スリープレス・ドメイン
『スリープレス・ドメイン』(原題:Sleepless Domain)は、アメリカ人漫画家であるメアリー・ケーグル(en:Mary Cagle)のアメリカン・コミックス作品である。
孤立した架空の都市を舞台に、魔法少女たちの戦いや生き方、人間模様を描く。
概要
[編集]メアリー・ケーグルが2012年に企画を立案し、2015年にメアリーによって生み出された本作は、魔法少女たちの生き様や苦悩といったテーマとして描かれている。作風や物語に直接影響を与えているのは、日本のアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』である。一方で、悲劇に立ち向かうといった独自の要素を取り入れている[1]。
当初の仮題は「Umbra Rising」であり[2]、Chapter2まではオスカー・ベガがイラストを担当していたが、Chapter3以降は主にメアリーがすべて担当している。 シリーズの主体は主に主人公のウンディーネ・ウェルズを中心に描かれているが、一部のエピソードでは、他の登場人物を中心としている。
また、同じくメアリーが手掛けた作品『Kiwi Blitz』から何人かがゲスト出演している(後述)。
ストーリー
[編集]チーム・アルケミカルのチームメイトである主人公、ウンディーネ・ウェルズはある日、テッサ・クインとの仲違いがきっかけでチームメイトを亡くし、さらに遅れてやってきたテッサもウンディーネのケガを治療する過程で力を失ってしまう。 その数日後、あの悲劇の真相を探る過程で、愛知こころと出会う。こころと共に戦うウンディーネは、戦いの中で「人として生きることの意味」を見出すこととなる。
登場人物
[編集]パワートレーング倶楽部(Magical Girl Power Training Club)
[編集]- ウンディーネ・ウェルズ / アルケミカル・ウォーター(Undine Wells / Alchemical Water)
- 本作の主人公。かつてのチームアルケミカルのメンバーであり、水の力を操っている。
- 思いやりが強く、他人のためなら自己犠牲もいとわないこともある。
- パトロール中、チームメイトと共にとあるモンスターの襲撃で重傷を負ってしまうが、遅れてやってきたテッサの甲斐もあって回復し、以降はチーム最後の一人となる[CP 1]。
- 当時は自分に自信が持てなかったが故に内気になりがちであり、チームメイトを失ってからはそれが顕著になっていた。
- チームメイトの死から数日後に愛知こころと出会い、それからしばらくしてペアを組むようになる。
- 全体的に水をイメージした衣装ではあるが、物語が進むにつれその衣装は変化している。
- 愛知こころ / ハートフル・パンチ(Kokoro Aichi / Heartful Punch)
- 本作のもう一人の主人公。パワートレーニング倶楽部のリーダーであり、ウンディーネとペアを組むまでは一人で活躍していた。明るく活発的で社交的である。
- 格闘技を意識した戦い方が特徴。
- 母親の美月も魔法少女であり、その遺伝なのかこころも魔法少女になったという経緯がある[CP 2]。
- 父親からは魔法少女になることを反対されているらしく、寮で一人暮らししている。
- あだ名を使うことが多く、自身のことを「HP」と称している。
- ゾーイ・ブレッチャー(Zoe Blecher)
- 本編開始直前に魔法少女になっており、ルーとペアを組んでいる。
- パチンコを使った戦い方をしているが、臆病ゆえに魔法少女になってからしばらくはモンスターとの戦いを避けていた。
- 姉のシルバー・ストライク(Silver Strike)に対するコンプレックスを抱いている。
- キャシディ・テーラー / フラッシュ・カット(Cassidy Tailor / Flash Cut)
- チーム・フラッシュのメンバー。はさみを用いた戦いが特徴で、分身が可能。
- 倶楽部リーダーであるこころに対する忠誠は崇拝の域に達しており、仲間たちの表面的な振る舞いに対して見下す一面があった。
- ウンディーネに対しては、「こころと勝手にペアを組んだクソ野郎」として嫉妬・憎悪を抱いており、ウンディーネに問いただすために一度戦闘になるが、これが理由でこころをはじめとするクラブメンバーに叱責されてしまい、信用を失う[CP 3]。
- その夜、一人でパトロールに出がけた彼女だが、その最中にグープスによって消滅してしまう[CP 4]。
- ヴェディカ・ダワン / マインドフル・アイ(Vedika Dhawan / Mindful Eye)
- 戦闘を行わない魔法少女の一人。相手の心を読んだり、テレパシーでコミュニケーションをとることができる。
- 学園内でもトップクラスの成績をとっており、非常に友好的である。
