ゴマガイ科
ゴマガイ科 | |||||||||||||||||||||
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スラウェシ島産のゴマガイの一種
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Diplommatinidae L. Pfeiffer, 1856[2] |
ゴマガイ科(ゴマガイか、Diplommatinidae)は長さ2mm程度の小さな巻貝の科で、陸生だがカタツムリ類とは異なり、蓋を持ち雌雄の別がある。落ち葉の下などに生息する。生息地域による違いがあり、日本では約40種が確認されている[3][4]。
形態
[編集]やや縦長で6巻きから9巻きほどの巻いた貝殻をもちアズキガイを小さくしたような形のものが多い。殻長は2mm程度の種が多く、最大のものでも4mm程度(ダイオウゴマガイ[5])。螺管には薄い鍔(つば)状の縦肋が密にまかれ、殻口は丸く、丸い蓋を持つ。右巻きのほか左巻きの種もある(ヒダリマキゴマガイ, Palainaなど)[6]。また右巻きだが殻口近くで外向き巻きが外れる種もある(ノタウチガイ, Opithostoma[7]など)。殻口から少し入った内壁に襞(プリカ)と呼ばれる突起が認められることが多く、その形態の違いが種の判別に役立つ。軟体部は頭の左右に触角があり、そのつけ根に眼がある。足の背面側に蓋をかつぐ[3][4]。
生態
[編集]広葉樹の落ち葉の裏側や倒木の接地面などの湿ったところで見つかるが[8]、ゴマ粒のように小さいため生態はまだよく分かっていない。ナメクジに食われることがある[9]。
分布
[編集]東南アジアから日本にかけて、多数の種が生息する。そのほか西太平洋の離島や、オーストラリア、南米アメリカ大陸でも見つかっている。アフリカやヨーロッパではまれ[10]。
系統発生
[編集]以下にゴマガイ科を含むクラドグラムの概要の一例を示す[11][12]。
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種類
[編集]現生の主な属と産地の例を以下に示す[2][3]。貝殻の巻き方について、右巻きを(D), 左巻きを(S), 最後に外向きに反れるものを(D*)で示した。
- Adelopoma Doering, 1885 中南米産 (S) [13][14]
- Arinia H. Adams & A. Adams, 1856 シリブトゴマガイ属[15]。ボルネオ、フィリピン、日本
- Diancta E. von Martens, 1864 太平洋離島 (S)+(D)[16]
- Diplommatina W. H. Benson, 1849 ゴマガイ属 (D)+(S) 東南アジア、日本[15][5]
- Gastroptychia Kobelt & Möllendorff, 1900 腔襞なし(S)[17]
- Habeastrum Simone, 2019 ブラジル南東部の洞窟産[18]
- Hungerfordia R. H. Beddome, 1889 パラオ産[14]
- Moussonia O. Semper, 1865 フィジー産。螺管が9巻きの種もある[19]。
- Opisthostoma W. T. Blanford & H. F. Blanford, 1860 ノタウチガイ属 (D*)[7][20]。ボルネオ産[21]。
- Palaina O. Semper, 1865 ヒダリマキゴマガイ (S) 西太平洋、フィリピン、日本[13][15][6]。
- Plectostoma H. Adams, 1865 (D*) ボルネオサバ州
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ 貝類学 2010, p. 70-71.
- ^ a b “Diplommatinidae”. WoRMS Barna Páll-Gergely. 2024年1月2日閲覧。
- ^ a b c 湊宏 2004, p. 68-69.
- ^ a b 武田 & 西 2015, p. 38.
- ^ a b 湊宏 2015.
- ^ a b “ヒダリマキゴマガイ”. 2024年1月2日閲覧。
- ^ a b 貝類学 2010, p. 125-126.
- ^ 早瀬, 跡辺 & 社家間 2013, p. 33.
- ^ 湊宏 2009.
- ^ “Diplommatinidae”. gbif. 2024年1月2日閲覧。
- ^ Hirano et al. 2019, p. 3.
- ^ Simone 2011, p. 213.
- ^ a b Webstar, Dooren & Schilthuizen 2012.
- ^ a b Hirano et al. 2019.
- ^ a b c 家山博史 & 多田昭 1991.
- ^ Neubert & Bouchet 2015.
- ^ 湊宏 2007.
- ^ Simone, Cavallari & Salvador 2020.
- ^ Neuber & Bouchet 2015.
- ^ “貝殻の形の多様性”. 東京大学. 2024年1月2日閲覧。
- ^ “Miirculous Diplomat Snails”. Jaxshells. 2024年1月2日閲覧。
参考文献
[編集]- 家山博史、多田昭「ゴマガイ類の染色体と核フォイルゲン染色画像の定量解析 」『貝類学雑誌Venus』第50巻第1号、日本貝類学会、1991年、68-78頁。
- 湊宏『世界文化生物大図鑑貝類』(改訂新版)世界文化社、2004年。ISBN 9784418049042。全国書誌番号:20617488 。 p=68-69
- 湊宏「文献紹介-台湾蝸牛図鑑(二版)謝・黄・呉_行政院農業委員会2006」『日本貝類学研究連絡誌ちりぼたん』第38巻第1-2号、日本貝類学会、2007年、61-63頁。
- 湊宏「殻表に穿孔痕をもつクニガミゴマガイの謎」『日本貝類学研究連絡誌ちりぼたん』第39巻第2号、日本貝類学会、2009年、96-100頁。
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年。ISBN 9784130601900。全国書誌番号:21846371 。
- Simone (2011). “Phylogeny of the Caenogastropoda (Mollusca), based on comparative morphology”. Arquivos de Zoologia (Museu de Zoologia da Universidade de São Paulo) 42 (4): 161-323 .
- Webstar; Dooren (2012). “Phylogenetic reconstruction and shell evolution of the Diplommatinidae (Gastropoda: Caenogastropoda)”. Molecular Phylogenetics and Evolution (ScienceDirect) 63 (3): 533-928. doi:10.1016/j.ympev.2012.02.004 .
- 早瀬善正、跡辺隆行、社家間太郎「長野県信濃町(アファンの森)に生息する陸産貝類」『日本貝類学研究連絡誌ちりぼたん』第42巻第1-4号、日本貝類学会、2012年、30-43頁。
- Neubert; Bouchet (2015). “The Diplommatinidae of Fiji – A hotspot of Pacific land snail biodiversity (Caenogastropoda, Cyclophoroidea)”. Zookeys (Pensoft) 487 (487): 1-85. doi:10.3897/zookeys.487.8463 .
- 湊宏「中国地方産ゴマガイ科貝類の新種・ダイオウゴマガイ」『貝類学雑誌Venus』第73巻第1-2号、日本貝類学会、2015年、75-78頁。
- 武田晋一、西浩孝『カタツムリハンドブック』文一総合出版、2015年。ISBN 9784829981306。全国書誌番号:22598344。
- Hirano; Asato; Yamamoto; Takahashi; Chiba (2019). “Cretaceous amber fossils highlight the evolutionary history and morphological conservatism of land snails”. Scientific Reports (Nature) 9 (15886) . p=3
- Simone; Cavallari; Salvador (2020). “A new troglobite species of Habeastrum Simone, 2019 from Brazil, and support for classification in Diplommatinidae (Mollusca, Caenogastropoda)”. Zoosystemtics and Evolution (Pensoft Publishers) 96 (2): 639-647. doi:10.3897/zse.96.53880.