ゴビヴェナトル
ゴビヴェナトル | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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復元図
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
白亜紀後期 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Gobivenator Tsuihiji et al., 2014 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ゴビヴェナトル(学名 Gobivenator)はトロオドン科の獣脚類恐竜の絶滅属の一つである。化石はモンゴル国、ゴビ砂漠中部ジャドフタ層のカンパニアンの地層から発見されている。ゴビヴェナトル属には現在のところGobivenator mongoliensis一種のみが含まれる。 G. mongoliensisは1個体の標本のみが知られているが、この標本は現在知られている白亜紀後期のトロオドン科のものとしては最も完全な骨格である[1]
発見
[編集]ゴビヴェナトル属およびタイプ種G. mongoliensis は最初2014年に對比地孝亘、リンチェン・バルスボルド、渡部真人、ヒシグジャフ・ツァクトバートル、Tsogtbaatar Chinzorig、藤山佳人および鈴木 茂により命名、記載された。
属名は発見地であるゴビ砂漠とラテン語で「狩人」を意味するvenator から造語されている。種小名はモンゴルとラテン語で「~から」を意味するラテン語の接尾語 -ensisで造語され、モンゴル国で出土したことを意味している[1]。現在のところ唯一の標本でもあるホロタイプ MPC-D 100/8は頭骨を含む完全に近い関節した骨格あであり、モンゴル、ウランバートルのモンゴル科学アカデミー古生物学研究センターに収蔵されている。MPC-D 100/86の頭骨は吻部の先端が欠けているものの、ほとんど歪んでおらず良い保存状態である。一方それ以外の部分では中ほどの頸椎、前肢の肘から先、後肢の骨の一部、ガストラリア(腹肋骨)の大部分が失われているもの良好な保存状態である。この標本は日本-モンゴル共同調査隊により発見され、現在知られている限りでは最も完全な白亜紀後期のトロオドン科の標本である。発見地はゴビ砂漠中央部にあるジャドフタ層のザミンホンド地区の白亜紀後期カンパニアン(7200万年前)の地層から発見された[1]。
特徴
[編集]ゴビヴェナトルは小型で鳥に似た華奢なマニラプトル類であるトロオドン科に属している。トロオドン科の種では全て、下顎の歯が密に詰まり、歯の数が多いなど頭部に独特の特徴がある。トロオドン科は鎌状の鉤爪やラプトルのような手を持ち、非鳥恐竜では脳化指数が最高であった。これは鋭い感覚を持ち、高度な行動を行っていたことを意味する[2]。ゴビヴェナトルには二つの固有派生形質があり他の全ての既知のトロオドン科の属と区別される。1つは頭頂骨が尖った前端で癒合していることで、もう1つは下顎の上角骨にある後上角骨孔の前に窩があることである。さらにもう2つ固有派生形質の可能性がある特徴がある。1つは後眼窩骨の分岐部が細くことで、もう1つは血道弓の上部が細長いことである。全長は約160 cmでサウロルニトイデスと同程度の大きさである。頭骨の保存状態が良く、上顎骨窓が細長いことと上眼窩突起よりはるかに長い涙骨の前の突起があるのが見て取れる。これらはトロオドン科に特有の特徴である。ゴビヴェナトルからはトロオドン科ではあまり分っていない解剖学上の特徴についての詳細な情報が得られている。例えば、口蓋の構造からはドロマエオサウルス科やアルカエオプテリクスのような原始的な鳥類にとても近縁である事が支持される。翼突口蓋の構造が縮小していくとともに、口蓋の翼状骨がより細長くなり基部アヴィアラエのものに近づいているように見える。ゴビヴェナトルの頭骨は可動性ではないものの、上翼状骨(epipterygoid)が消失し、口蓋骨の間の接触面積が減少するなど、後に進化した鳥類の頭蓋キネシスに必須の要素を既に持っていた[1]。
分類
[編集]Tsuihiji et al. (2014)ではGao et al.(2012)と一部改変したXu et al. (2011)をデータマトリクスとして使用した系統解析によりゴビヴェナトルの系統上の位置づけ行われた[3]。 結果として363の形質に基づく91のコエルロサウルス類と外群のマトリクスを得た。ゴビヴェナトルは派生的なトロドン科であり、モンゴルのサウロルニトイデスやザナバザル、北アメリカのトロオドンといった白亜紀後期のトロオドン科の種にかなり近縁であるという位置関係が示された。下記に示すクラドグラムはこの解析により示されたトロオドン科におけるゴビヴェナトルの系統上の位置を示したものである[1]。
原鳥類 |
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関連
[編集]参照
[編集]- ^ a b c d e Tsuihiji, T.; Barsbold, R.; Watabe, M.; Tsogtbaatar, K.; Chinzorig, T.; Fujiyama, Y.; Suzuki, S. (2014). “An exquisitely preserved troodontid theropod with new information on the palatal structure from the Upper Cretaceous of Mongolia”. Naturwissenschaften. doi:10.1007/s00114-014-1143-9.
- ^ Junchang Lü, Li Xu, Yongqing Liu, Xingliao Zhang, Songhai Jia, and Qiang Ji (2010). “A new troodontid (Theropoda: Troodontidae) from the Late Cretaceous of central China, and the radiation of Asian troodontids.”. Acta Palaeontologica Polonica 55 (3): 381–388. doi:10.4202/app.2009.0047 .
- ^ Gao, C.; Morschhauser, E. M.; Varricchio, D. J.; Liu, J.; Zhao, B. (2012). Farke, Andrew A. ed. “A Second Soundly Sleeping Dragon: New Anatomical Details of the Chinese Troodontid Mei long with Implications for Phylogeny and Taphonomy”. PLoS ONE 7 (9): e45203. doi:10.1371/journal.pone.0045203. PMC 3459897. PMID 23028847 .