ジュニアアイドル
ジュニアアイドルとは、日本における低年齢のアイドルを総称する呼び名である。その定義となるアイドルの年齢については幅があり、かつて使われていた「チャイドル」という言葉に代わって使われるようになった経緯から16歳未満(15歳以下)のアイドルを指す場合と[1][2][3][4]、18歳未満を対象とした児童ポルノ禁止法との関連から18歳未満(17歳以下)のアイドルを指す場合がある[5][6]。このうち、12歳以下の者を特にチャイドルと呼び分けるとする資料もある[1]。
低年齢のファッションモデルもジュニアアイドルに因んで、ジュニアモデル(またはティーンモデル)と呼ばれる。
概要
[編集]1990年代中頃、テレビ等での活動が増え始めた小学生のタレントやアイドルを指してフリーライター・作家の中森明夫により、「チャイドル」(「チャイルド」と「アイドル」の混成語)という造語が作られた。「チャイドル」という言葉の最初の使用例は、1996年3月の『週刊SPA!』の特集記事である[7]。元々子役等のほかアンダーグラウンドな媒体で小学生・中学生のモデルの活動は見られたが、1990年代には日本の被服文化の影響を受けたブルセラがブームとなり、お菓子系アイドルという呼び名も生まれた。2000年代に入るとそれらを含めた広義での「ジュニアアイドル」という呼称が主流となる。
雑誌や広告等のモデルや俳優(子役)から始まり、地上波のテレビドラマやテレビコマーシャルなどの出演により人気が出る場合が多い。ジュニアアイドルによってはグラビアアイドルとして写真集などを出したり、歌手などへ活動範囲を広げ、アイドル的な芸能活動を行なう場合も多い。
年齢を重ねて「ジュニア」の範疇に含まれなくなった場合には、「アイドル」または「歌手」「女優」などと呼ばれる。
活動媒体
[編集]1970年代頃から小中学生のモデルを起用した写真集やイメージビデオなどが多く発売されるようになったが、モデルがヌードになる作品も多かった。水着止まりのビデオや写真集は知名度のあるアイドル以外では商品価値が低く売上が見込めなかった(多くの大手出版社も少女ヌードを通常の作品もしくはアートとして販売しており、それが普通だった)。18歳未満のヌードは1980年代後半頃から徐々に自主規制や批判の対象とされ、1999年11月に児童ポルノ禁止法が施行されると市場からは姿を消した。
2002年頃からはいわゆるお菓子系といわれるジャンルで活動するジュニアアイドルの水着や着エロ作品がDVDソフト市場の成長にも乗じて発売本数を増やし、新しいマーケットを形成した。2000年代中頃から参入メーカーも増え、拡大し、アイドルDVDのひとつのジャンルとなった。
ジュニアアイドルとして活動し、その後も引き続き活動するケースも多く、ジュニアアイドル出身の女優やタレントも多く活動している。ジュニアアイドル時代に知名度を上げる者もいればその後の活動で知名度を上げる者もいる。また、わが子をアイドルにしたいという夢を持つ熱心な親を持つ者も多い。
ジュニアアイドルのイメージDVDのギャラは1本あたり10万から30万円程度が相場とされているが[8]、1本1万5000円程度というケースもある[9]。
2007年以降、いわゆるショタコンをターゲットとした男子のジュニアアイドルのイメージDVDもリリースされている。男子のジュニアアイドルの出演作には、砂浜で上半身裸になって空手やビーチボールを披露する、ふんどしや白いブリーフ1枚の姿になる、半ズボンの学校制服を着る、水着姿で砂遊びをしたり風呂場で玩具を使って遊ぶなどの表現がみられる[10]。
活動媒体の多様化により、2000年代後半に入るとテレビ、音楽、出版、インターネット等、様々な場所でジュニアアイドルの活動は今まで以上に多く見られるようになった。
前述の中森明夫によると、チャイドル文化を育んだことでプロダクションにいるティーンズモデルが認知され、『nicola』(1997年創刊)など女子ティーン向けファッション誌が生まれた側面もあるという(読者モデルという形だと経費が出せなかった)[11]。
また、出演モデルに年齢を詐称をさせている作品もあった[注 1](16歳女子高生とうたっていながら実際は18歳以上など)。
DVD撮影・発売における逮捕
[編集]2007年10月16日、ジュニアアイドルの写真集・DVD業界大手の心交社のチーフプロデューサー、ビデオ制作会社の監督ら4人が、当時17歳の女子高校生が出演したDVDが児童ポルノ禁止法違反に当たるとの疑いで警視庁少年育成課に逮捕された。このケースでは撮影角度やポーズなどから「過激な水着姿もわいせつな映像にあたる」と判断され、逮捕に至った[12]。東京地検は「他作品に比べ猥褻とはいえない」として不起訴[13]となったが、ヌードのない作品に対しての同法の適用が検討された例を作った[14]。
17歳の高校生のモデルを過激な水着姿で撮影したとして、仲村みうが以前所属していた事務所「アイアップ」の元社長ら4人が児童福祉法違反の疑いで逮捕されたことが2007年12月3日に分かった。それに関しては仲村本人が、『ジュニアアイドルの過激な露出の流れを作ったのは、みうなのかな…って思っています。』とコメントをしている[15]。
