サキシマフヨウ
サキシマフヨウ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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一重咲きのサキシマフヨウ(2024年11月 沖縄県石垣市)
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Hibiscus makinoi Jôtani & H.Ohba | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
先島芙蓉 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
confederate rose、Okinawan Hibiscus |
サキシマフヨウ(先島芙蓉、Hibiscus makinoi )はアオイ科フヨウ属の半落葉低木または中木。
特徴
[編集]高さ2–6 mほど。上の掲載写真は八重咲きだが、下の一重咲きが一般的。葉は長さ・幅ともに7–11 cmほどで、長い葉柄があり、葉身は3–7裂するが切れ込みは浅く、五角形状が多い。葉先は鈍く葉縁の鋸歯も鈍い。葉裏の脈上や葉柄に星状毛が多いが腺毛は無く、葉を触っても粘り気は感じられない[1][2]。花は径8–10 cm、白~淡紅色。花弁は5枚(一重咲きの場合)でへら型または倒広卵形で先は円形となる。フヨウ属の他種と同様に多数の雄しべが筒状になり、中に花柱が通る。柱頭は5裂し先端は頭型。花は1日花で夜には萎む。文献によっては開花時の花色は白に近く、時間の経過とともに桃色を帯びる[3][4][5]とも、時間経過とともに花色が変わる[6]とも記されている。(※ 桃色→白とするブログ[7]もある)開花期は秋~冬(9–1月)。萼片は萼筒より長い。果実は球形~卵形の蒴果で径2–2.5 cmほど、冬に熟し、乾燥すると5つに裂開する。実の表面は星状毛と開出毛があり、中に多数の種子がある[8][9][4][5][2][10][6][11]。染色体数は2n=92(西表島産、与那国島産)[1][12]。
フヨウとの相違点は、本種はより大型となり常緑性が強い、葉形は切れ込みが浅く葉縁の鋸歯も鈍い、葉や茎などの植物体に腺毛が無い、開花期が遅い、花弁は短い、花は平面的に開く、副萼裂片の幅が広い等[1][13]。
生育環境
[編集]平野部、斜面下部、農耕地の周辺、伐採跡、路傍など、人里付近で見られる[14][2][10][15]。
利用
[編集]庭園、公園樹に用いられる[16]。晩秋に淡桃色の花を多数咲かせるため、野山でも伐採されず残されていることがある[17]。土壌は特に選ばず強健。花芽が当年枝につくので、新芽伸長後は剪定しないこと。カイガラムシやコナジラミ等が枝葉を食害することがある。繁殖は実生や挿し木による[3]。
分類
[編集]本種はかつて野生のフヨウと考えられてきたが、上述の形態の違いをもとに1984年に新種として記載された[1]。学名(種小名)の makinoi は牧野富太郎への献名[6][15]。図鑑によりフヨウが日本南部(南西諸島)に自生すると記されていることがある[18][19][8][17]が、これは本種をフヨウと混同したためとされる[1]。
分布
[編集]和名は先島諸島に由来し、主に九州西南部に位置する島のうち西海市崎戸町平島を北限[20][13][21]に、同じく西海市崎戸町蛎浦島[22]、五島列島中通島[13]および福江島[1][23]、男女群島、甑島列島、宇治群島、種子島[24]、屋久島[25]から琉球にかけて分布するとされてきた[15][9][2][10]。九州南端の佐多岬にもあり[26][27]、台湾にも分布することが報告されている[28]。なお台湾にはヤマフヨウ H. taiwanensis[29]も分布し、本種としばしば混同される[28]。
フヨウとの関係
[編集]サキシマフヨウを母体、フヨウを花粉親として交配すると稔性のある種間雑種が出来る[1]。種子島や屋久島では、葉形はサキシマフヨウに似るが腺毛をもつ中間的な個体がみられ、フヨウとの自然交配により生じた雑種と推定されている[1][9]。このため本種をフヨウの変種(学名:Hibiscus mutabilis var. spontanea)と扱う[3][4]説もあるとされる[16]。長崎県の蛎浦島でも雑種アイサキシマフヨウ[30]が知られる[31]。
近縁種
