コンチネンタル航空1404便離陸失敗事故
事故機の残骸 | |
事故の概要 | |
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日付 | 2008年12月20日 |
概要 | 山岳波に起因した強風による滑走路の逸脱 |
現場 |
アメリカ合衆国・コロラド州デンバー国際空港 北緯39度52分35.6秒 西経104度41分23.6秒 / 北緯39.876556度 西経104.689889度座標: 北緯39度52分35.6秒 西経104度41分23.6秒 / 北緯39.876556度 西経104.689889度 |
乗客数 | 110[1] |
乗員数 | 5[1] |
負傷者数 | 47 |
死者数 | 0 |
生存者数 | 115 (全員) |
機種 | ボーイング737-524[2] |
運用者 | コンチネンタル航空 |
機体記号 | N18611[3] |
出発地 | デンバー国際空港 |
目的地 | ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港 |
コンチネンタル航空1404便離陸失敗事故(こんちねんたるこうくう1404びんりりくしっぱいじこ)は、2008年12月20日にアメリカ合衆国コロラド州のデンバー国際空港で発生した航空事故である。
同空港からジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港(テキサス州ヒューストン)に向かうコンチネンタル航空1404便(ボーイング737-524)が、離陸滑走時に滑走路を逸脱し大破した。乗員乗客115人は全員が無事だったが、機体は全損扱いとなった[1]。原因は山岳波に起因する強風が局所的に発生したことによるものだった。
事故の経緯
[編集]1404便は現地時間18時01分にプッシュバックを行った。滑走路34Rで離陸を待機している際に、滑走路上に雪と氷は見当たらなかったため、機長は防氷装置を解除した。管制官は270度から27ノット (50 km/h)の風が吹いていることを伝えた。当初ATISが報告した風速よりも大きかったため、パイロットたちは驚いたようだった[2]。
1404便は18時18分に離陸滑走を開始した。87ノット (161 km/h)から90ノット (170 km/h)を加速中に突然機体が左に振れ始めた。機長は方向舵を使い修正を試みたが、機体は滑走路を逸脱し大破した[2][4]。衝撃により火災も発生した[4][5]。
空港にある4つの消防署のうちの1つに近い場所で機体が停止したため、消防隊員らは比較的早い段階で現場に到着した[4]。到着した際、機体の右側で火災が発生しており、客室乗務員が乗客を左側から脱出させていた[6]。また、乗客として搭乗していた非番のコンチネンタル航空のパイロットは、残骸に出入りして取り残された乗客が居ないか確認した[7][8]。
機体は大きなダメージを負い、第1エンジンと主脚が脱落していた[4][9]。
この事故は、デンバー国際空港における最も深刻な事故として注目された[10]。また、機体は全損扱いとなった[2]。
怪我
[編集]乗員5人乗客110人のうち[1]47人が骨折を含む怪我を負ったが、死者はでなかった[11][12][13]。2人の容態が深刻だったが、どちらもその日の夜に回復した[14]。7人が翌朝まで病院で手当てを受けた[14]。
機長は重傷で、背骨を骨折していたため、病院に入院した[15][16]。
事故調査
[編集]ブラックボックスはデータの引き出しが可能な状態で発見された[17]。コックピットボイスレコーダーの解析では、ブレーキ解除から41秒後までは異変はみられなかった[18][19]。突然機体が大きく揺れ始め、パイロットは4秒後に離陸を中止し、6秒後に両エンジンが停止したため、レコーダーの記録も終了した[18][19]。異常発生時に、機体は119ノット (220 km/h)の速度が出ていた[18][19]。
インタビューに応じた副操縦士によると、87ノット (161 km/h)から90ノット (170 km/h)に加速中に機体がセンターラインから突然外れ、左側に逸脱し始めたという[19]。また、当時操縦していたのは重傷を負った機長だったとも証言した[18][19]。機長も副操縦士も経験豊富であった[5][19]。
乗客や消防隊の証言通り、滑走路上や地面に残されたスキッドマークから、機体は僅かながら浮揚していたことが判明した[4][20]。どの時点で火災が発生したかは不明だった[17][20]。滑走路上に雪や氷はなかったものの、31ノット (57 km/h)の横風が報告されていた[21][22]。
事故機をデンバーまで操縦したパイロットは、特に異常はみられなかったと証言した[18]。事故機は、1995年にエンジントラブルで緊急着陸を行い、両エンジンが交換されていたが、エンジン以外の場所に損傷は負っていなかった[5]。
当初は、離陸滑走中にタイヤがロックされ、滑走路を逸脱した可能性が考えられた[6][12][15]。NTSBは、離陸が開始されるとエンジンは正常に動作し、タイヤもブレーキも故障したようには思えなかったと述べた。そのため、着陸装置は事故原因から外された[18][19]。
2009年7月17日、突風と氷に調査の焦点が向けられたことを発表した。パイロットは、「我々の推測では滑走路の逸脱は、強い突風かもしくは氷に衝突したためだろう」と話した。1404便が北に向かって離陸滑走をしている最中に、北西から28 - 31ノット (52 - 57 km/h)の風が吹いており、最大で37ノット (69 km/h)の風が吹いた。ボーイング737型機では、通常状態での滑走路で風速38ノット (70 km/h)の制限値が設けられている[23]。
調査の結果、1404便の離陸前後に最大45ノット (83 km/h)の突風が吹いていた[24]:43。事故当時にも、35ノット (65 km/h)の横風および、最大瞬間風速40ノット (74 km/h)を観測していた。しかし、観測のタイミング、観測地との位置が離れていたこと、山岳波が局所的に吹いていたことなどから、管制官はパイロットに風速を27ノット (50 km/h)とだけ伝えた[24]:59-61。
2009年7月18日に、地元紙のデンバー・ポストが発行した記事によると、事故機は2008年11月にウィングレットが主翼の先端に追加されていた。コンチネンタル航空のフライトマニュアルでは、ウィングレット搭載機の制限値は風速38ノット (70 km/h)とされていた。しかし、NTSBはウィングレットの製造元と設置者は、B737-500型機での横風検証は最大でも22ノット (41 km/h)までしかしていないということを付け加えた[25]。
2010年7月13日、NTSBは事故の推定原因として、突風に遭遇した機長が滑走路逸脱の約4秒前から方向舵の操作を取り止めた事だとした。事故当時の横風は、機長が受けた訓練やそれまでの経験を大きく越えるものだった[26]。また、機長が実際の風速を知っていれば離陸中止などの対処を取ったであろうとも述べた[24]:59-61。
映像化
[編集]- メーデー!:航空機事故の真実と真相 第17シーズン第7話「Runway Runoff」
脚注
[編集]- ^ a b c d "Continental Airlines Responds to Flight 1404 Accident" Continental Airlines. December 21, 2008. Retrieved on December 20, 2008. Archived February 18, 2012, at the Wayback Machine.
