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シャルル・アグノエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シャルル・アグノエル
人物情報
全名 モイーズ=シャルル・アグノエル
生誕 (1896-10-29) 1896年10月29日
フランスの旗 フランス共和国
カルヴァドス県カーン
死没 (1976-12-24) 1976年12月24日(80歳没)
フランスの旗 フランス
セーヌ=サン=ドニ県サン=トゥアン
出身校 高等研究実習院
学問
研究分野 言語学
日本学
研究機関 日仏会館
国立東洋言語学校
国立高等研究学院
パリ大学日本高等研究所wikidata(初代所長)
指導教員 アントワーヌ・メイエ(言語学)
マルセル・グラネ
アンリ・マスペロ
ポール・ペリオ(以上、東洋学)
主な指導学生 ベルナール・フランクフランス語版
学位 文学博士(1947年)
主要な作品 『日本文化の起源』
主な受賞歴 勲三等旭日中綬章受章(1957年)
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モイーズ=シャルル・アグノエルフランス語: Moïse Charles Haguenauer[1]1896年10月29日[2] - 1976年12月24日[3])は、フランス言語学者日本学者セルゲイ・エリセーエフとならんで、第一次世界大戦後のフランスにおける日本研究の中心的な存在だった[4]。主著に『日本文化の起源』(1956)がある。

略歴

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アグノエルはカーンに生まれ[3]高等研究実習院マルセル・グラネアンリ・マスペロポール・ペリオといった世界的な東洋学者に学んだ。また言語学はアントワーヌ・メイエに学んだ[5]

1924年6月に渡日した。雑誌『日本と極東』(Japon et Extrême-Orient) 上に森鷗外志賀直哉の小説の翻訳を発表した。アグノエルは、立派だが時代遅れのラフカディオ・ハーンの書物や、日本をゲイシャの国とするなどのジャポニスムを脱した日本研究を行うべきであると主張した[6]

アグノエルは1932年まで日仏会館の初代研究員をつとめた[7][8]。この間、日本本土だけでなく、沖縄台湾朝鮮を研究し、さらに満州中国にも渡った。

1932年にフランスに戻り、国立東洋語学校の教授に就任した。さらに高等研究実習院第5部門(宗教学)で、渡米したエリセーエフの後任として日本の宗教史、のちに極東(日本と朝鮮)の宗教について教えた。

第二次世界大戦中にはパリを離れたが、1945年にパリに戻り、1947年に日本文化の起源に関する論文によって文学博士の学位を得た[9]。1953年には国立東洋語学校からソルボンヌ大学の教授に移り、日本の言語・文化を教えた。1967年に高等研究実習院を退官した。

1956年に大著『日本文化の起源』(Origines de la civilisation japonaise : introduction à l'étude de la préhistoire du Japon)を出版。日本語アルタイ諸語との比較もおこなった。

アグノエルはパリ大学日本高等研究所(IHEJ)の創立に尽力し[10]、1959年にその初代所長に就任した(研究所は1973年以降コレージュ・ド・フランスに所属)。

アグノエルは主に上代から平安時代までの日本文化を研究した。『源氏物語』桐壺帖の翻訳があるが、意図的に極端な逐語訳になっている[11]

1976年12月24日、心臓病によりパリ郊外のサン=トゥアンの病院で死去。80歳。葬儀は同月28日、サン=トゥアンの墓地で行われた[12]

没後

没後直後の1976年から1977年にかけて『シャルル・アグノエル選集』[13]全3巻が出版された。第1巻が言語学、第2巻が宗教・歴史・文学、第3巻が琉球・台湾関係にあてられている。

1990年代になって、アグノエルが1930年に沖縄を調査したときのノートが発見された[14]

受章

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『日本文化の起源』(Origines de la civilisation japonaise : introduction à l'étude de la préhistoire du Japon)については、賛否両論があり、言語学者の服部四郎は1957年に否定的な書評をおこなった[15]エドウィン・ライシャワーは書評で高く評価した[16]。一方、ロイ・アンドリュー・ミラーは1981年にライシャワーの高い評価の書評を含めて批判した[17]

