シュノイキスモス
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シュノイキスモス[1](シノイキスモスとも[2]、古希: συνοικισμóς)とは、歴史学の用語で、古代ギリシア特有の国家形態である「ポリス」が、村落の合併により生まれた過程を指す言葉。日本語では集住(しゅうじゅう)と訳される[2]。
語源は、古代ギリシア語で「ともに」を意味する前置詞「シュン」と、「家」を意味する名詞「オイコス」からなる複合語である。
この言葉はトゥキュディデス『戦史』やプルタルコス『英雄伝』に見られる[3][4]。両書によれば、アテナイ初期の王テセウスが、アテナイ一帯(アッティカ地方)の村落を合併させて(すなわち集住させて)、アテナイのポリスを生み出した[5]。ただし両書のあいだでニュアンスに違いがあり、プルタルコスの場合は物理的に移住させたのに対し、トゥキュディデスの場合は評議所や役所を合併させた(国制統合、シュンポリテイア)とされる[3]。このテセウスの事績は後世「シュノイキア祭」として祝われた[5][6]。現代の学界では、実際はテセウスの事績でなく、前8世紀ごろまでに徐々に起こったと推定される[3][5][7]。
アテナイやスパルタでは前8世紀ごろ(暗黒時代の終わり、アルカイック期の始まり)までに起こったのに対し、エリスやロクリス、ロドス、マンティネイアでは前5世紀から前4世紀(アルカイック期から古典期)に起こった[8]。
対義語は「ディオイキスモス」(分住)で、マンティネイアが戦争に敗れ解体されるときに起こった[3][8]。
20世紀末から21世紀の学界では、従来の「アテナイ中心史観」的なポリス像の再検討が進んでいる[9]。そのなかで、集住を経ていないポリスもあったこと、集住をせずに村落結合体(エトノス)として栄えた地域もあったこと、などが指摘されている[10]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 周藤芳幸; 村田奈々子『ギリシアを知る事典』東京堂出版、2000年。ISBN 9784490105230。
- 新村祐一郎「シュノイキスモスについて―スパルタとアテナイの場合―」『古代史講座 第6』学生社、1962年。doi:10.11501/2973557 。
- 新村祐一郎「シュノイキスモスの意味について」『歴史教育』第13-4号、歴史教育研究会、1965年。 NAID 40003821595。
- 橋場弦「ギリシアとヘレニズム――ポリスと周辺世界のダイナミズム」『岩波講座世界歴史 第2巻 古代西アジアとギリシア ~前1世紀』岩波書店、2023年。ISBN 9784000114127。