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シェイク・ユア・マネーメイカー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「シェイク・ユア・マネーメイカー」
エルモア・ジェームスシングル
A面 "Look on Yonder Wall"
リリース
規格 7インチシングル
録音
ジャンル ブルース
時間
レーベル Fire (Cat. no. 504)
作詞・作曲 エルモア・ジェームス
プロデュース ボビー・ロビンソン (Bobby Robinson)
エルモア・ジェームス シングル 年表
"Done Somebody Wrong"/ "Fine Little Mama"
(1960年)
"Shake Your Moneymaker"
(1961年)
"Stranger Blues"/ "Anna Lee"
(1962年)
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シェイク・ユア・マネーメイカー (Shake Your Moneymaker)」ないし「シェイク・ユア・マネー・メイカー (Shake Your Money Maker)」は、エルモア・ジェームス1961年に吹き込み、ブルーススタンダード曲となった楽曲[2]。先行した様々な曲を踏まえて作られたこの曲は、ブルースや多分野のアーティストたちによって様々に解釈され、録音されてきた。「シェイク・ユア・マネーメイカー」は、ロックの殿堂が選んだ「ロックンロールを形成した500曲 (500 Songs that Shaped Rock and Roll)」にも選ばれている[3]

先行した楽曲[編集]

1958年、シカゴのブルース歌手でハーモニカ奏者のシェイキー・ジェイク・ハリス (Shakey Jake Harris) が、マジック・サムのギター、ウィリー・ディクソンのベースを含むバンドとともに、「ロール・ユア・マネーメイカー (Roll Your Moneymaker)」という曲を吹き込んだ (Artistic 1502)。この曲は、12小節形式のブルースで、ブレイクが数カ所入り、「ロール・ユア・マネーメイカー」というコーラス(繰り返し歌われる部分)が入っていた。エルモア・ジェームスの伝記のひとつによると、「シカゴのブルース界に伝えられた話では、ドラマーで歌も歌ったジェイムズ・バニスター (James Bannister)がこの「ロール・ユア・マネーメイカー」という曲の作者だといわれているが、彼自身はこの曲を吹き込むことはなかった(彼は、ジェームスとレコーディングもしているJ・T・ブラウン (J. T. Brown))や同時期にシカゴで活躍したマジック・サムと共演経験があった)[4]。また、ジェームス盤の「シェイク・ユア・マネーメイカー」のリズム・ギターの演奏は、ミシシッピ・ジョン・ハート1928年に吹き込んだ「Got the Blues Can't Be Satisfied」 (OKeh 8724) からヒントを得たものだとする指摘もある[4]

一部には、「シェイク・ユア・マネーメイカー」は、チャーリー・パットン1929年に吹き込んだ「Shake It and Break It」(Paramount 12869) や、ブッカ・ホワイト1937年に吹き込んだ「シェイク・エム・オン・ダウン(Vocalion 03711) のバリエーションだとする見方もある[2]。いずれにせよ、この曲は長くエルモア・ジェームスの「オリジナル」と見なされてきている[5]

エルモア・ジェームスの録音[編集]

「シェイク・ユア・マネーメイカー」は、テンポが早い、12小節のブルース形式の曲で、スライドギターが特徴となっている。ジェームスはこの曲を、1961年の夏に、ルイジアナ州ニューオーリンズコズィモ・マタッサのスタジオ(コズィモ・レコーディング・スタジオ)で、「キャンドルライト (candlelight)」と称される労働組合員以外のミュージシャンを使ったセッションによって、吹き込みを行なった[4]。ドラマーでブルースハープ奏者のサム・マイヤーズ (Sam Myers) によれば、ジェームスは労働組合と問題を引き起こしており、録音セッションは夜になってから、光を落として、近所の住民の注意を引かないように行なわれたという[4]。この録音のためにジェームスが集めたメンバーは、ジョニー・"ビッグ・ムース"・ウォーカー (Johnny "Big Moose" Walker)(ピアノ)、サミー・リー・ブリー (Sammy Lee Bully) (ベース)、キング・モーズ・テイラー (King Mose Taylor)(ドラムス)といった面々だった。吹き込みは、1回目は失敗したものの、2回目のテイクがシングル盤のマスターとして使用された。このセッションでは、計6曲の録音が行なわれ[1]、この曲と「Look on Yonder Wall」がシングル盤としてリリースされた[6]。(残りについては、いずれも後年に編集盤LP、CDなどでリリースとなっている[1]。)

この曲はジェームスにとって最も広く知られた曲のひとつとなり、ダンス曲としても人気が出た。活動家で作家のジェームズ・メレディスは、エルモア・ジェームスがミシシッピ州の「Mr. P's という粗末なジューク・ジョイントjuke joint:安酒場)で」この曲を演奏し、「群衆を熱狂させる」様子を実見したことを書き記している[7]。また、「30分かそれ以上、休むことなくバンドがこの曲を演奏することもよくあり、演奏が終わると集まっていた群衆が、もっとやってくれと懇願することもしばしばだった」という[4]

他のバージョン[編集]

ポール・バターフィールド(1979年)

ポール・バターフィールドは、1965年のアルバム『The Paul Butterfield Blues Band』にこの曲を収録している。この盤の演奏は、ドアーズのギタリストだったロビー・クリーガーに、彼らの楽曲「ブレイク・オン・スルー」のリフのアイデアを与えた[8]

1968年には、フリートウッド・マックのデビュー・アルバム『フリートウッド・マック』でこの曲が取り上げられている。

ジョージ・サラグッドは、1988年のアルバム『Born to Be Bad』に、この曲を収録した。

1999年には、ブラック・クロウズが、ジミー・ペイジと共演したライブ演奏を録音し、2000年に『Live at the Greek』としてリリースした。なお、彼らの1990年リリースのデビュー・アルバムのタイトルは『シェイク・ユア・マネー・メイカー (Shake Your Money Maker)』であったが、そちらではこの曲は取り上げていない。

2010年6月、エリック・クラプトンジェフ・ベックは、クラプトンが主催したクロスローズ・ギター・フェスティバル (Crossroads Guitar Festival) で、この曲を共演した。

この曲はまた、2010年フォガットのアルバム『Last Train Home』にも収録されている。さらに、ロッド・スチュワート2013年のアルバム『タイム〜時の旅人〜』にも、ボーナス・トラックとして収録されている。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b c The Blues Discography 1943-1970 The Classic Years, Les Fancourt & Bob McGrath (Eyeball Productions)
  2. ^ a b Herzhaft, Gerard (1992). "Shake Your Moneymaker". Encyclopedia of the Blues. University of Arkansas Press. p. 470. ISBN 1-55728-252-8
  3. ^ 500 Songs That Shaped Rock and Roll”. Exhibit Highlights. Rock and Roll Hall of Fame (1995年). 1995年時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年3月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e Franz, Steve (2003). The Amazing Secret History of Elmore James. Walsworth Publishing. pp. 115–17. ISBN 0-9718038-1-1 
  5. ^ Morris, Chris; Haig, Diana (1992). Elmore James — King of the Slide Guitar (Media notes). Elmore James. Capricorn Records. p. 13. 9 42006–2。
  6. ^ Elmore James - Shake Your Moneymaker / Look On Yonder Wall | Releases | Discogs 2023年7月31日閲覧
  7. ^ Gioia, Ted (2008). Delta Blues. W. W. Norton. p. 314. ISBN 978-0-393-33750-1 
  8. ^ The Story of "Break on Through" by The Doors