- ^ a b c d Continental Flight CO1404. Aviation Safety Network. Retrieved on December 21, 2008.
- ^ "FAA Registry (N18611)". Federal Aviation Administration.
- ^ a b c d e "NTSB begins investigation into why plane slid off runway." 9NEWS. December 21, 2008. Retrieved on December 21, 2008. [リンク切れ]
- ^ a b c "Cause of Denver plane accident unclear, transportation officials say". Los Angeles Times. December 22, 2008. Retrieved on December 22, 2008.
- ^ a b Schmollinger, Christian and Cynthia Cotts. "Continental Flight Skids Off Runway, Injuring Some (Update3)." Bloomberg. December 21, 2008. Retrieved on December 21, 2008.[リンク切れ]
- ^ “Archived copy”. 2010年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月14日閲覧。
- ^ “Continental pilot awarded heroism medal”. 23 January 2017閲覧。
- ^ Correll, DeeDee. "Continental flight veers off Denver runway, injures dozens." Los Angeles Times. December 21, 2008. Retrieved on December 21, 2008. Archived January 30, 2009, at the Wayback Machine.
- ^ "Plane wreckage could be moved next week". 9NEWS. December 26, 2008. Retrieved on December 26, 2008. [リンク切れ]
- ^ NTSB final report, section 1.2 "Injuries to persons", page 6
- ^ a b "Brakes eyed in Denver plane crash[リンク切れ]." MYSA. December 21, 2008. Retrieved on December 22, 2008. [リンク切れ]
- ^ "Firefighter recalls a miracle on a Denver runway." Associated Press. December 21, 2008. Retrieved on December 21, 2008. [リンク切れ]
- ^ a b Wyatt, Kirsten. "Firefighter says it's a 'miracle' no one died in Denver burning jet Archived 2012-02-24 at the Wayback Machine.." Associated Press. Sunday December 21, 2008.
- ^ a b “Source: Landing gear, wheels, brakes possible cause of crash”. CNN. (December 22, 2008) 2008年12月22日閲覧。
- ^ Pasztor, Andy (December 23, 2008). “Investigators Confirm Continental Jet Crew Tried to Abort Takeoff”. Wall Street Journal 2008年12月23日閲覧。
- ^ a b "Plane's 'black boxes' recovered". Denver Post. December 21, 2008. Retrieved on December 22, 2008.
- ^ a b c d e f “NTSB: Wheels, brakes didn't cause Continental accident”. CNN.com. (22 December 2008) 22 December 2008閲覧。
- ^ a b c d e f g "DIA crash details emerge". The Denver Post. December 23, 2008. Retrieved on December 23, 2008.
- ^ a b "Aerial video indicates breakup sequence of crashed plane". 9NEWS. December 22, 2008. Retrieved December 22, 2008. [リンク切れ]
- ^ "Continental Airlines Statement Regarding Flight 1404." Continental Airlines. December 20, 2008. Retrieved on December 21, 2008. Archived February 18, 2012, at the Wayback Machine.
- ^ “Continental flight slides off runway; dozens injured”. 9NEWS (21 December 2008). 21 December 2008閲覧。 [リンク切れ]
- ^ Lowy, Joan. "Pilot recalls 'massive gust of wind' before crash." USA Today. July 17, 2009. Retrieved on December 29, 2009.
- ^ a b c https://www.ntsb.gov/investigations/AccidentReports/Reports/AAR1004.pdf NTSBによる航空事故報告書 (PDF)
- ^ Jeffrey Leib (18 July 2009). “Winds surprised crew on DIA flight”. The Denver Post. 15 September 2010閲覧。
- ^ National Transportation Safety Board (July 13, 2010). “Runway Side Excursion During Attempted Takeoff in Strong and Gusty Crosswind Conditions”. March 27, 2015閲覧。