コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

スウィート・トリップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スウィート・トリップ
Sweet Trip
ロベルト・ブルゴス(左)ヴァレリー・クーパー (右)
基本情報
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンフランシスコ
ジャンル
活動期間
レーベル ダーラ・レコーズ
メンバー
  • ロベルト・ブルゴス
  • ヴァレリー・クーパー
旧メンバー
  • ヴィエト・ルー
  • アーロン・ポーター
  • ロブ・ウイティンコ

スウィート・トリップ (: Sweet Trip) は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ベイエリア出身のエクスペリメンタル・ロックバンド1993年結成。2013年に一度解散したが、2019年に再結成。2022年に活動終了。

オルタナティヴ・ロックIDMを組み合わせたような、バンド独特の浮遊感のあるサウンドと複雑なプロダクションが特徴。2003年にリリースした『Velocity:Design:Comfort』を中心に、2010年代半ばよりインターネット上でカルト的な人気を獲得している[1][2]

レーベルメイトのJunior Varsity KMと共同でツアー活動を行ったほか、嶺川貴子クラブ8Gnacらの楽曲のリミックスも手掛けている。

来歴

[編集]

バンド結成〜デビュー初期 (1993年 - 2002年)

[編集]

1993年、 当時高校生であったロベルト・ブルゴスが高校のタレントショーへ参加する際にドラマーのヴィエト・ルーと出会い、共同でジャムセッションを行ったことが活動の発端となる[1]。その後2人の共通の知人であったヴァレリー・クーパーが参加し、3人でロックバンド「オフェーリア・サテライト」を結成[3]。ギター、ベース、ドラムを用いた一般的なロックバンドを目指していたが、当初はベースを弾けるメンバーがおらず、また新しくベーシストを見つけることができなかったため、バンドは活動休止状態に入った[1]

バンド活動を休止している間、ブルゴスはエレクトロニックの要素を前面に押し出したデモテープの録音を始め、バンドはそれまでの一般的な演奏形態から大きく路線変更する運びとなった。デモテープはブルゴスによって「The Sweet Trip」と名付けられ、後の「スウィート・トリップ」としての活動へと繋がることとなる[3]

制作されたデモテープの内5本は、カセットテープとしていくつかのインディーズ・レーベルに送られた。バンドはその内の一つDarla Records英語版と契約し、1998年にファースト・アルバム『Halica』でデビューを果たした[2]

『Halica』のリリース後もバンドはDarlaのコンピレーション・シリーズに寄稿するなど積極的に活動を続け[4][5]1999年には続編となるEP『Alura』をリリース[6]。同作では制作に初めてコンピュータが導入された。また同年にはSXSW 1999などのライブやフェスティバルにも出演し、次作への先駆けとなる2曲「Dsco」「Velocity」を披露した。

次第にバンドの体系はエレクトロニック色を強めたものへと変化していき、ルーは従来のバンドメンバーとしての活動からサウンドエンジニアへと転換し、1998年には従来のベーシストの役割を補うためにアーロン・ポーターが加入し、バンドは最大の4人体制となった[3]

バンドの発展〜解散まで(2003年 - 2018年)

[編集]

2003年、約1年と6か月のレコーディング期間を経て、セカンド・アルバム『Velocity:Design:Comfort』をリリース[7]。世間からの知名度は芳しくなかったが、AllMusicでは5点中4.5点を獲得し、2003年の「最注目アルバム」に選出されるなど[8]、評論家から高い評価を得た。また同作に関連して2004年『Little Darla has a Treat for You Vol.24』に未発表音源「Noise Is A Social Skill (V.0.8)」を提供[9]。バンドはその後再び活動休止[3]

2006年、活動を再開し、新しいアルバムに向けた楽曲の制作を開始。この頃までにメンバーの再編成が行われており、結成当初からのメンバーだったヴィエト・ルーが脱退し、同じくベイエリアを拠点とするジュリー・プラグから、ロブ・ウイティンコがドラマーとして加入している[3]

2009年、3作目のアルバム『You Will Never Know Why』をリリース[10]。エレクトロニック路線を推し進めた前2作とは異なり、ギターポップを前面に押し出したアルバムとなった[11][12]。同作はバンドが4人体制で制作した最後のアルバムであり、アーロン・ポーターとロブ・ウイティンコはこれ以降の活動に参加していない。

2013年、ロベルト・ブルゴスは自身のSoundCloudで新曲「Things to Ponder While Falling」をリリースし、同曲を「おそらく(スウィート・トリップとしての)最後の曲になるだろう」と説明した(のちに撤回している)[13]。バンドは2019年に再結成するまで、事実上の解散となった。解散中もメンバーの活動は続けられ、ブルゴスはBlacktunic名義でSoundCloudやBandcampで曲を公開し[14]、クーパーはスウィート・トリップの未発表音源を自身のSoundCloudにアップロードしている。

