野生植物の受粉によるものとされ[1]米農務省と米雑草学会の共同報告では、除草剤の無差別な使用が状況悪化の悪循環に繋がっているとの発表がある。また専門家からは抑制は困難であるとの指摘も出ている[4]。対策としては無農薬栽培を選ぶか[5]、除草剤の量を更に増やして抑制の発現を待つかのどちらかとなる[3]

こうした中で2014年1月、同じく除草剤と遺伝子組み換え作物を手掛けるダウ・アグロサイエンス英語版 が、新たな種子の登録と薬剤の規制緩和を米農務省に求めている。これはグリホサートに耐性を持つとされる種子であるが、新たに「2,4-D」の薬剤を除草剤として使用するものである。しかし、「2,4-D」の安全性を危惧する声や[注 2]、新しい薬品を取り入れてもグリホサートのように、いずれ耐性を持つ新たなスーパーウィードの発生を懸念する声が挙がっている[3][6]

また、2015年3月には世界保健機関によりグリホサートの曝露による、非ホジキンリンパ腫発症増加の因果関係が発表されているが[7]アメリカ合衆国連邦政府は大豆の主要な輸出先である中華人民共和国に対して、遺伝子組み換え作物の禁輸措置に対する規制の撤廃を求めている[8]

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脚注

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注釈

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  1. ^ 米国のアグリビジネス市場調査会社ストラタスの調べでは、スーパーウィードの発生は、2011年には農家全体の34%であったが、翌年には49%と半数近くに及ぶ被害となっている[3]
  2. ^ 「2,4-D」はベトナム戦争において使用された枯葉剤オレンジ剤の主成分である[6]

出典

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  1. ^ a b Paul, Brown (25 July 2005). “FGM crops created superweed, say scientists Modified rape crosses with wild plant to create tough pesticide-resistant strain” (English). The Guardian. http://www.theguardian.com/science/2005/jul/25/gm.food 
  2. ^ a b c 長谷川, 博一 (2013年5月28日). “スーパー雑草&害虫の出現で農業は悪循環に陥っている”. 週プレNEWS. オリジナルの2016年4月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160406060347/http://wpb.shueisha.co.jp/2013/05/28/19357/ 2021年8月10日閲覧。 
  3. ^ a b c d e Veronique, Dupont (2014年1月15日). “US 'superweeds' epidemic shines spotlight on GMOs [農薬の効かない雑草「スーパーウィード」、米国で大繁殖]” (日本語). AFP. AFP BB NEWS. https://www.afpbb.com/articles/-/3006577?pid=0 2014年1月16日閲覧。 
  4. ^ a b c “スーパーウイードの拡大、抑制は困難=米専門家” (日本語). REUTERS. (2012年5月11日). http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012051100437 
  5. ^ a b William Neuman; Andrew Pollack (2010年3月10日). “Farmers Cope With Roundup-Resistant Weeds” (English). The New York Times. http://www.nytimes.com/2010/05/04/business/energy-environment/04weed.html 2014年1月16日閲覧。 
  6. ^ a b “U.S. government might deregulate corn, soybean seeds” (English). 毎日新聞. (2014年1月4日). オリジナルの2014年1月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140116193938/http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20140104p2g00m0bu018000c.html 2014年1月16日閲覧。 
  7. ^ Gary Paul Nabhan (2015年5月1日). “Will superweeds, regulation create a perfect storm in Iowa farmlands?” (English). The Des Moines Register. オリジナルの2016年5月24日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160524094924/http://www.desmoinesregister.com/story/opinion/columnists/2015/05/01/agriculture-monarch-amaranth-superweed-glyphosate-view-gary-paul-nabhan/26757013/ 2016年5月24日閲覧。 
  8. ^ Carey Gillam; Andre Grenon (2015年6月24日). “Monsanto to invest more than $1 bln in dicamba herbicide production” (English). REUTERS. オリジナルの2016年5月24日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20160524084559/http://www.reuters.com/article/monsanto-dicamba-idUSL1N0ZA1XN20150624 2016年5月24日閲覧。