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ロシアにおける同性愛宣伝禁止法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
伝統的家族価値の否定を宣伝する情報から子供を守ることを目的とした『健康と発達を害する情報からの子供の保護に関する連邦法』5条及びロシア連邦の個々の法律行為の改定に関する連邦法
原語名 Федеральный закон «О внесении изменений в статью 5 Федерального закона «О защите детей от информации, причиняющей вред их здоровью и развитию» и отдельные законодательные акты Российской Федерации в целях защиты детей от информации, пропагандирующей отрицание традиционных семейных ценностей»
ロシア語
通称・略称 同性愛宣伝禁止法
国・地域 ロシアの旗 ロシア連邦
形式 連邦法
日付 連邦議会可決:2013年6月11日
成立:2013年6月30日
主な内容 非伝統的な性的関係を未成年者に宣伝すること禁ずるために、関連する連邦法を改定する。
関連法令 健康と発達を害する情報からの子供の保護に関する連邦法英語版ロシア語版
条文リンク http://kremlin.ru/acts/bank/37386
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伝統的家族価値の否定を宣伝する情報から子供を守ることを目的とした『健康と発達を害する情報からの子供の保護に関する連邦法』5条及びロシア連邦の個々の法律行為の改定に関する連邦法[1](でんとうてきかぞくかちのひていをせんでんするじょうほうからこどもをまもることをもくてきとした『けんこうとはったつをがいするじょうほうからのこどものほごにかんするれんぽうほう』5じょうおよびロシアれんぽうのここのほうりつこういのかいていにかんするれんぽうほう)は、レイティングにかかわる既存の連邦法を改定するロシア連邦の法律[2]

LGBT児童性愛を誘発する観点に基づき[3]、この改定により「非伝統的な性的関係」を未成年に宣伝することが禁じられた。

最終的な法案ができるまでの議論から、「非伝統的な性的関係」に「同性間の性的関係(=同性愛)」が含まれることが確定しており、日本のメディアは同性愛宣伝禁止法[4][5][6](どうせいあいせんでんきんしほう)などと呼称を用いて報道している。

また、ロシアにおける同性愛者(ゲイおよびレズビアンバイセクシュアル含む)の日常行動まで規制される懸念が指摘されている[4]

なお、この法律は他の法律を改定するためものであり、対象となる法律の再改定は新たな法律によって行われる。実際の条文や、現在効力があるかどうかは、改定された法律の現在の条文で確認する必要がある。

2022年に改定され、保護対象を未成年から成人にも拡大した。「非伝統的な性的関係のプロパガンダ」のみならず、未成年者に対して性転換を誘発する可能性のあるコンテンツも禁止されている[3][7]

制定までの経緯

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モスクワサンクトペテルブルクLGBTコミュニティで発達していたことが知られていたにもかかわらず、政治家の間でゲイの権利への抑え込みが2006年からあった[8]。モスクワ市ではゲイ・パレード開催の許可が盛んに取り下げられ、前市長のユーリ・ラズコフは最初の二つのモスクワ・パレード(モスクワでのゲイ・パレード)への拒絶を支援し、彼らを「悪魔的」だと評し、「この手の啓蒙活動」をロシアで広めていると西側を非難した[9][10][11]公正ロシア所属の議員アレクサンドル・チュエフもゲイの権利に反対し「プロパカンダ」法に似たものの導入を2007年に試みた。LGBTの権利活動家でモスクワ・パレード主催者のニコライ・アレゼエフは、チュエフが公職についている期間に先立って、彼が公の場で同性間の関係に深く関わっているとテレビ番組で明らかにした[12]

2010年、ゲイ・パレードの拒絶でゲイが差別待遇を受けているというアレゼエフの申し立てに基づいて、欧州人権裁判所はロシアに罰金を科した。暴力のリスクを主張していたにもかかわらず、裁判所はそうしたデモンストレーションを行う団体を支援するため、判決を翻訳した[13]。2012年3月、ロシアはLGBTの選手などを支援するプライドハウスの2014年ソチ冬季オリンピックでの設置を禁止することを決定した。判決文には「ロシア社会の安定を損なう」恐れがあり、「家族の母性と子供の保護の場所での」公共の道徳と方針に反している、とあった[14]。2012年8月、モスクワは、100年間は毎年モスクワ・パレードを開催するというニコライ・アレゼエフの申し立てを、公共の混乱を引き起こしかねないとの理由から拒否する判決を支持した[15]

未成年の間で「危険な」ものの供給を禁止する法である「健康と発達のために子供を危険な情報から守る」法案が成立した。これはポルノとともに、暴力、非合法活動、薬物乱用、自傷行為を美化するもののような「不安・恐怖・パニックを子供に引き起こしかねない」コンテンツを含む。情報・映像通信ネットワーク(テレビとインターネットを含む)」でのレイティングシステムの義務化、児童ポルノ薬物乱用自殺を美化するサイトの検閲のためのブラックリストの作成を含んだ、この法の修正案が2012年に制定された[16][17][18][19][20]

2013年6月11日ロシア連邦議会の下院である国家院で満場一致で可決され(イリヤ・ポノマリョフのみ棄権)、同26日に上院である連邦院が承認、ウラジーミル・プーチン大統領の署名を経て成立した[21][22]。成立に至るまでの過程やこれに先立つ地方の立法についてはロシア語版記事を参照のこと。

