サイバー犯罪対策室
サイバー犯罪対策室(サイバーはんざいたいさくしつ)は、かつて日本の各都道府県警察の生活安全部に設置されたサイバー犯罪対策組織。本記事ではサイバー犯罪対策課など再編後の組織についても記す。
概要
[編集]サイバー犯罪対策室はサイバー犯罪の取締りからサイバー犯罪予防の広報活動まで、サイバー犯罪対策に関わる多様な役割を務めた。不正アクセス、インターネット上の詐欺、名誉毀損、著作権法違反、その他の犯罪を捜査し、摘発していた[1]。
1998年6月、警察庁はサイバー犯罪対策強化として「ハイテク犯罪対策重点推進プログラム」を公表し、「サイバーポリス」のプロジェクトを設立した。サイバーポリスの一環として警察庁は1999年4月、情報通信局にナショナルセンターの技術対策課(後の情報技術解析課)および同課内に技術センターを設置[2]。同時期に都道府県警察本部は相次いでサイバー犯罪対策室を設置した[3]。設立初期の各本部のサイバー犯罪対策室は、数人から数十人の規模。サイバー空間の拡大に伴い脅威も増大し、2010年代以降、室から課に再編された。近年は「サイバー犯罪対策課」以外の名称で設置・再編したり、生活安全部から分離してサイバー事案担当の新設部門に設置したりする警察本部もある。
東京都の警視庁は2011年まで2000年に設置したハイテク犯罪対策総合センター(生活安全ハイテク犯罪対策室は1998年)がサイバー犯罪対策室に該当していた。警視庁のハイテク犯罪対策総合センターをサイバーポリスと呼ぶ場合があった。2011年にサイバー犯罪対策課に格上げされた[4]。
大阪府警察の警務部高度情報推進局サイバーセキュリティ対策課や神奈川県警察のサイバーセキュリティ対策本部のように、捜査支援などの組織が捜査組織と別の部に設置される場合もある[5]。
各都道府県のサイバー犯罪対策の窓口では電話や電子メールでの相談・情報提供を受け付けている。サイバー犯罪対策の窓口は110番通報ではないため、緊急時はサイバー犯罪対策の窓口ではなく、110番通報が必要となる。(東京都の場合の相談と情報提供も参照)
2022年4月1日、警察庁はサイバー犯罪対策強化のため「サイバー警察局」と「サイバー特別捜査隊」を発足させた[6]。
2023年4月に埼玉県警察はサイバー犯罪対策課をサイバー局に格上げし、啓発や被害の防止を担う「サイバー対策課」と事件の捜査を行う「サイバー捜査課」を設置した[7]。
サイバー犯罪捜査官
[編集]サイバー犯罪捜査官(ハイテク犯罪捜査官)は、日本全国の警察のサイバー犯罪対策部門に所属し、コンピュータやコンピュータネットワークの専門的な技能を有する警察官である。民間企業出身者もいる。[8]
各警察本部のサイバー犯罪対策室は、サイバー犯罪捜査官らで構成される。サイバー犯罪捜査官の呼び名は各警察本部によりサイバー犯罪対策官やサイバー犯罪特別捜査官などの場合がある[9]。
警視庁では特別捜査官のサイバー犯罪捜査官らが、サイバー犯罪対策課をはじめとするサイバー犯罪対策部門に配属されている。
名称別サイバー犯罪対策組織
[編集]サイバー犯罪対策課
[編集]- 北海道警察本部生活安全部
- 青森県警察本部生活安全部
- 岩手県警察本部生活安全部
- 宮城県警察本部生活安全部
- 秋田県警察本部生活安全部
- 山形県警察本部生活安全部
- 福島県警察本部生活安全部
- 茨城県警察本部生活安全部
- 栃木県警察本部生活安全部
- 警視庁生活安全部
- 千葉県警察本部生活安全部
- 新潟県警察本部生活安全部
- 山梨県警察本部生活安全部
- 静岡県警察本部生活安全部
- 富山県警察本部生活安全部
- 石川県警察本部生活安全部
- 福井県警察本部生活安全部
- 岐阜県警察本部生活安全部
- 愛知県警察本部生活安全部
- 三重県警察本部生活安全部
- 滋賀県警察本部生活安全部
- 奈良県警察本部生活安全部
- 和歌山県警察本部生活安全部
- 鳥取県警察本部生活安全部
- 島根県警察本部生活安全部
- 岡山県警察本部生活安全部
- 広島県警察本部生活安全部
- 山口県警察本部生活安全部
- 香川県警察本部生活安全部
- 愛媛県警察本部生活安全部
- 高知県警察本部生活安全部
- 福岡県警察本部生活安全部
- 佐賀県警察本部生活安全部
- 長崎県警察本部生活安全部
- 熊本県警察本部生活安全部
- 大分県警察本部生活安全部
- 鹿児島県警察本部生活安全部
- 沖縄県警察本部生活安全部
サイバー犯罪捜査課
[編集]サイバー捜査課
[編集]- 長野県警察本部生活安全部
サイバー局
[編集]サイバー戦略局
[編集]- 宮崎県警察本部生活安全部
サイバー戦略推進課
[編集]サイバーセキュリティ・捜査高度化センター
[編集]サイバーセンター
[編集]サイバー対策本部
[編集]脚注
[編集]- ^ “サイバー犯罪対策室”. 日経パソコン用語事典2009. 日経BP ITpro. 2010年8月24日閲覧。
- ^ 平成11年警察白書 第3章 犯罪情勢と捜査活動等 第3節 ハイテク犯罪への取組み 2 ハイテク犯罪対策の推進
- ^ “【サイバーポリス】”. 日経パソコン用語事典2010. 日経BP PC Online. 2014年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月24日閲覧。
- ^ “「ハイテク犯罪対策室」設置 複雑化するサイバー犯罪に対する捜査が本格化 警視庁150年”. 産経デジタル. 2024年11月10日閲覧。
- ^ “大阪府警に「サイバー局」250人規模、対策の司令塔機能”. サンスポ. (2022年1月28日)
- ^ “「サイバー警察局」が発足、警察庁 高まる脅威に対応”. 日本経済新聞. (2022年4月1日) 2022年4月2日閲覧。
- ^ “サイバー犯罪の対応強化へ 「サイバー局」設置 埼玉県警”. NHK. (2023年4月3日) 2023年4月3日閲覧。
- ^ “【サイバー犯罪捜査官】”. 日経パソコン用語事典2010. 日経BP PC Online. 2014年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月26日閲覧。
- ^ “長崎県警のサイバー捜査チーム、全国大会で初V 捜査能力競う”. 朝日新聞デジタル. (2024年4月3日)
- ^ a b “埼玉県警察の組織”. 埼玉県警察. 2024年7月18日閲覧。
- ^ 京都府警察本部. “京都府警察の事務概要”. 2024年11月9日閲覧。
関連項目
[編集]- サイバーパトロール
- サイバーフォースセンター(警察庁サイバー警察局情報技術解析課サイバーテロ対策技術室)
外部リンク
[編集]- サイバー犯罪対策:県警の施策等 - ウェイバックマシン(2008年9月22日アーカイブ分) - 警察庁公式サイト
- サイバー重点施策について(通達) - 警察庁Webサイト