- 夜間はクレアの家の近くの病院でボランティアをやっているが、一回だけモンスターと戦ったことがある[CP 5]。
- バド / レーザー・スラッシュ(Bud / Laser Thrash)
- ハーレイとペアを組んでいる魔法少女。強力なレーザーを放つ大きな花を作り出すことができる。
- 非常に噂話が好きであり、ウンディーネとこころがペアを組むことをある程度察していた。
- ハーレイ / ナックル・スラッシュ(Harley / Knuckle Thrash)
- バドとペアを組んでいる魔法少女。こころと同じく格闘技を意識した戦い方をしている。
- 少し控えめな性格ではあるが、実際には友好的で真面目らしい。
チーム・アルケミカル(Team Alchemical)
[編集]ウンディーネとテッサが所属していたチーム。五大元素(四元素とエーテル)がモチーフとなっている。
- テッサ・クィン / アルケミカル・エーテル(Tessa Quinn / Alchemical Aether)
- ウンディーネ・ウェルズ / アルケミカル・ウォーター(Undine Wells / Alchemical Water)
- 上の2名は本人の項を参照。
- シルビア・スカイラーク / アルケミカル・エアー(Sylvia Skylark / Alchemical Air)
- 風を操る魔法少女。物語序盤にモンスターの襲撃でサリー、グウィンと共に命を落としている[CP 1]。
- やや傲慢な態度をとりがちではあったが、非常に勤勉でありチームメイトのことを非常に大切に思っている一面がある。
- チームの中ではリーダーのテッサを抑え最も人気が高かった[CP 6]。
- 二人の兄妹がいる。
- 森田グウィン / アルケミカル・アース(Gwen Morita / Alchemical Earth)
- 大地を操る魔法少女。
- 好戦的な性格であり、日常でも一人でトレーニングしている描写がある。
- 回想シーンではウンディーネに対してアドバイスする一面もあった[CP 7]。
- こころに強い憧れを抱いていた[CP 1]。
- サリー・フィンタン / アルケミカル・ファイヤー(Sally Fintan / Alchemical Fire)
- 炎を操る魔法少女。
- チームでは最年少であるが故に、非常に自意識過剰である。
- テッサがリーダーであることに不満を口にしたことでテッサを怒らせてしまい、結果的にチームの瓦解を招いてしまう[CP 1]。
チーム・ブリッツ(Team Blitz)
[編集]3人の魔法少女と1人のマネージャーで構成されている。全員音楽ジャンル名からとっている。
このチームに登場するキャラクターは、全員が『Kiwi Blitz』からのゲスト出演となっており、相当するキャラクターは【】内で表記している。
- チームメンバー
- ポップ・ブリッツ(Pop Blitz)【ステッフィ・フローリッヒ / Steffi Frohlich】
- 電気の力を持つ魔法少女。
- 思いやりが強い一方で、自分が思っていることを躊躇なく話すことが多い。
- ロニについては嫌悪感を露わにしている[CP 8]。
- スイング・ブリッツ(Swing Blitz)【チャンドラ・マキシグ / Chandra Makisig】
- チームの中では最年少。いたずらっ子。
- テクノ・ブリッツ(Techno Blitz)【42】
- ベンと共に情報収集を担っている。また、ドローンを呼び出すことも可能。
- なお、原作の42はアンドロイドではあるが、本作における彼女は生身の人間となっている。
- 協力者
- ベン / ロック・ブリッツ(Ben / Rock Blitz)【ベンゼン・コントラクター / Benzene Contractor】
- チームのマネージャー。
チーム・フォルテ(Team Forte)
[編集]バンドグループを兼ねた魔法少女チーム。音楽がモチーフ。
- ロニ / フォルテ・リード(Roni / Forte Lead)
- チームリーダー。リードギター、ボーカル担当。当初はソロで活躍していた。
- フレンドリーな一方で無神経な一面もある。
- ゲイル / フォルテ・ベース(Gail / Forte Bass)
- ベースギター担当。無口だが思いやりが強く真面目。
- デビー / フォルテ・ドラム(Debbi / Forte Drums)
- パーカッション担当。子供っぽい性格でロニよりも無神経。
- フォルテ・キー(Forte Keys)
- ピアニスト。時々歌を歌うことがある。
- メンバーの中で唯一本名が明らかになっていない。
チーム・メルティ(Team Melty)
[編集]2人組のチーム。互いに恋愛関係を持っている。二人とも性格は非常にやさしく、当時のウンディーネの心境に気遣う場面もあった[CP 9]。
