ザルツブルク地方鉄道ET40形電車
ザルツブルク地方鉄道ET40形電車 ザルツブルク地方鉄道ET50形電車 | |
---|---|
ET50(2車体連接車時代) (2008年撮影) | |
基本情報 | |
運用者 | ザルツブルク地方鉄道 |
製造所 | シメリング・グラーツ・パウカー→シーメンス |
製造年 | 1983年 - 2002年 |
製造数 | 18両(ET41 - ET58) |
改造年 | 2012年 - 2013年(3車体連接車化) |
改造数 | 9両(ET50 - ET58) |
運用開始 | 1983年 |
投入先 | ザルツブルク - ランプレヒツハウゼン線、ビュアモース - オスターミーティンク線 |
主要諸元 | |
編成 |
ET40形 2車体連接車、両運転台 ET50形 3車体連接車、両運転台 |
軸配置 |
ET40形 Bo'2'Bo' ET50形 Bo'2'2'Bo' |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 |
直流1,000 V (架空電車線方式) |
最高速度 | 80 km/h |
車両定員 |
ET40形 180人(着席80人) ET50形 258人(着席104人) (乗客密度4人/m2時) |
車両重量 |
ET40形 46.8 t ET50形 62.7 t |
全長 |
ET40形 28,400 mm ET50形 38,800 mm |
車体長 |
ET40形 27,240 mm ET50形 37,640 mm |
全幅 | 2,674 mm |
全高 | 3,720 mm(集電装置含) |
床面高さ |
984 mm(高床部分) 350 mm(低床部分) |
車輪径 | 760 mm |
固定軸距 | 1,944 mm |
台車中心間距離 | 10,400 mm |
軸重 | 7.8 t |
主電動機出力 | 300 kw |
歯車比 | 5.625 |
出力 | 600 kw |
制御方式 | 電機子チョッパ制御方式 |
制動装置 | 回生ブレーキ、スプリングブレーキ、ソレノイドブレーキ、電磁吸着ブレーキ、圧縮空気ブレーキ(3車体連接車) |
備考 | 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。 |
ザルツブルク地方鉄道ET40形電車(ザルツブルクちほうてつどうET40がたでんしゃ)は、オーストリア・ザルツブルクの鉄道路線(ザルツブルクSバーン)で使用されている電車。近代化や輸送力増強を目的に1980年代から2000年代初頭まで導入が実施された連接車である[1][2][3]。
概要
[編集]ザルツブルク社(Salzburg AG)が「ザルツブルク地方鉄道(Salzburger Lokalbahn、SLB)」というブランド名で運営する、ザルツブルク北部へ向かう鉄道路線であるザルツブルク - ランプレヒツハウゼン線やビュアモース - オスターミーティンク線では、1970年代以降沿線の人口が増加し、輸送力の増強が求められるようになっていた。また、使用される車両についても当時の最新鋭車両は1960年代製と古く、ラッシュ時には1900年代の電化当初の車両が使用される状況になっていた。そこで、ザルツブルク市、ザルツブルク州、そしてオーストリア共和国議会は、これらの状態を改善するための近代化計画「OeSch 90M」に対する投資を採択した。そして、この計画の中心として、快適性や効率性の向上や路線の近代化を目的に導入が決定したのがET40形電車である[3][5][6]。
両運転台式の2車体連接車で、運転台側に出力300 kwの主電動機(直流電動機)を1基搭載した動力台車が、連節部に付随台車が設置されている。連結器はシャルフェンベルク式が使われており、総括制御により最大4両(営業運転時)まで繋いだ運用も可能である。制御装置には、電力消費量の削減や回生ブレーキの導入が可能となる電機子チョッパ制御方式が採用されている[1][3][7][8]。
車内には2+2人掛けのクロスシートが主に配置されている他、各車体に両側1箇所づつ存在する乗降扉付近には手荷物や車椅子、ベビーカーが設置可能な折り畳み座席を含むフリースペースが存在する[1][3][7][9]。
これらの設計に際しては、ドイツ・フランクフルトに導入されたデュワグ製のライトレール(シュタットバーン)用車両であるフランクフルト地下鉄U3形電車が基になっている[3][1][10]。
運用
[編集]1983年に最初の5両(ET41 - 45)が営業運転を開始し、続いて1988年に2次車となる5両(ET46 - 50)が導入された。それ以降も利用客の増加を受けた輸送力の増強や旧型電車の置き換えを目的に増備が進み、1992年に4両(ET51 - 54)、2001 - 2002年にも4両(ET55 - 58)が製造されており、そのうち最後に導入された4両はシメリング・グラーツ・パウカーを買収したシーメンスによって製造が行われた。また、これらの車両にはザルツブルクを始めとする沿線の地名や経由する州の名前、ザルツブルクの姉妹都市(ドレスデン)の名前が付けられた[1][2][3][11][12][13]。
その後、2012年から2013年にかけてET50 - 58の9両については中間に全長10,400 mm、床上高さ350 mmの低床車体を追加する工事が施され、3車体連接車に改められた[注釈 1]。一連の工事はチェコ・オストラヴァのイネコングループによって行われており、これらの車両は「ET50形」、もしくは「ET40NF形」と呼ばれている。また、これに合わせて既存の車両も含め乗降扉の交換や座席のカバーの変更などの更新工事が実施された[1][2][15][16]。
2024年時点でET40形およびET50形はザルツブルク - ランプレヒツハウゼン線やビュアモース - オスターミーティンク線で使用されているが、長年の使用により老朽化が進んでいる事から、同年以降「VDVトラムトレイン」計画に基づく新型車両(シティリンク)の導入による置き換えが予定されている[1][2][17]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h “ET41-ET49 Elektrische Triebwagen der Salzburger Lokalbahn”. Salzburger Lokalbahnen. 2016年12月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月4日閲覧。
- ^ a b c d e “ET50-ET58 Elektrischer Triebwagen der Salzburger Lokalbahn”. Salzburger Lokalbahnen. 2016年12月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g M.R.Taplin & G. Mackinger 1984, p. 16-17.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 25.
- ^ M.R.Taplin & G. Mackinger 1984, p. 23.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 9.
- ^ a b Gunter Mackinger et al. 2013, p. 16.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 19.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 17.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 11.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 13.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 14.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 15.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 22-23.
- ^ Gunter Mackinger et al. 2013, p. 24.
- ^ “SLB Modernises ET40s”. Railvolution (2012-4-31). 2024年8月4日閲覧。
- ^ “Salzburg investiert in hochmoderne Lokalbahn-Züge”. Salzburg24 (2022年1月17日). 2024年8月4日閲覧。
参考資料
[編集]- Gunter Mackinger; Crhistian Osterer; Mattis Schindler; Patricia Schnell (October 2013). 30 Jahre Gelenktriebwagen Die Baureihe ET40 - ET50 (Report). Salzburg AG. 2024年8月4日閲覧。
- M.R.Taplin; G. Mackinger (1984-1). “Salzburg's red electrics”. Modern Tramway (Light Rail Transit Association) 47 (553): 14-23. ISSN 0144-1655.