シャンパンコール
シャンパンコールは1999年に考案された、ホストクラブでの定番のパフォーマンスの一つ[1]。シャンパンの注文が入ったテーブルに店の従業員が集まり、その場を盛り上げるために行う[2]。ドン・ペリニヨンなど、高額なシャンパンを購入した客への礼を示すためにコールが行われる[1]。シャンパンは最低価格が3万円程度で、ボトルキープもできずにその場で消費されることから、短時間で売り上げを稼ぐことに適している[3]。
バブル時代を思わせる派手なパフォーマンスで、これを受けることがホストクラブに通う女性にとって一つのステータスとなっている[1]。考案した人物については2つ説が存在し、ロマンスの香咲真也という説と、トップダンディーの頼朝という説に分かれる[1]。本項では、ピラミッド状に積んだシャンパングラスの上からシャンパンを注いですべてのシャンパングラスを満たす、シャンパンタワーについても述べる[4]。社会学者の武岡暢はこの2つについて、風俗産業の閉鎖性を示すものと述べている[5]。
パフォーマンス
[編集]シャンパンコールでは、注文したシャンパンを複数のシャンパングラスに注いだ後、10秒程度の定型的な掛け声を一斉に行ってシャンパンを一気飲みする[6]。ライターの宇都宮直子は、コールの内容を一気飲みのような掛け声と述べている[7]。店舗によっては、金額の高い銘柄のシャンパンを注文するとコールの時間が延ばされたり[7]、注文した客にもマイクが手渡され、コメントが求められたりもする[8]。また、東京都歌舞伎町で知られた「ビンダ」と呼ばれるパフォーマンスが存在する[9]。これはTHE BLUE HEARTSの代表作「リンダリンダ」のメロディに合わせて、指名された従業員たちが瓶の回し飲みを行うというもので、シャンパンの消費を早める[10]。
シャンパンタワー
[編集]ホストクラブ以外では結婚式やイベントごとで見られるシャンパンタワーは、歌舞伎町では非常に高額な一方、頻繁に見られる[11]。考案したのはホストの流星と言われている[12]。シャンパンタワーの設営に用いられる道具はトラックにて運搬される[13]。シャンパンタワーの設置には土台、照明、天井、壁などの装飾も担当する[14]。タワーの設立はすべてシャンパン・グラスが用いられ、接着剤は用いない[15]。肉体労働かつ神経を消耗する仕事となっている[16]。シャンパンタワーは職人によって作られるもので、職人には女性が多い[17]。注文の頻度はキャバクラよりも、昇格祭などのイベントがあるホストクラブのほうが多い[18]。繁忙期は下記のイベントがある7月から9月となっている[18]。豪華なものはアートとも呼ばれ、テレビ番組に出演するような職人はアーティストにもなぞらえられる[19]。
ホストクラブに通う女性たちにとって、担当しているホストから依頼されるシャンパンタワーは特別なものとなっている[20]。これはシャンパンタワーがホストクラブにおける花形である他、同額以上となる飾りボトルにはなく、姫と呼ばれる女性客全員がホストに依頼されるものでないことにYouTuberとして「ぶーちゃんねる」で活動するあおいは触れている[21]。また、ホストにとってはシャンパンタワーを立てることが自分の位置や存在感を周囲にアピールするものでもあると述べている[22]。
2023年(令和5年)、ホストクラブの売掛金をめぐり女性客が多額の借金を抱えることが問題視されるようになり[23]、同年12月、警視庁は歌舞伎町のホストクラブ176店に対し立ち入り調査を行った。この際、132店でシャンパンタワーの料金をメニュー表に記載しないなどの料金表示義務違反が確認されたことから、警視庁は口頭や文書で是正を求め、行政処分を検討するとした[24]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d 石井光太『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』(初版)KADOKAWA、2020年9月25日、151頁。ASIN B08HPL5K2Z。ISBN 978-4-04-108023-8。 NCID BC02758180。全国書誌番号:23449164。
- ^ 宇都宮 2022, p. 47.
- ^ 宇都宮 2022, pp. 47–48.
- ^ 武岡 2017, p. 193.
- ^ 武岡 2017, p. 196.
- ^ 武岡 2017, p. 192.
- ^ a b 宇都宮 2022, p. 48.
- ^ 南麻理江「31歳、ホストクラブにデビューしたら、思わぬ悲しみに出会ってしまった。」『ハフィントンポスト』、BuzzFeed、2019年4月24日。オリジナルの2022年3月26日時点におけるアーカイブ 。2022年3月26日閲覧。
- ^ 宇都宮 2022, p. 49.
- ^ 宇都宮 2022, pp. 48–49.
- ^ 宇都宮 2022, p. 187.
- ^ 園田菜々 著、鈴木健介 編「“痛いおじさん”を脱出しよう。43歳現役カリスマホストに聞く『女性に心を開いてもらうためのコミュニケーション術』」『リクナビNEXTジャーナル』、リクルート、2017年10月27日。オリジナルの2021年10月27日時点におけるアーカイブ 。2021年10月27日閲覧。
- ^ 宇都宮 2022, pp. 189–190.
- ^ 宇都宮 2022, p. 193.
- ^ 宇都宮 2022, p. 194.
- ^ 宇都宮 2022, pp. 193–194.
- ^ 宇都宮 2022, pp. 190–191.
- ^ a b 宇都宮 2022, p. 196.
- ^ 宇都宮 2022, p. 192.
- ^ 宇都宮 2022, pp. 187–188.
- ^ 宇都宮 2022, p. 135、188.
- ^ 宇都宮 2022, p. 189.
- ^ “女性客が入れあげたホストを路上で刺して殺人未遂”. 集英社オンライン (2023年10月6日). 2023年12月19日閲覧。
- ^ “歌舞伎町のホストクラブなどの7割が風営法違反…警視庁が202店立ち入り調査”. 読売新聞ONLINE (2023年12月19日). 2023年12月19日閲覧。
参考文献
[編集]- 宇都宮直子『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』 428巻(初版)〈小学館新書〉、2022年8月6日。ASIN 409825428X。ISBN 978-4-09-825428-6。 NCID BC1613759X。全国書誌番号:23726617。
- 武岡暢『生き延びる都市 新宿歌舞伎町の社会学』(初版)新曜社、2017年2月28日。ASIN 478851513X。ISBN 978-4-7885-1513-0。 NCID BB23236426。全国書誌番号:22864194。