- アマール・シャルマ / メルティ・フレイム(Amahle Sharma / Melty Flame)
- サリーと同じく炎の力を持つ魔法少女。
- カリーナ・トムセン / メルティ・フロスト(Carina Thomsen / Melty Frost)
- 氷の力を持つ魔法少女。
チーム・アウトレイジ(Team Outrageous)
[編集]3人組のチーム。全員果物の名前からとっている。 いずれも本名は明らかになっていない。
- アウトレイジ・ライム(Outrageous Lime)
- チームリーダー。バットで振り回したり、タバコを吸ったりなど素行は非常によくないが[CP 10]、魔法少女たちとのつながりを大切にしている。
- アウトレイジ・レモン(Outrageous Lemon)
- 普段は優しい一方で、やや生意気な一面がある。
- アウトレイジ・アップル(Outrageous Apple)
- スケボーが得意な魔法少女。ゲイルとは双子の関係になっている。
チーム・スピアー(Team Spear)
[編集]本編よりも数年前に活躍した3人組のチーム。
- リーナ / サンライト・スピアー(Leana / Sunlight Spear)
- 中世西洋の戦士がモチーフの魔法少女。
- 後述する出来事によりチーム最後の一人となるが、現在行方は分かっていない。
- 明星関 / スターライト・スピアー(Mingxing Guan / Starlight Spear)
- 古代中国の戦士がモチーフの魔法少女。
- 美月の娘であるこころを救出した際に力と右腕を失い義手となり[CP 10]、以降は防衛局(CDD)に就職している[CP 2]。
- 渡辺美月 / ムーンライト・スピアー(Mitsuki Watanabe / Moonlight Spear)
- こころの母親。奈良・平安時代の日本をモチーフとした衣装を纏っており、薙刀を持っている。
- こころを出産したときに力を失い、その数か月後にモンスターの襲撃で自身の親とともに死亡する[CP 2]。
その他の魔法少女
[編集]- ルー・バイーア(Rue Bahia)
- ゾーイとペアを組んでいる魔法少女。謎の薬を用いて、モンスターに攻撃を仕掛けたり、自身の治療に活用している。
- 魔法少女としては非公認の立ち位置であるため、イーストタウン高校に通っている。
- 陰謀論者であり、街における魔法少女たちの扱いについて疑問を示している。
- アネモネ(Anemone)
- 本作における重要な鍵となる人物の一人。以前はナレーション的な立ち回りではあったが、物語中盤[CP 11]からは本格的に本編に深くかかわるようになる。
- この街の仕組みについて知っており、白衣の女性についても覚えている模様。
- 奇襲攻撃を受けた際[CP 12]、建物等を直接覆うバリアーに異常をもたらしたことから、夜間のバリアーを生み出すことができることが示唆されている。
- ギャビー(Gabby)
- パワートレーニング倶楽部のメンバーではないものの、当倶楽部が活動するジムに通っている。
- 倶楽部のメンバーと一緒にトレーニングすることもある。
- スージー(Suzy)
- こころが暮らしている学生寮の寮長。
- アビリン(Abilene)
- 園芸部所属の魔法少女。
- 自身の活動場所に無断で入ったウンディーネ達を追い払った[CP 13]。
その他の登場人物
[編集]- マーク(Mark)
- 中年男性。ニコデムス(Nicodemus)というネズミを飼っており、夜間の街をさまよっている。
- モンスターに対抗できる武器を所持している。
- ウィル(Will)
- イーストタウン高校の生徒。テッサとは以前から面識があった模様。
- クレア(Claire)
- ゾーイの従妹。元々こころのファンだが、ある出来事をきっかけにウンディーネのファンにもなる[CP 7]。
- 金色の獣(The Golden One)
- 魔法少女を見守る謎の存在。様々な姿の動物に変身することが可能。
- テッサからは「他の魔法少女の使い魔ではないか」と推察している[CP 1]。
- 白衣の女性(The Woman in White)
- 本作における重要な鍵となる人物の一人。
- 魔法少女になる直前の夢に必ず現れ、彼女の干渉によって力を授けられることになる。
- 多くの魔法少女は彼女のことを覚えていないことが多い。
敵対人物
[編集]- グープス(Goops)
- 本作における重要な鍵となる人物の一人。
- 本作の黒幕に近い人物であり、モンスターを作り出すことが可能。
- 魔法少女たちをはじめとする街の人々の苦悶を好んでおり、その為なら手段を選ばない冷酷な人物。