バンドの解散中、2003年作『Velocity:Design:Comfort』がインターネット上でカルト的人気を集め、バンドの知名度向上にも貢献した[1][2]。これはスウィート・トリップとしての2人の活動に大きな影響を与え、過去にリリースした楽曲の再発や、ブルゴスがオンライン上のインタビューにてスウィート・トリップの再結成について言及するなど、これらは後のバンド再結成へと繋がることになる[15][16]

再結成〜解散(2019年 - 2022年)

[編集]

2019年8月、Darla RecordsはFacebookにて『Velocity:Design:Comfort』を2020年に2枚組LPで再販することを発表[17]。関連してロベルト・ブルゴスはTwitterで「『Velocity:Design:Comfort』をLPで発売するには追加の曲を書き上げなければいけないと知り、うれしく思っている」と発言し、活動再開への意向を固めた[18]。その後のインタビューで、ブルゴスとクーパーは、スウィート・トリップを2ピースバンドとして再結成することを正式に発表した[2][15]2020年初頭には、7年ぶりとなる新曲「In Sound, We Found Each Other」を『Little Darla Has a Treat for You, Vol. 30』に提供し、本格的に活動を再開[19]

2021年1月22日、『You Will Never Know Why』が、新デザインのジャケットと3つの新曲を追加してリマスター盤でリリースされた[20]

3月28日、4作目のアルバム『A Tiny House, In Secret Speeches, Polar Equals』をリリース[21]。「Walkers Beware! We Drive Into the Sun」がシングルカットされ、同年1月15日にリリースされた[22]

2022年1月7日には、ブルゴスがTwitter上で『Halica』に『Fish EP』からの楽曲を追加した増補盤を2月11日にリリースすることを発表し[23]、同月にヴァレリー・クーパーがバンドを脱退することがアナウンスされた[24]

3月18日にリリースしたコンピレーション・アルバム『Seen / Unseen』[25]と、5月27日にリリースした『Alura』のリマスター盤[6]を最後に、スウィート・トリップは解散し、1993年より活動してきた同バンドの活動に幕を下ろした。

音楽的影響

[編集]

ロベルト・ブルゴスとヴァレリー・クーパーは、2020年Sonemicのインタビューで、今までに影響を受けたアーティストにアイアン・メイデンソニック・ユースエイフェックス・ツインスロウダイヴレッド・ツェッペリンブラックドッグカメレオンズジャン・シベリウスブロードキャストムースシーフィールマイケル・ジャクソンコクトー・ツインズ101ストリングス・オーケストラグレン・ミラー・オーケストラマイ・ブラッディ・ヴァレンタインペイル・セインツセルジオ・メンデスらを挙げている。

反響

[編集]

スウィート・トリップは長らくポピュラー音楽業界とは一線を画したバンドとしてアンダーグラウンド的人気を築いていたが、2010年代よりAlbum Of The YearやRate Your Musicなどの評論サイトや音楽掲示板上で取り上げられると、インターネットを中心に爆発的に人気が拡大し、インターネットミームとしても一定の知名度を獲得した[1][2]。バンド自体は2013年に一度解散したが、この影響を受けてロベルト・ブルゴスは2017年にバンドの人気について言及し、2019年にはバンドを再結成させている[26]。また、2003年作『Velocity:Design:Comfort』は、英Far Out Magazineの「史上最高のシューゲイズアルバム」第7位[27]に選出されるなど、評論家やフォロワーからとりわけ高く評価され、Rate Your MusicではSweet Tripの4アルバム中で最高評価を獲得している[28]。2020年にはその反響を受けて再発盤がリリースされた[7]

大衆メディアへの露出では、2007年のTVドラマ『バイオニック・ウーマン』に「Dsco」が劇中歌として起用されたほか、第22回サンフランシスコ国際アジア・アメリカ映画祭英語版の予告編に「Palomar, Your Shadow is the Yellow Sun」が提供されている[10]

2022年に米ステレオガムは、アメリカでの新興シューゲイザーブームに関連して、スウィート・トリップを「ピクシーズビルト・トゥ・スピルと同じく、若い世代のオルタナティヴ・ロック・ミュージシャンにとって非常に重要なバンド」と評価している[29]

メンバー

[編集]

旧メンバー

[編集]

ディスコグラフィ

[編集]

アルバム

[編集]

コンピレーション

[編集]

EP / シングル

[編集]
  • Fish Remixes and Versions (1998年、Darla)
  • Alura (1999年、Darla)
  • Design1:Dedicated (2003年、Observatory)
  • “Walkers Beware! We Drive Into the Sun” b/w “Stab Flow” (2021年、Darla)