著作

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カッコ内の年号はAmazonで確認できる最も古い出版年。したがって初版の出版年とは限らない。(????)は出版年がはっきりしないもの。

日本に関する著作
  • (1929) L'Adresse du dignitaire de la province d'Izumo.
  • Okinawa 1930 : Notes ethnographiques de Charles Haguenauer, éditées par Patrick Beillevaire (édition du Collège de France)ISBN 9782913217249
  • (1931) Bibliographie des principales publications éditées dans l'Empire japonais. Avec Motoi Ijiro.
  • (1937) La Collection de monnaies et de médailles japonaises de l'Institut d'études japonaises de l'Université de Paris.
  • (1948) Cent-cinquantenaire de l'École des langues orientales. Le Japonais à l'École nationale des langues orientales vivantes.
  • (1951) Le genji monogatari : introduction et traduction du livre 1.
  • (1951) Morphologie du japonais moderne : Volume 1. Généralités, mots invariables.
  • (1956) Origines de la civilisation japonaise : Introduction à l'étude de la Préhistoire du Japon. (Paris, Imprimerie Nationale -Klincksieck)
  • (1976) Nouvelles recherches comparées sur le japonais et les langues altaïques (Bibliothèque de l'Institut des hautes études japonaises)
  • (1976-1977) I. Japon : études de linguistique ; II. Japon : Études de religion, d'histoire et de littérature. (Leyde, Brill)
  • (1977) III. Les Ryukyu et Formose : études historiques et ethnographiques. (Leyde, Brill)
  • (????) Mélanges critiques.
  • (????) Notions d'archéologie japonaise 1re partie (seule parue). Le Néolithique.
台湾に関する著作
  • (1929) Les Tayal de Formose
  • (1977) Les Ryukyu et Formose : études historiques et ethnographiques. (Leyde, Brill)
韓国・朝鮮に関する著作
  • (1929) Sorciers et sorcières de Corée
  • (1980) Études coréennes (Mémoires du Centre d'études coréennes)
  • (????) Note sur l'existence d'un culte du coq à Silla

脚注

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  1. ^ Marquet (2014) p.51, 邦訳 p.87
  2. ^ フランス語版を参照。
  3. ^ a b Rietsch (1977) p.543
  4. ^ 河合(1994) p.103
  5. ^ Villard(1988) p.286
  6. ^ Marquet (2014) p.50, 邦訳 p.87
  7. ^ 森川(1983) p.42
  8. ^ フランス政府から研究員として派遣された人々の一覧表, 日仏会館, (2011-08-03), https://www.mfj.gr.jp/web/historique/list-chercheurs-ja.html 
  9. ^ 森川(1983) p.44
  10. ^ Japanese Studies, Collège de France, http://www.college-de-france.fr/site/en-japanese-studies/index.htm 
  11. ^ Roy Andrew Miller (1986). Nihongo: In Defence of Japanese. London: The Athlone Press. p. 112 
  12. ^ 訃報欄 シャルル・アグノエル氏(パリ大学教授、フランスにおける日本研究の第一人者)『朝日新聞』1976年(昭和51年)12月29日、13版、15面
  13. ^ Charles Haguenauer (1976-1977). Études choisies de Charles Haguenauer. Leiden: E. J. Brill. ISBN 9004047999 
  14. ^ 森田孟進, フランスにおける琉球関係資料の調査, 琉球大学附属図書館, http://manwe.lib.u-ryukyu.ac.jp/library/biblio/bib33-1/bib33-1-1.html 
  15. ^ 服部(1999) pp.263-272(初出は1957年)
  16. ^ Edwin Reischauer (1958). “Reviews: Origines de la civilisation japonaise by Charles Haguenauer”. Harvard Journal of Asiatic Studies (21): 202-207. JSTOR 2718632. 
  17. ^ ミラー (1981) pp.18-20

参考文献

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