ゴレンシュタイン環
可換環論において、Gorenstein 局所環 (Gorenstein local ring) はネーター可換局所環 R であって、R-加群として有限の移入次元をもつものである。同値な条件がたくさんあり、そのうちのいくつかは以下にリストされるが、多くはある種の双対の条件を扱う。
Gorenstein 環は Grothendieck によって導入され、彼が名前を付けたが、その理由は Gorenstein (1952) によって研究された特異平面曲線の双対の性質との関係である(Gorenstein は Gorenstein 環の定義を理解していないと主張することを好んだ)。0次元のケースは Macaulay (1934) によって研究されていた。Serre (1961) と Bass (1963) は Gorenstein 環の概念を公表した。
0次元 Gorenstein 環の非可換環における類似はフロベニウス環と呼ばれる。
ネーター局所環については次の包含関係が成り立つ。
- 強鎖状環 ⊃ コーエン・マコーレー環 ⊃ ゴレンシュタイン環 ⊃ 完全交叉環 ⊃ 正則局所環
定義
[編集]Gorenstein 環 は可換環であって素イデアルにおける各局所化が Gorenstein 局所環であるようなものである。Gorenstein 環の概念はより一般的なコーエン・マコーレー環の特別な場合である。
古典的な定義は:
局所コーエン・マコーレー環 R は既約イデアルを生成する極大イデアルにおいて極大R-正則列が存在するときに Gorenstein と呼ばれる。[要出典]
クルル次元 n のネーター可換局所環 に対して、以下は同値である。
- は -加群として移入次元が有限である。
- は -加群として移入次元が である。
- に対して であり は と同型。
- ある に対して
- すべての に対して であり は と同型。
- は -次元 Gorenstein 環。
(可換とは限らない)環 R は左 R-加群としても右 R-加群としても R の入射次元が有限なときに Gorenstein と呼ばれる。R が局所環であれば、R を局所 Gorenstein 環という。
例
[編集]- 環 k[x,y,z]/(x2, y2, xz, yz, z2–xy) は完交環でない0次元 Gorenstein 環である。
- 環 k[x,y]/(x2, y2, xy) は Gorenstein 環でない0次元 Cohen–Macaulay 環である。
性質
[編集]ネーター可換局所環が Gorenstein であることとその完備化が Gorenstein であることは同値である[1]。
次数付き Gorenstein 環 R の 正準加群 は R を何次かずらしたものに同型である。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- Bass, Hyman (1963), “On the ubiquity of Gorenstein rings”, Mathematische Zeitschrift 82: 8–28, doi:10.1007/BF01112819, ISSN 0025-5874, MR0153708
- Bruns, Winfried; Herzog, Jürgen (1993), Cohen-Macaulay rings, Cambridge Studies in Advanced Mathematics, 39, Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-41068-7, MR1251956
- Gorenstein, D. (1952), “An arithmetic theory of adjoint plane curves”, Transactions of the American Mathematical Society 72: 414–436, doi:10.2307/1990710, ISSN 0002-9947, MR0049591
- Grothendieck, Alexandre (1957), “Théorèmes de dualité pour les faisceaux algébriques cohérents”, Séminaire Bourbaki, Vol. 4, Paris: Société Mathématique de France, pp. 169–193, MR1610898
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Gorenstein ring”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4
- Macaulay, F. S. (1934), “Modern algebra and polynomial ideals”, Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Society 30 (1): 27–46, doi:10.1017/S0305004100012354, ISSN 0305-0041
- Hideyuki Matsumura, Commutative Ring Theory, Cambridge studies in advanced mathematics 8.
- Serre, Jean-Pierre (1961), Sur les modules projectifs, Séminaire Dubreil. Algèbre et théorie des nombres, 14, pp. 1–16