[編集]この他、本種に近縁とされるイオウトウフヨウH. pacificus[32]が小笠原諸島の火山列島(北硫黄島および南硫黄島)に特産する。こちらは葉の切れ込みがさらに浅く、扇型の花弁をもち、柱頭はサドル型、萼片と萼筒は等長で、相対的に萼筒が長めであるため花冠の基部が萼筒に締め付けられ、花冠が十分に展開しない等の点で本種と異なる[33][9][10]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h (常谷 & 大場 1984, p. 214–222)
- ^ a b c d (片野田 2019, p. 57)
- ^ a b c (海洋博記念公園管理財団 1997, p. 167)
- ^ a b c (新里 & 嵩原 2002, p. 40)
- ^ a b (平良ほか 2009, p. 147)
- ^ a b c (沖田原 2021, p. 286)
- ^ “サキシマフヨウ - 種子島の樹木・花木”. www.furusato-tanegashima.net. 2024年12月4日閲覧。
- ^ a b (天野 1982, p. 100)
- ^ a b c d (フルックスウェル & 大場 1997, pp. 68–70)
- ^ a b c d (米倉 2021, pp. 122–123)
- ^ (林 & 名嘉 2022, p. 283)
- ^ “Malvaceae Info: Chromosome Counts for Malvaceae”. www.malvaceae.info. 2024年12月4日閲覧。
- ^ a b c (中西, 中西 & 岩城 2006, p. 27–33)
- ^ (林野庁九州森林管理局 2010)
- ^ a b c “サキシマフヨウHibiscus makinoi”. web.archive.org (2010年2月21日). 2024年12月4日閲覧。
- ^ a b (大川 & 林 2016, p. 270)
- ^ a b (屋比久 2006, p. 180)
- ^ (初島 1975, p. 404)
- ^ (白井 1980, p. 82)
- ^ (中西 2001, p. 12)
- ^ (中西, 中西 & 松田 2007, pp. 85–90)
- ^ “サキシマフヨウ - 花の日記”. nannjyamonnjya.blog.fc2.com. 2024年12月4日閲覧。
- ^ “島の浜辺に上品に咲く~サキシマフヨウの花、見ごろ【五島市】”. 海と日本PROJECT in ながさき. 2024年12月4日閲覧。
- ^ “サキシマフヨウ - 種子島の樹木・花木”. www.furusato-tanegashima.net. 2024年12月4日閲覧。
- ^ 屋久島自然学校 (2021年10月28日). “屋久島の秋を代表する花【サキシマフヨウ】”. yakushimans. 2024年12月4日閲覧。
- ^ (木戸 2016, pp. 75–87)
- ^ (鈴木ほか 2022, p. 319)
- ^ a b (Liu, Chao & Tseng 2014, p. 171-178)
- ^ “ヤマフヨウ”. YList 植物和名-学名インデックス. ylist.info. 2024年12月4日閲覧。
- ^ “アイサキシマフヨウ”. YList 植物和名-学名インデックス. ylist.info. 2024年12月4日閲覧。
- ^ (中西 2015, p. 261)
- ^ “イオウトウフヨウ”. YList 植物和名-学名インデックス. ylist.info. 2024年12月4日閲覧。
- ^ (Jotani & Ohba 1986, pp. 97–103)
参考文献
[編集]- 初島住彦『琉球植物誌(追加・訂正版)』沖縄生物教育研究会、1975年。
- 白井祥平「フヨウ」『沖縄園芸植物大図鑑』 4巻《熱帯花木》、沖縄教育出版、那覇市、1980年。 ※ 学名Hibiscus mutabilisとしている
- 天野鉄夫「フヨウ」『琉球列島有用樹木誌』琉球列島有用樹木誌刊行会、1982年。 ※ 学名Hibiscus mutabilisとしている
- 常谷幸雄; 大場秀章「西南日本に自生するサキシマフヨウ(新称)について」『植物研究雑誌』第59巻、第7号、214–222頁、1984年 。 ※ サキシマフヨウの原記載論文
- Jotani, Yukio; Ohba, Hideaki (1986), “Hibiscus pacificus Nakai from the Volcano Group of Islands, Japan”, J. Jap. Bot. 61 (4): 97–103 ※ イオウトウフヨウの原記載論文
- ポール・フルックスウェル; 大場秀章 著「フヨウ、サキシマフヨウ」、岩槻邦男ら監修 編『朝日百科 植物の世界』 7巻、朝日新聞社、東京、1997年、68–70頁。ISBN 9784023800106。
