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コウジ酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コウジ酸
識別情報
CAS登録番号 501-30-4 チェック
PubChem 3840
ChemSpider 3708 チェック
UNII 6K23F1TT52 チェック
EC番号 207-922-4
DrugBank DB01759
KEGG C14516 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL287556 チェック
RTECS番号 UQ0875000
特性
化学式 C6H6O4
モル質量 142.11 g/mol
外観 白色の結晶、または結晶性の粉末
融点

152 - 155 °C

への溶解度 わずか
酸解離定数 pKa 9.40[1]
危険性
Rフレーズ R36/37/38
Sフレーズ S22, S24/25
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

コウジ酸(コウジさん、Kojic acid)は1907年から発見された化合物である[2]三省製薬が開発し1988年から医薬部外品美白剤としての承認を得ている。

性質

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およびエタノールに溶ける。多くの金属イオンに対しキレートを作り、Fe(III)イオンには暗赤色を呈する。弱い抗菌作用を持つ。

別名5-hydroxy-2-hydroxymethyl-4-pyrone、または5-Hydroxy-2-(hydroxymethyl)-4H-pyran-4-one。

生合成

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コウジ酸は麹菌グルコース等のを発酵させることによって生成されることが知られているが、その詳しい生合成経路は不明である。

美白剤としての開発

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1975年三省製薬株式会社が、メラニン合成酵素であるチロシナーゼの活性を抑制し、メラニンの生成を抑える作用を有することを発見し、美白剤として開発。1988年医薬部外品の有効成分として厚生省(当時)から承認を得た。

動物実験で肝がんを引き起こす可能性を示唆する報告がなされたため、2003年3月厚生労働省の通達により医薬部外品(薬用化粧品)への使用が一旦中止されたが、マウスにおいても、ラットにおいても肝臓への影響は、外用ではなく、高濃度での混餌投与(1~3%)でみられた知見であった。

その後、開発元の三省製薬がコウジ酸の安全性を確認する追加試験を実施し、コウジ酸の化粧品としての使用は安全性上なんら問題がないことを証明した。このため2005年11月2日、厚生労働省は薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会において「医薬部外品において適正に使用される場合にあっては、安全性に特段の懸念はないものと考えられる。」との見解を発表した。これに伴い前述の使用中止の通知が撤回されたと同時に、コウジ酸配合化粧品(医薬部外品)の製造販売の再開が認められた。

有効性

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肝斑に対して研究ではコウジ酸とハイドロキノングリコール酸ビタミンCと併用された研究も多く、比較研究では2019年のレビューで以下が発見されたが、さらなる研究が必要である[3]

  • 計50人で比較研究を実施し3か月後、改善率は2%濃度(少ない)のコウジ酸で30%、2%濃度(少ない)のハイドロキノンで58%であった[3][4]
  • 計100人で比較研究を実施し3か月後、改善率は4%濃度(多い)のコウジ酸クリームで58%、2%濃度(少ない)のハイドロキノンで30%であった[3][5]

ほかに見つかった研究

  • 計60人で比較研究を実施し3か月後、4%濃度(多い)のハイドロキノンは、0.75%濃度(かなり少ない)のコウジ酸・ビタミンCクリームよりも改善率に優れていた[6]

黄ぐすみと呼ばれる、皮膚の黄色化や透明度低下にも改善効果があることが経験的に知られている[7]

美白以外の効能・用途

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  • 酸化防止剤・・・カットフルーツ、カニやエビの褐変防止等に用いられる。[8]
  • 抗菌作用[8]
  • がん細胞の治療感受性増強・・・コウジ酸とケルセチンの共結晶はケルセチン単体と比べヒト子宮頸がん細胞(HeLa)とヒト大腸がん細胞(Caco-2)に2倍以上の細胞毒性活性を持つとする研究がある。[9]
  • 放射線防護効果・・・コウジ酸は電離放射線による損傷からチャイニーズハムスター卵巣細胞を保護することが示されている。また、犬に致死量の3 Gyガンマ線を照射したところ、対照群が16日以内に死亡したのに対し、コウジ酸を前処理したイヌは51日生存率が66.7%であった。[10]

出典

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  1. ^ Bjerrum, J., et al. Stability Constants, Chemical Society, London, 1958.
  2. ^ 植物学雑誌、21,7(1907)
  3. ^ a b c Majid Saeedi, Masoumeh Eslamifar, Khadijeh Khezri (2019-2). “Kojic acid applications in cosmetic and pharmaceutical preparations”. Biomedicine & pharmacotherapy 110: 582–593. doi:10.1016/j.biopha.2018.12.006. PMID 30537675. https://doi.org/10.1016/j.biopha.2018.12.006. 
  4. ^ Sukumar Gajjala, Syed Yousuf Ali, Navya chowdary, Singireddy Harshini (2016-11). “The comparative study of Hydroquinone and kojic acid in treatment of Melasma in Shadan Institute of Medical Science Teaching Hospital and Research Centre, Himayathsagar road, Hyderabad (Telangana State)”. IOSR Journal of Dental and Medical Sciences 15 (11): 1-5. 
  5. ^ Nadiea Espahbodi, Alireza Shariati, Ali Abbasi, Rabeh Fizi (2008). “A comparative study of kojic acid cream and hydroquinone in treatment of melasma”. J Shahrekord Univ Med Sci 10 (2): 45-51. http://journal.skums.ac.ir/browse.php?a_id=8&sid=1&slc_lang=en. 
  6. ^ Rochelle C. Monteiro, B. Nanda Kishore, Ramesh M. Bhat, D. et al. (2013-3). “A Comparative Study of the Efficacy of 4% Hydroquinone vs 0.75% Kojic Acid Cream in the Treatment of Facial Melasma”. Indian journal of dermatology 58 (2): 157. doi:10.4103/0019-5154.108070. PMID 23716817. https://doi.org/10.4103/0019-5154.108070. 
  7. ^ 伊賀和宏、横田紗綾、中井大助、中山秀夫、陳科榮「コウジ酸の顔面黄ぐすみに対する改善効果」『西日本皮膚科』第77巻第3号、2015年、244-249頁、doi:10.2336/nishinihonhifu.77.244 
  8. ^ a b 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会報告について”. www.mhlw.go.jp. 2022年8月14日閲覧。
  9. ^ Veverka, M., Dubaj, T., Gallovič, J., Jorík, V., Veverková, E., Danihelová, M., & Šimon, P. (2015). Cocrystals of quercetin: synthesis, characterization, and screening of biological activity. Monatshefte für Chemie-Chemical Monthly,146(1), 99-109 doi:10.1007/s00706-014-1314-6
  10. ^ Wang, Kai; Li, Peng-Fei; Han, Chun-Guang; Du, Li; Liu, Chao; Hu, Ming; Lian, Shi-Jie; Liu, Yong-Xue (2014). “Protective Effects of Kojic Acid on the Periphery Blood and Survival of Beagle Dogs after Exposure to a Lethal Dose of Gamma Radiation”. Radiation Research 182 (6): 666–673. Bibcode2014RadR..182..666W. doi:10.1667/RR13823.1. PMID 25409121. 

外部リンク

[編集]