反応

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批判

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同法は、ホモフォビアにもとづいた攻撃の増加と正当化につながると批判された[23]。また、「オリンピック憲章」には様々な形の差別を明白に禁止する語句が含まれているため、法律が2014年ソチで開催された冬季オリンピックに影響する可能性についても懸念され[4]、欧米諸国の首脳は同法に抗議して2014年ソチオリンピックの開会式を欠席した[24]

賛同

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ロシア国外の100を超える保守派団体はこの法律の成立を歓迎した。米国の世界家族会議英語版のマネージング・ディレクターであるラリー・ジェイコブスは本法律を「未成年者を彼らの身体的および道徳的健康を損なうライフスタイルから保護する目的とする法律」と評価した[25]

関連項目

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参考文献

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  1. ^ 2013年6月29日付連邦法 N135-FZ” (ロシア語). ロシア連邦大統領サイト. 2018年4月16日閲覧。
  2. ^ ロシア連邦法の改定はロシア連邦法によって行われる。
  3. ^ a b “Russia to ban sharing LGBT 'propaganda' with adults as well as children” (英語). BBC News. (2022年10月27日). https://www.bbc.com/news/world-europe-63410127 2022年11月8日閲覧。 
  4. ^ a b c 「ソチ五輪の開催撤回を」 ロシアの反同性愛法に反発”. 朝日新聞 (2013年8月14日). 2018年4月15日閲覧。
  5. ^ LGBT企画<下> 悩める若者に未来を”. 東京新聞 (2017年12月14日). 2018年4月15日閲覧。
  6. ^ 暴言市議「同性婚引き裂く」 ロシア初のカップルに試練”. 東京新聞 (2014年11月14日). 2018年4月15日閲覧。
  7. ^ Russian Lawmakers Vote in Favor of 'LGBT Propaganda' Expansion” (英語). The Moscow Times (2022年10月27日). 2022年11月8日閲覧。
  8. ^ Herszenhorn, David M.. “Gays in Russia Find No Haven, Despite Support From the West” (英語). https://www.nytimes.com/2013/08/12/world/europe/gays-in-russia-find-no-haven-despite-support-from-the-west.html?pagewanted=all 2018年8月31日閲覧。 
  9. ^ Sputnik. “Moscow Says No to May 25 Gay Pride Parade” (英語). sputniknews.com. 2018年8月31日閲覧。
  10. ^ “Moscow bans 'satanic' gay parade” (英語). (2007年). http://news.bbc.co.uk/2/hi/6310883.stm 2018年8月31日閲覧。 
  11. ^ Gay Pride parade 'satanic': mayor” (英語). The Sydney Morning Herald (2007年1月30日). 2018年8月31日閲覧。
  12. ^ “Homophobic politician outed on national TV” (英語). PinkNews. https://www.pinknews.co.uk/2007/06/22/homophobic-politician-outed-on-national-tv/ 2018年8月31日閲覧。 
  13. ^ “Russia fined over gay parade ban” (英語). BBC News. (2012年3月6日). https://www.bbc.com/news/world-europe-11598590 2018年8月31日閲覧。 
  14. ^ “Judge bans Sochi 2014 gay Pride House claiming it would offend "public morality"”. (1332068400). https://www.insidethegames.biz/articles/16259/judge-bans-winter-olympics-gay-pride-house 2018年8月31日閲覧。 
  15. ^ “Moscow bans gay pride for century” (英語). BBC News. (2012年8月17日). https://www.bbc.com/news/world-europe-19293465 2018年8月31日閲覧。 
  16. ^ “Amendments to the law on protecting children from information harmful to their health and development” (英語). President of Russia. http://en.kremlin.ru/events/president/news/16095 2018年8月31日閲覧。 
  17. ^ “Law on protecting children from negative and harmful information” (英語). President of Russia. http://en.kremlin.ru/events/president/news/9996 2018年8月31日閲覧。 
  18. ^ Kahn, Dmitry (2012年9月5日). “Russia awaits verdict on a new TV censorship law” (英語). https://www.rbth.com/articles/2012/09/05/russia_awaits_verdict_on_a_new_tv_censorship_law_17961.html 2018年8月31日閲覧。 
  19. ^ “Russia blacklist law takes effect” (英語). BBC News. (2012年11月1日). https://www.bbc.com/news/technology-20096274 2018年8月31日閲覧。 
  20. ^ Russia: Federal laws introducing ban of propaganda of non-traditional sexual relationships”. Article 19. 2018年9月1日閲覧。
  21. ^ Russian 'Anti-Gay' Bill Passes With Overwhelming Majority”. RIA Novosti. 2018年4月15日閲覧。 満場一致と棄権者の出典。
  22. ^ Russia passes anti-gay-law”. The Guardian. 2018年4月15日閲覧。 国家院可決日と大統領署名が公表された日が30日であることなどの出典。なお、法律名から署名日は6月29日と思われる。6月30日としていた日付は念のため削除した。 なお、国家院と連邦院の通過日も法律に書かれている。
  23. ^ Paul Gallagher and Vanessa Thorpe (2 February 2014). “Shocking footage of anti-gay groups”. Independent.ie. 12 February 2014閲覧。
  24. ^ “ソチ五輪開会式 欧米主要国は欠席 同性愛禁止・人権を問題視”. (2014年2月7日). https://web.archive.org/web/20140207145307/http://sankei.jp.msn.com/sochi2014/news/140207/soc14020709220033-n1.htm 2021年8月2日閲覧。 
  25. ^ Six U.S. Organizations Voice Support of Russia's Antigay Law” (英語). www.advocate.com (2013年9月3日). 2022年4月13日閲覧。