- ある出来事をきっかけにウンディーネやテッサに付きまとうようになった。
- スライムのように瞬間移動することもできる。
- テッサ・クィン / アルケミカル・エーテル(Tessa Quinn / Alchemical Aether)
- かつてのチーム・アルケミカルのリーダー。チームメイトであるウンディーネの親友にして後にライバルとなる人物。
- 強力なエーテル使いの魔法少女としてその名をとどろかせていたが、チームのリーダーとして激しいプライドを持ってしまったが故に、他のチームメイト達と対立してしまい、その日の夜は当初一緒に行くことを反対する。その後、不安のあまりチームメイトの所まで駆けつけたがウンディーネ以外は既に死亡、ウンディーネも重体となっていた。
- ウンディーネを救うために自らの力で治療したが、その際に力を失う[CP 1]。
- イーストタウン高校に転校してからは、ウンディーネ達に対する罪悪感が渦巻くようになり[CP 8]、複雑に絡み合った感情とグープスからの囁きによって追い詰められていった[CP 11]。
- ウンディーネからあの日の悲劇の真相を知り、激昂してグープスと直接対決になるが、その際にグープスに憑依され、グープスのような冷酷な性格になり果ててしまう[CP 13]。
世界観ならびに劇中の主な用語
[編集]世界観
[編集]物語の舞台は、場所も名前もわからない都市であり、巨大なバリアによってモンスターからの襲撃を防いでいる。しかし、午後10時から深夜2時の間はそのバリアがなくなりモンスターが侵入してくるため、市民の安全のために魔法少女たちが戦っている。
劇中の用語
[編集]- 魔法少女
- バリアがなくなる深夜に活躍する10代の少女たちのことを指す。魔法少女になる際、必ず夢の中で白衣の女性と会うことになる。
- 12歳前後に魔法少女になり、19歳前後でその力を失うが、テッサのようにあまりにも力を使いすぎると19歳近くになってなくても力を失うことがある。
- 魔法少女になる際、髪と目の色が変わり、体のどこかに自身のシンボルマークがつく。
- 魔法少女たちはこの街のシンボル的な存在として扱われ、多くのメディアやブランド商品なとで収益を得ている。
- フューチャー・プロミス・スクール(Future's Promise School for Magical Girls)
- 魔法少女たちが通う中高一貫校。
- 夜間活躍する魔法少女のためか、この街では最も教育などに力を入れているのが特徴。
- なお、前述のとおり魔法少女になるタイミングは一定ではないため、学力によってクラス分けがされている。
- また、授業が始まる時間がほかの学校よりも遅く、午前11時からとなっている。
- イーストタウン高校(Easttown High School)
- 街の東側にある公立高校。現在ではルーとテッサが通っている。
- パワートレーニング倶楽部(Magical Girl Power Training Club)
- 現在のウンディーネが所属している部活。
- こころがキャプテンを務めており、現在は6人の魔法少女たちが所属している。
受賞歴
[編集]- 2019年 第8回Cartoonist Studio Prize - ウェブコミック部門 第8位[3]
脚注
[編集]- ^ “Mary Cagle [@cubewatermelon]”. X. 2024年9月9日閲覧。
- ^ sleepless-domain (2014年). “SLEEPLESS DOMAIN”. Tumblr. 2024年9月9日閲覧。
- ^ “The Cartoonist Studio Prize: The Shortlists” (英語). Slate. (2020年4月13日). ISSN 1091-2339 2024年9月9日閲覧。
参照チャプター
[編集]- ^ a b c d e f Chapter2『The Team』
- ^ a b c Chapter10『Diastole』
- ^ Chapter14『Circulation』
- ^ Chapter15『Downstream』
- ^ Chapter20『Aberration』
- ^ Chapter1
- ^ a b Chapter9『Aeration』
- ^ a b Chapter6『Refraction』
- ^ Chapter5『Drifting』
- ^ a b Chapter17『Confluence』
- ^ a b Chapter12『Penumbra』
- ^ Chapter19『Atrium』
- ^ a b Chapter18『Distributary』
外部リンク
[編集]- 公式ウェブサイト(英語)
- Sleepless Team (@SleeplessDomain) - X(旧Twitter)