ジャック・アルデル
ジャック・アルデル(Jacques Hardel, 1643年頃 - 1678年3月)はフランス王国のクラヴサン奏者でバロック音楽の作曲家である。
略歴
[編集]祖父ジル(1611年頃活動)と父ギヨーム(1676年歿)は楽器職人で、父親は弦楽器の製作者だった。母親はマルグリット(旧姓ユレル Marguerite Hurel)という名だった。
ジャック・アルデルの生涯についてはほとんど何も知られていない。ジャック・シャンピオン・ド・シャンボニエールの門弟で、一時期国王のため毎週リュート奏者のポリオンと御前演奏を行うなど、フランス宮廷では極めて評価が高かった。アルデルの作品は、ジャン・ル・ガロワによると、「長い間王宮の、なかんずく国王の愉しみ」であり(1680年、レニョー・ド・ソリエ嬢宛ての私信)、「アルデルはシャンボニエールの様式のとりわけ完璧な模倣者だった」。ルイ14世は(アルデルの音楽を)聞くことに「独特な喜びを覚えた」。シャンボニエールの最も優秀な弟子と呼ばれて、ルイ14世の弟オルレアン公フィリップ1世の楽師となり、公妃アンリエット・ダングルテールの公式演奏家と公女のクラヴサン教師を務めた。
ジャック・アルデルは35歳ぐらいで他界した。結婚はしておらず、遺産は1642年生まれの姉妹フランソワーズに相続された。その内訳は、大型のクラヴサン1台とスピネット1台に多数の弦楽器(ヴィオール、リュート)、楽器ケースであった。
作品
[編集]アルデルは、ルイ・クープランやジャン=アンリ・ダングルベール、ニコラ・ルベーグとともに、シャンボニエールに端を発するクラヴサン楽派の第1世代の一人である。アルデルにはフルリーという名の弟子しかいなかった[1]。
アルデルの作品は出版されなかった。現存する作品は、『ボーアン写本』(1690年)や『ド・ラ・ピエール嬢の写本』(フランス国立図書館所蔵)といった手稿譜に分散されている。アルデル作品は8曲しか現存していない。リュートのためのクーラント1曲(現存しないクラヴサン曲が原曲だった可能性あり)、クラヴサンのためのガヴォット1曲、そして6楽章の《クラヴサン組曲ニ短調》である。クラヴサン曲はすべてこの上なく良質の音楽であり、恩師シャンボニエールの作曲技法を完全に掴み取っていることが示されている。とりわけシャンボニエールの旋律線についての鋭い感覚を、進化したバス声部の書法と組み合わせることにより、和声を堅固にし、より進歩的な響きを目指している。⦅組曲⦆はアルマンドと3曲のクーラント、サラバンド、ジーグとから構成されており、最初期の通作された古典的なフランス組曲の一例となっている。
脚注
[編集]- ^ Mercure galant, Paris, Claude Bageart, (lire en ligne), p. 59
参考文献
[編集]- Fuller, David & Gustafson, Bruce (2001). "Jacques Hardel". In Root, Deane L. (ed.). The New Grove Dictionary of Music and Musicians (英語). Oxford University Press.
- collectif (dir. Marcelle Benoît), Dictionnaire de la musique en France aux XVIIe et XVIII siècles, Paris, Fayard année = 1992, , 811 p. (ISBN 978-2-213-02824-8), p. 336