ジュニアアイドルが所属する事務所のひとつピンキーネットは、当時16歳の所属モデルをわいせつな動画に出演させたとして、代表者らが2009年2月16日、児童ポルノ禁止法違反の疑いで警視庁少年育成課などに逮捕された[16]。
2009年7月19日には、16歳の女子高校生が「過激な水着姿」で出演する「わいせつな内容」のDVDを製造したとして、児童ポルノ禁止法違反(提供目的の製造)の疑いで、東京都港区のビデオソフト販売会社「レイフル」の社長やビデオ監督ら計4人が神奈川県警少年捜査課に逮捕された。
いずれも乳首や局部を映さず性行為を含まないイメージビデオであるが、法律を適用し摘発に踏み切っており、表現の多様化や未成年者の保護についての議論のきっかけとなった。
上記のような背景を受けて、2010年1月19日、「ジュニアアイドル」と称して水着姿の少女の写真をDVDなどで販売する行為について、東京都が保護者に指導できるよう条例化を検討し始めたことが報じられた[17]。
主な「ジュニアアイドル」
[編集]主なジュニアアイドルについてはジュニアアイドル一覧および、子役の項参照。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 現代用語の基礎知識 2007, p. 1527.
- ^ ““聖地”も閉店 ジュニアアイドルDVDビジネスはあと半年の命か”. 東京スポーツ (2015年2月7日). 2015年2月7日閲覧。
- ^ 「子ども消費 (8) 8歳、ビキニ姿で撮影会」『読売新聞』2008年2月22日、15面。
- ^ “子どもの性の商品化を止めたい! | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス”. 情報・知識&オピニオン imidas. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “「水着でも児童ポルノと認定 容疑の制作者ら逮捕”. 朝日新聞 (2007年10月16日). 2007年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月11日閲覧。
- ^ “布で隠せばOKなのか? 少女を多数出演させ、やりたい放題の「着エロ」作品に児童ポルノ批判”. 産経新聞. (2016年9月19日) 2020年12月7日閲覧。
- ^ チャイドル年表’94—’97、『日経エンタテインメント!』1997年9月号より。(インターネットアーカイブのキャッシュ)
- ^ 香月 2009, p. 148.
- ^ 読売新聞社会部 『親は知らない―ネットの闇に吸い込まれる子どもたち』 中央公論新社、2010年、169頁。ISBN 978-4120041709。
- ^ 香月 2009, p. 161-163.
- ^ “(3ページ目)加護亜依は勝新太郎、広末涼子は無頼派、上戸彩は特別賞の特別賞…筋金入りのアイドル評論家が明かす「アイドルになるためのルール」とは | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け”. 集英社オンライン (2023年11月29日). 2024年6月22日閲覧。
- ^ “「少女過激水着はポルノ」出版社社員逮捕”. 日刊スポーツ(2007年10月17日、2007-10-19時点のアーカイブ). 2007年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月20日閲覧。
- ^ 香月 2009, p. 137.
- ^ 「過激水着の「小さすぎた面積」」『週刊プレイボーイ』第42巻第46号、集英社、2007年、200頁、ASIN B009LCN8FC。
- ^ 日刊サイゾー (2007年12月5日). “仲村みうの所属事務所社長が逮捕!! 今明かされる"みうみう"の本音”. 2009年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月15日閲覧。
- ^ “水着姿を児童ポルノと判断 DVD制作の社長ら逮捕”. 産経新聞(2009年2月17日、2009-02-20時点のアーカイブ). 2009年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月20日閲覧。
- ^ “少女水着画像:「ジュニアアイドル」都が保護者指導を検討”. 毎日新聞. 2010年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月20日閲覧。
参考文献
[編集]- 『現代用語の基礎知識2007』自由国民社、2007年1月1日。ISBN 4-426-10125-5。
- 香月真理子『欲望のゆくえ 子どもを性の対象とする人たち』朝日新聞出版、2009年11月30日。ISBN 978-4-02-250501-9。