コーヒーフィルター
コーヒーフィルター(英語: coffee filter)とは、コーヒーから挽いた焙煎されたコーヒー豆を濾す調理器具の事である。西ヨーロッパで発明された。材料によって、ろ紙製、布製(昔はネル布、現在は綿)を使ったネルドリップ[1]、金属・セラミックなどのものが存在する。
歴史
[編集]ドリップ式コーヒーの発祥はフランスと言われる。コーヒーフィルターが発明される以前のコーヒーは、トルココーヒーのように豆を粉にしてポットで煮出す方法が一般的であったが、豆の粉が残り、時間をかけて沈殿させてから飲まれた。
1763年、フランスのブリキ職人のドン・マルティンがネル付きドリップポットを発明する。ポット上に置いた布に豆の粉を入れ、お湯を注ぐ方法を世に出した[2]。
紙製のコーヒーフィルターは1908年にドイツで発明された。それまでの家庭では、布や金網で濾してコーヒーを抽出しており、手間がかかり、不衛生であった。ドレスデンに住む主婦のメリタ・ベンツが、夫のヒューゴに美味しいコーヒーを飲んでもらおうと、真鍮製の容器に小さな穴をいくつか開け、ろ紙とコーヒー粉を乗せて湯を注ぐ方法を考案した。[3][4]1937年、メリタの子であるホルスト・ベンツが現在のような円錐形のペーパーフィルターを完成させ、世界中へ広がった[5]。
1908年6月20日、ドイツ特許商標庁へ出願したコーヒーフィルターの特許が認められた[6]。その後、彼女はコーヒーフィルターの販売から始まり、コーヒー関連製品を製造する会社メリタを起業した。
種類
[編集]ペーパーフィルター
[編集]紙製のフィルター。紙の繊維がコーヒーに含まれる油成分を適度に吸着するため、雑味が減り、すっきりとした味を楽しむことができる。使用後はコーヒーかすと一緒に捨てられるため衛生的。紙の性質上、湿気や臭いを吸着しやすいので、密封して保管する。手に入りやすく、ネルフィルターやステンレスフィルターに比較し初心者でも使いやすい。単価は安いが、使い捨てであるためコストがかかる。
ネルフィルター
[編集]布製のフィルター。ネルフィルターを使用してドリップすることを「ネルドリップ」と呼ぶ。抽出されたコーヒー液の微粒子がネルの起毛面に留まるため、口当たりがなめらかなコーヒーが淹れられる。ハンドル付きの輪っかに装着して手で持って淹れるものが主流。使用後は洗浄する必要があるため、ステンレスやセラミックに比べ洗浄に手間がかかるが、紙製のように使い捨てにしないので経済的である。繰り返し使用できるが、コーヒーの成分が目詰まりしてきたら交換する必要がある。
ステンレスフィルター
[編集]ステンレス金属製のフィルター。多くはドリッパーとフィルターを兼ねた円錐形をしている。ペーパーやネルと比べ、コーヒーの成分がフィルターに吸着されず、目が粗いため、コーヒー本来の香りや味を楽しむことができるが、飲む時にざらっとした舌ざわりを感じることがある。布に比べて洗浄しやすく、錆びないので衛生的。高価だが、洗って何回も使えるため、長い目でみると経済的である[7]。
セラミックフィルター
[編集]セラミック製のフィルター。小さな穴が無数に空いた構造をしている。ステンレスと同様、ドリッパーとフィルターの機能を兼ねている。多孔質の構造が不純物をろ過するため、雑味が抑えられ、コーヒーの成分もよく抽出できるのでまろやかな味わいのコーヒーが淹れられる。繰り返し使用できるが、ネル同様、コーヒーの成分が目詰まりしやすいので、定期的に煮沸する、直火にかけるなどのメンテナンスが必要である。単価は高いが、長く使用できるため経済的である[8][9][10]。
健康
[編集]コーヒーに含まれるジテルペノイドであるカフェストールやカーウェオールはコレステロール上昇作用を持つ。これらの物質の飲料中の含有量は抽出方法で異なり、布と紙のフィルターでほぼ除去される[11]。
かすの利用
[編集]コーヒーを抽出した後のかすは、多くはそのまま捨てられるが、乾燥させて消臭剤や脱臭剤にする、家の周りに撒いて防虫剤にする、風呂に入れてコーヒーの香りの入浴剤として使う、コーヒーゼリーやコーヒーシロップの材料にする、乾燥・発酵させて肥料にする、コーヒー色に染色する材料にする、などの様々な再利用が可能である[12][13][14]。
参考文献
[編集]フワッティ・カフェ監修、諸山泰三協力、『ツウになる! コーヒーの教本』秀和システム、2019年2月、ISBN 9784798054544
脚注
[編集]- ^ 自宅でおいしいコーヒーを楽しむために
- ^ “知っているようで知られていないドリップコーヒーの歴史や抽出器具の種類について”. 熊本のコーヒー焙煎研究所わたるのブログ (2018年8月6日). 2023年10月6日閲覧。
- ^ “ペーパードリップとコーヒーフィルターの歴史 有田焼タジン鍋やティーポット、キッチン便利グッズのお店|東セラショップ”. www.toucera.co.jp. 2023年10月6日閲覧。
- ^ Vintage, Frau (2014年7月9日). “フィルターコーヒーで有名なメリタ 歴史のお話”. Frau Vintage. 2023年10月6日閲覧。
- ^ フワッティ・カフェ『ツウになる! コーヒーの教本』秀和システム、2019年、77頁。ISBN 9784798054544。
- ^ History of Coffee
- ^ dripProduct #ステンレスフィルター#ネルフィルター#フィルター#ペーパーフィルター, How to (2022年8月14日). “コーヒーフィルターの種類|ペーパー・ネル・ステンレスの違いと特徴 | コーヒーと、暮らそう。 UCC COFFEE MAGAZINE”. mystyle.ucc.co.jp. 2023年10月6日閲覧。
- ^ Towa (2021年4月15日). “セラミックフィルターって何が良いの?セラミックのメリットデメリットとおすすめのコーヒードリッパー5選”. la chic. Coffee Blog. 2023年10月7日閲覧。
- ^ “セラミックフィルターで入れるコーヒーの味 | Takane Man Coffee”. takaneman.co (2020年7月26日). 2023年10月7日閲覧。
- ^ “セラミック コーヒーフィルターのおすすめを紹介。メリットデメリットも”. やぎのエンピツ (2023年8月15日). 2023年10月7日閲覧。
- ^ Marilyn C. Cornelis, Ahmed El-Sohemy (2007). “Coffee, caffeine, and coronary heart disease”. Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care 10 (6): 745-751. doi:10.1097/MCO.0b013e3282f05d81.
- ^ “抽出後のコーヒーの粉の再利用|賢い使い道9選! | キーコーヒー株式会社” (2021年7月15日). 2023年10月7日閲覧。
- ^ “捨てるなんてもったいない!コーヒーかすを再利用する18のアイデア♫ | キナリノ”. キナリノ|自分らしい暮らしがかなうライフスタイルメディア. 2023年10月7日閲覧。
- ^ “捨てずに乾燥させて正解「コーヒーかす」を再利用するアイデア10選 | ハウジーマガジン”. ハウジー. 2023年10月7日閲覧。