- 海洋博記念公園管理財団「サキシマフヨウ」『沖縄の都市緑化植物図鑑』新星出版、那覇市、1997年。ISBN 9784902193732。 ※ 学名Hibiscus mutabilis var. spontaneaとしている
- 中西弘樹「平島の植物」『長崎県生物学会誌』第52号、12頁、2001年 。
- 新里孝和; 嵩原建二「サキシマフヨウ」『伊江島の植物図鑑』伊江村教育委員会、2002年。 ※ 学名Hibiscus mutabilis var. spontaneaとしている
- 屋比久壮実「フヨウ」『花ごよみ 亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画、2006年。ISBN 4990191730。 ※ 学名Hibiscus mutabilisとしている
- 中西弘樹; 中西こずえ; 岩城太郎「サキシマフヨウの花の形質と変異、特にフヨウとの比較において」『植物地理・分類研究』第54巻、第1号、27–33頁、2006年。
- 中西弘樹; 中西こずえ; 松田美樹「サキシマフヨウとフヨウの繁殖特性」『植物地理・分類研究』第55巻、第2号、85–90頁、2007年。
- 平良一男; 新里隆一・仲村康和・松田正則「サキシマフヨウ」『沖縄 花めぐり』沖縄都市環境研究会、2009年。
- 「サキシマフヨウ」『西表島の植物誌』、林野庁九州森林管理局、2010年 。
- Liu, Huei-Yi; Chao, Chien-Ti; Tseng, Yen-Hsueh (2014), “Hibiscus makinoi Y. Jotani & H. Ohba (Malvaceae), A New Record Plant in Taiwan”, 林業研究季刊 36 (3): 171-178
- 波田善夫. “サキシマフヨウ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 植物生態研究室. 2016年12月24日閲覧。
- 「アイサキシマフヨウ」『長崎県植物誌』、長崎新聞社、長崎市、261頁。
- 木戸伸栄「佐多岬の植物(田尻海岸~佐多岬)」『鹿児島国際大学福祉社会学部論集』第34巻、第3号、75–87頁、2016年 。
- 大川智史; 林将之「サキシマフヨウ」『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版、東京都新宿区、2016年。ISBN 9784829984024。
- 片野田逸郎「サキシマフヨウ」『琉球弧・植物図鑑 from AMAMI』南方新社、2019年。ISBN 9784861244056。
- 米倉浩司 著「サキシマフヨウ」、大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司 編『フィールド版改訂新版 日本の野生植物』 2巻、平凡社、2021年、122–123頁。ISBN 9784582535396。
- 沖田原耕作「サキシマフヨウ」『おきなわの園芸図鑑 園芸植物とその名前』新星出版、那覇市、2021年。ISBN 9784909366832。
- 林将之; 名嘉初美「サキシマフヨウ」『沖縄の身近な植物図鑑』ボーダーインク、2022年。ISBN 9784899824350。
- 鈴木英治; 丸野勝敏; 田金秀一郎; 寺田竜太; 久保紘史郎; 平城達哉; 大西亘「鹿児島県の維管束植物分布図集-全県版-」『鹿児島大学総合研究博物館研究報告』第17巻、鹿児島大学総合研究博物館、319頁、2022年。ISSN 2188-9074 。
外部リンク
[編集]- サキシマフヨウ 南九州薩摩半島南端、指宿周辺の自然と生活(ブログ)2015-15-25
- サキシマフヨウ 長居植物園植物図鑑 大阪市立長居植物園
- さきしまふよう 先島芙蓉 せいいちろうのへや
- サキシマフヨウ 植物図鑑 海洋博公園
- 11月13日(金) サキシマフヨウ 草木365日(くさき365日) はた衛門の植物写真日記
- サキシマフヨウ(先島芙蓉) フラワーパークかごしま
- サキシマフヨウ 四季の山野草
- サキシマフヨウ 種子島の花木・樹木 ふるさと種子島
- サキシマフヨウ満開 秋深まる奄美 南海日日新聞 2022-11-07
- サキシマフヨウ 林野庁 西表森林生態系保全センター
- サキシマフヨウ 花の日記(ブログ)2010-11-19(崎戸島のサキシマフヨウ と フヨウとの雑種アイサキシマフヨウ)
関連項目
[編集]- フヨウ(Hibiscus mutabilis)