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スポンギフォルマ・タイランディカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スポンギフォルマ・タイランディカ
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
: 真正担子菌綱 Agaricomycetes
: イグチ目 Boletales
: イグチ科 Boletaceae
: スポンギフォルマ属 Spongiforma
: スポンギフォルマ・タイランディカ S. thailandica
学名
Spongiforma thailandica
Desjardin, Manf. Binder, Roekring & Flegel
スポンギフォルマ・タイランディカが発見されたナコーンナーヨック県

スポンギフォルマ・タイランディカSpongiforma thailandica)は、イグチ科に属する菌類の一種。2009年に最初に記載された、子実体にのない海綿状の種であり、タイ中部にあるカオヤイ国立公園英語版において発見された。ゴム状の子実体で、ニオイキシメジ英語版 (Tricholoma sulphureum) に似た強烈なコールタール臭を持ち、胞子産生組織に区切られた内部に数多くの空洞を持つ。

分類と系統

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Porphyrellus porphyrosporus

Porphyrellus pseudoscaber

Porphyrellus sordidus

Spongiforma thailandica

オニイグチ属 Strobilomyces

リボソームDNAの配列に基づくスポンギフォルマと他のイグチ科の種の系統発生と関係[1]

本種は、2002年7月にタイ中部のカオヤイ国立公園で収集された標本に基づいて2009年最初に記載され、約3年後再び同じ場所で発見された。これ以前にも、本種は2001年のタイ語の出版物でヒメノガステル属 Hymenogaster の未記載種として報告されていた[1][2]。リボソームDNA配列の分子系統解析により、本種の含まれるスポンギフォルマ属はクロイグチ属 Porphyrellus と姉妹群をなすことが分かっている[1]。その次に近縁な属はオニイグチ属 Strobilomyces である[3]。この3属はともにイグチ目中の1亜目、イグチ亜目 Boletineae に含まれるイグチ科を構成する[3]

属名 Spongiforma は子実体のスポンジのような性質を指し、種形容語 thailandica は発見された国であるタイを示している[1]

特徴

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本種の子実体は比較的大きく、直径10 cmセンチメートル、高さ4-7 cmで、淡褐色がかった灰色から褐色または赤褐色である[1]。スポンジ様かつゴム状で、水を含ませ絞ると元の形に戻る。 表面には直径2-20 mmミリメートルの不規則で比較的大きな小室(locule)と呼ばれる空洞があり、胞子を生成する生殖組織が並んでいる[1]。子実体は柄を持たず、代わりにコルメラ英語版を持つ。コルメラは子実体基部にある小さな柱状の、子実体の中に伸びる内部構造である。コルメラの大きさは、高さ10-15 mm、頂端側では直径8-10 mm、基部側では3-4 mmで、大量の微細な白い菌糸体が付着している[1]。子実体には、Tricholoma sulphureum のようにコールタールや焦げたゴムに似た強い臭いがある。3-10%の水酸化カリウムを滴下すると、組織が紫色に変わる[1]

全体的に、胞子は褐色から赤褐色に見える。顕微鏡で見ると、アーモンド状 (amygdaliform) をしており、通常10-11.5 µm × 5.5-7 µmマイクロメートルの大きさである。担子器は円筒形からほぼ棍棒状で、大きさは25-32 µm × 6.5-9.5 µm である。担子器には、長さ最大9.5 µmのまっすぐな小柄英語版が付いている。シスチジアの細胞壁は薄く、円筒形からほぼ棍棒状で、25-48 µm × 5-10 µm 程度である。シスチジアは非アミロイド性でメルツァー試薬英語版で呈色せず、ヨウ素液を吸収しない。シスチジアは小室の端に豊富にあり、担子器の間にも散在する。子実層托は分枝した菌糸で織り合わされてできており、ほぼ平行に配列している。これらの薄壁の円筒形菌糸は、膨らんだ隔壁を持ち、無色 (hyaline) のゼラチン質であり、非アミロイド性である。子実下層は、非アミロイド性で薄い細胞壁からなり、無色の非ゼラチン状の膨らんだ菌糸でできており、9-20 × 9-14 µm 程度である[1]

子実体はオーストラリアユーカリと共生する Gymnopaxillus nudus と似ている[1]。ただし、Gymnopaxillus の子実体は地中生で、強い臭いもなく、水酸化カリウムで紫色に染まらない。また、より胞子が長く、通常11-16 µmである[4]

生息地と分布

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Dense tropical humid forests on the side of a mountain
タイのカオヤイ国立公園の原生林

本種は、タイにあるカオヤイ国立公園の標高約750 m 地点にある原生林の地面で成長しているのが発見された。菌体は Shorea henryana 及び Dipterocarpus gracilis(ともにフタバガキ科)の根に侵入して菌根を作り増殖すると考えられている[1]

脚注

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出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k Desjardin, DE; Binder, M.; Roekring, S.; Flegel, T. (2009). Spongiforma, a new genus of gasteroid boletes from Thailand”. Fungal Diversity 37: 1–8. http://www.fungaldiversity.org/fdp/sfdp/FD37-1.pdf 2010年2月7日閲覧。. 
  2. ^ Ruksawong, P.; Flegel, T. (2001). Thai mushrooms and other fungi. Bangkok, Thailand: Center for Genetic Engineering and Biotechnology. p. 248 
  3. ^ a b Binder, M.; Hibbett, D.S. (2006). “Molecular systematics and biological diversification of Boletales”. Mycologia 98 (6): 971–81. doi:10.3852/mycologia.98.6.971. PMID 17486973. 
  4. ^ Claridge, A.W.; Trappe, J.M.; Castellano, M.A. (2001). “Australasian truffle-like fungi. X. Gymnopaxillus (Basidiomycota, Austropaxillaceae)”. Australian Systematic Botany 14 (2): 273–81. doi:10.1071/SB00012. 

関連項目

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外部リンク

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