ジョリー・ダーキー・ターゲット・ゲーム
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ゲームがはいっていた箱の蓋 | |
販売元 | マクローリン・ブラザーズ |
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発売日 | 1890年 |
期間 | おそらく1890–1915年 |
プレイ人数 | 2-3人 |
準備時間 | 1分以内 |
ジョリー・ダーキー・ターゲット・ゲーム(Jolly Darkie Target Game,楽しい黒んぼ的入れゲーム)はマクローリン・ブラザーズが開発、製造していたゲームである[1]。1890年に発売され[2]、少なくとも1915年まではつくられていた[3]。同社は後にミルトン・ブラッドレー社に売却されている。
概要
[編集]このゲームの目的は、厚紙にサンボのイメージで描かれた的の「ぽっかり開いた口」に木でできたボールを投げ入れることである[2][4]。この口は開閉できた[5]。19世紀後半のアメリカでは、このように黒人を「野獣」として描写した製品や媒体は少なくなかった。そうした製品では黒人男性の顔はサンボのイメージと結びつけられ、「クーン」、「ダーキー」、「ニガー」、「ピカニニィ」などの人種差別的な言葉が惹句に並んだ[2]。例えば同じミルトン・ブラッドレー社の「ダーキーズ・クーン・ゲーム」などがその典型である[2]。「ダーキー」("darkie")という言葉は、黒人の「人相的特徴の誇大表現」であり、ミンストレルショーを連想させる[6]。『セラミック・アンクルとセルロイド・マミー』によれば、著者のターナーは、ミンストレルショーの開演前に劇場の外に座らされた黒人男性が、子供たちの暇つぶしで口の中にボールを投げ入れられていたという逸話を聞いたことがあるという[6]。キューバの詩人でありジャーナリストのホセ・マルティもまたコニーアイランドで同じような場面を目撃したことがあり、その体験を書き留めている[7]。
この時代には「いかさま野郎を殴れ!ノックアウトだ!」というゲームもあり[8]、黒人男性への暴力をテーマにした製品が幾つもつくられていた。当時の黒人はアメリカ全土でかきたてられる敵意との対峙を迫られていたといえるだろう[8]。
ジョリー・ダーキー・ターゲット・ゲームは黒人の「口」と「食欲」という当時の人種的ステレオタイプにのっとってつくられた製品の一つでもあり、硬貨をいれる投入口が黒人の口の形をしている貯金箱である「ジョリー・ニガー・バンク」などもその良い例である[5]。これらは、白人の親が自分の子供に買い与えることを想定して発売されていた[3][4]。こういったゲームやそこに描かれるイメージは、白人による支配と黒人の従属というテーマそのものであり、それを再生産するものである[9]。ターナーによれば、こうした商品は、奴隷制を廃止した後でも「アメリカの消費者が罪悪感を持たずに黒人の魂を売買する方法を発見した」ことを意味している。
今日では、このゲームはコレクターズアイテムの一種だと考えられている[10]。つまりものによっては侮辱的であったり人種差別的であったりもする、人形やおもちゃ、絵はがきなどの形で収集可能な、黒人にかかわる歴史的事物であるが[3]、このゲームはそうしたアイテムのなかでも「最も卑劣な例」といわれることがある[11]。1993年の時点で、アメリカには黒人の歴史にかかわるアイテムのコレクターが50,000人ほどおり、そのおよそ7割が黒人である[12]。
脚注
[編集]- ^ Congdon-Martin 1990, p. 46.
- ^ a b c d Booker 2000, p. 124.
- ^ a b c Washington Afro-American 1986.
- ^ a b Turner 1994, p. 11.
- ^ a b Tompkins 2012, p. 194.
- ^ a b Jackson 2006, p. 23, From minstrel paraphernalia and games to minstrel shows.
- ^ Arroyo 2013, p. 199, Note 78.
- ^ a b Congdon-Martin 1990, p. 16.
- ^ Ross Barnett 1982, p. 44.
- ^ Dant 1999, p. 150.
- ^ Markovich 2000, p. 11.
- ^ Gutloff 1993, p. 36.
参考文献
[編集]- Arroyo, Jossianna (April 2013). Writing Secrecy in Caribbean Freemasonry. New Directions in Latino American Cultures. Palgrave Macmillan. ISBN 9781137305152
- Booker, Christopher Brian (2000). "I Will Wear No Chain!": A Social History of African-American Males. Greenwood Publishing Group. ISBN 0275956377. LCCN 99-86221
- Hill Collins, Patricia (September 2006). “New commodities, new consumers”. Ethnicities (Sage Publications) 6 (3): 293-317. doi:10.1177/1468796806068322. ISSN 1468-7968 .
- Congdon-Martin, Douglas (1990). Images in Black: 150 years of Black collectibles. Schiffer Publishing. ISBN 0887402739
- Dant, Tim (1999). Material Culture In The Social World (reprint ed.). Open University Press. ISBN 033519821X. OCLC 9914375
- Gutloff, Karen (February 1993). “Memorabilia means money”. Black Enterprise (Earl G. Graves, Ltd.) 23 (7). ISSN 0006-4165.
- Jackson, Ronald L., Jr.Ronald L. (2006). Scripting the Black Masculine Body: Identity, Discourse, and Racial Politics in Popular Media. SUNY series, Negotiating Identity: Discourses, Politics, Processes, and Praxes. State University of New York Press. ISBN 9780791466254
- Markovich, Alex, ed (2000). The Art and History of Black Memorabilia. Larry Vincent Buster. C. Potter. ISBN 0609604252
- Ross Barnett, Marguerite (February 1982). “Nostalgia as nightmare: Blacks and American popular culture”. The Crisis (The Crisis Publishing Company) 89 (2): 42-45. ISSN 0011-1422.
- Tompkins, Kyla Wazana (2012). Racial Indigestion: Eating Bodies in the 19th Century. New York University Press. ISBN 9780814770054. LCCN 2011-51505
- Turner, Patricia A. (1994). Ceramic Uncles & Celluloid Mammies: Black Images and Their Influence on Culture. Anchor Books. ISBN 0385467842
- “Black memorabilia - new focal point for collectors”. Washington Afro-American: p. 3. (18 November 1986)
読書案内
[編集]- Martí Pérez, José Julián (30 January 1891) (スペイン語), Coney Island, Mexico: El Partido Liberal