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d e Sonemic Interview: Sweet Trip - RYM/Sonemic” (英語). Rate Your Music. 2024年1月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e A Deep Dive With Sweet Trip” (英語). KTSW 89.9 (2020年4月19日). 2024年1月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e Sweet Trip | Bio”. 2008年11月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月7日閲覧。
  4. ^ Records, Darla. “V/A - Drum & Bliss, Vol. 1” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  5. ^ Records, Darla. “V/A - Drum & Bliss, Vol. 2” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  6. ^ a b Records, Darla. “Sweet Trip - Alura (Expanded Edition)” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  7. ^ a b Records, Darla. “Sweet Trip - velocity: design: comfort” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  8. ^ (英語) Sweet Trip - Velocity : Design : Comfort Album Reviews, Songs & More | AllMusic, https://www.allmusic.com/album/velocity-design-comfort-mw0000038240 2024年1月7日閲覧。 
  9. ^ Records, Darla. “v/a - Little Darla has a Treat for You, Vol. 21, Winter 2004” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  10. ^ a b Sweet Trip - You Will Never Know Why”. Darla Records. 2021年1月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月7日閲覧。
  11. ^ (英語) Sweet Trip - You Will Never Know Why Album Reviews, Songs & More | AllMusic, https://www.allmusic.com/album/you-will-never-know-why-mw0000811914 2024年1月7日閲覧。 
  12. ^ Sweet Trip: You Will Never Know Why, PopMatters” (英語). PopMatters (2009年10月22日). 2024年1月7日閲覧。
  13. ^ SoundCloud - Hear the world’s sounds” (英語). SoundCloud. 2024年1月7日閲覧。
  14. ^ 1NE, by Blacktunic”. Blacktunic. 2024年1月7日閲覧。
  15. ^ a b Burgos, Roberto [@rburgosnavas] (2019年10月31日). "Thank you everyone for tuning in to the interview and to @WhoseShow for this happen. In a way we give him and @sweettripfan credit for reconnecting Valerie and I and we are very excited about what's next. Like Valerie says, "we love you!"" (英語). 2022年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブX(旧Twitter)より2024年1月7日閲覧
  16. ^ AN INTERVIEW WITH SWEET TRIP” (英語). MELTED (2021年8月16日). 2024年1月7日閲覧。
  17. ^ Burgos, Roberto [@rburgosnavas] (2019年8月29日). "@WhoseShow Ah! The #VDC reissue has been discussed but no work has been put into it yet as far as I know. Glad @MrDarla is doing this. So, yeah, there will be a Velocity:Design:Comfort vinyl next year if all goes well" (英語). X(旧Twitter)より2024年1月7日閲覧
  18. ^ Burgos, Roberto [@rburgosnavas] (2019年10月6日). "We've realized that we can't put out a VDC vinyl reissue without following up with new music, and that's an exciting realization" (英語). 2022年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブX(旧Twitter)より2024年1月7日閲覧
  19. ^ Records, Darla. “v/a - Little Darla Has a Treat for You, Vol. 30: Summer 2020” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  20. ^ You Will Never Know Why (2021 Remaster, New Cover/Comic), by Sweet Trip”. Sweet Trip. Bandcamp. 2024年1月7日閲覧。
  21. ^ Records, Darla. “Sweet Trip - A Tiny House, In Secret Speeches, Polar Equals” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  22. ^ Nast, Condé (2021年1月15日). “Sweet Trip Return With Two New Songs” (英語). Pitchfork. 2024年1月7日閲覧。
  23. ^ Burgos, Roberto [@rburgosnavas] (2022年1月6日). "Our debut album is getting the reissue treatment. Check it out and preorder t.co/RKzkKBhb7I t.co/caNwMB1d0Q" (英語). 2022年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブX(旧Twitter)より2024年1月7日閲覧
  24. ^ Sweet Trip Breakup - Darla Records” (英語) (2022年4月16日). 2022年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月7日閲覧。
  25. ^ Records, Darla. “Sweet Trip - Seen/Unseen” (英語). Darla Records. 2024年1月7日閲覧。
  26. ^ Hoeffner, Joe (2021年6月2日). “At Last a Truth That Is Real: Sweet Trip's Roby Burgos on the Band's Journey and Their New Album” (英語). Two Story Melody. 2024年1月7日閲覧。
  27. ^ From My Bloody Valentine to Slowdive: The 50 best shoegaze albums of all time - Far Out Magazine” (英語). faroutmagazine.co.uk (2019年7月9日). 2024年1月7日閲覧。
  28. ^ Sweet Trip discography - RYM/Sonemic” (英語). Rate Your Music. 2024年1月7日閲覧。
  29. ^ The New Wave Of American Shoegaze” (英語). Stereogum (2022年12月22日). 2024年1月7日閲覧。

外部リンク

[編集]

スウィート・トリップAllMusic

スウィート・トリップBandcamp