ケーブル・ライナー
ケーブル・ライナーもしくはケーブル・ライナー・シャトル(英: Cable Liner、Cable Liner Shuttle)とは、ドッペルマイヤー・ケーブル・カーによって設計された空港、市街地、二次交通、パークアンドライド、キャンパス、リゾート、遊園地などで使用される新交通システムの名称。
当時世界で唯一の商業用リニアモーターカーであったバーミンガムピープルムーバを代替したことで注目された。既存のリニア軌道は新しいエアレール・リンクに転用され、ピープルムーバと代替シャトルバスを置き換えた[1]。
技術とシステムの特徴
[編集]システムの特徴として、ケーブル推進が挙げられる。これによって車両の運行し、4kmまでの距離を、毎時最大7,000人の旅客輸送が可能となっている[2]。
ケーブル駆動式
[編集]ケーブル駆動式は、中央から動力を供給し、把握装置で車両とワイヤーロープの接続を行う[3]。車両はワイヤーロープの牽引で制御し[3]、エンジン、ブレーキなどは一切搭載されない。
全自動化
[編集]システムは全て自動化され、運転手、車掌等の乗務員は添乗していない。列車制御は中央制御室からの遠隔操作により行う[4]。
避難システム
[編集]非常時の避難は非常用ディーゼルエンジンで行う。これによって故障車両を駅まで戻せるため、非常用通路の必要としない。また旅客車だけでなく、貨車も運用可能。
車両
[編集]駆動系は列車から隔離されており、沿線や駅ホーム内の騒音は非常に少なく、排ガス等もない。
軌道
[編集]ケーブル・ライナーは自己支持形の鋼鉄製軌道を使用する。車両重量が軽量ため、軌道も軽量な走行案内用のIビーム軌道で構成される[5]。案内軌道上部は鉄骨構造で、冬季でも暖房が不要[5]。鋼製トラス軌道とコンクリート製支柱との間に鋼製のアダプターを挟むことにより、高さ調整を行って地盤沈下を補正でき[6]、軌道間隔は67メートル以上取る事が可能とされる。
案内軌道上部は鋼製の骨組構造であり、強固な基礎を持っておらず、ホームドアは駅の基礎に設置される。
設計
[編集]車両は前後双方向に走行可能。中間車は同一仕様で、両端車両は前後対称の設計となっている[7]。
システム配置
[編集]システム構成方法は以下の4つ。
シングル・シャトル方式
[編集]最も単純な構成で、単線軌道上に1本の列車が往復する。乗客需要や運行頻度が少なくて済む区間に適している[8]。
ダブル・シャトル方式
[編集]ダブル・シャトル方式は、最大3kmまでの距離を、高い輸送需要と運行頻度で行う[8]。この方式では、2本の列車が単線並列で運行を行う。 車両の駆動系はそれぞれ独立しており、一方の車両が故障しても、もう一方の車両は運行可能であるため、シングル・シャトル方式より信頼性が高い[8]。
シャトル・バイパス方式
[編集]シャトル・バイパス方式は、終端駅は単線であり、中間施設で列車交換を行う[8]。交換施設は、路線のほぼ中央に配置する必要があり、中間駅の一部となることが多い。この方式は、ダブルシャトル方式と同等の輸送容量と頻度を実現可能で、駅の構成、路線長などの要件に応じて、各列車が独自のワイヤーロープを掴むか、両方の列車が同じワイヤーロープを掴むかの選択ができる [8]。
ピンチド・ループ方式
[編集]ピンチド・ループ方式は、複線軌道内に多数の列車が循環運転を行う。この方式は、それぞれの駅間にあるワイヤーロープで構成される。全てのワイヤーロープには、それぞれ駆動装置があり[8]、列車は駅でワイヤーロープの掴み変えを行う。 掴み変えは、全列車が駅に停車中の乗客乗降時に行われる[8]。終着駅に設置されたポイントにより、一方の車線から終着駅ホームに入線後、停車中にもう一方の車線に切り替わる。この方式では、駅間距離はほぼ均等にする必要がある[8]。
導入事例
[編集]- マンダレイ・ベイ・トラム(アメリカ合衆国・ラスベガス)
- シティー・センター・トラム(アメリカ合衆国・ラスベガス)
- トロントピアソン国際空港のLINKトレイン(カナダ・トロント)
- バーミンガム空港のエアレール・リンク(イギリス・バーミンガム)
- ヴェネツィア・ピープル・ムーバー(イタリア・ヴェネツィア)
- メキシコ・シティ国際空港のアエロトレン(メキシコ・メキシコシティ)
- カブレトレン・ボリバリアノ(ベネズエラ・カラカス)
- オークランド国際空港のコロシアム - オークランド国際空港線(アメリカ合衆国・オークランド) - BARTと接続を行っている。
- シェレメーチエヴォ国際空港 [9]のシェレメーチエヴォ国際ターミナル・トランスファー(ロシア・モスクワ)
- ハマド国際空港シャトル(カタール・ドーハ)
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ “Birmingham International Airport People Mover”. Arup. 2007年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月11日閲覧。
- ^ DCC Doppelmayr Cable Car (2008). Company Presentation: Fully Automated Cable-Propelled APM Systems. DCC Doppelmayr Cable Car GmbH. p. 13
- ^ a b “System Features”. 2008年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月11日閲覧。
- ^ DCC Doppelmayr Cable Car (2008). Automated People Mover (APM): Planner's guide. DCC Doppelmayr Cable Car GmbH. p. 39
- ^ a b DCC Doppelmayr Cable Car (2008). Automated People Mover (APM): Planner's guide. DCC Doppelmayr Cable Car GmbH. p. 35
- ^ DCC Doppelmayr Cable Car (2008). References. DCC Doppelmayr Cable Car GmbH. p. 8
- ^ DCC Doppelmayr Cable Car (2008). Automated People Mover (APM): Planner's Guide. DCC Doppelmayr Cable Car GmbH. pp. 45
- ^ a b c d e f g h “Configurations”. DCC Doppelmayr Cable Car. 2008年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月11日閲覧。
- ^ "Doppelmayr Cable Liner at Moscow airport serves the World Cup" (Press release). Doppelmayr Group. 25 June 2018. 2018年7月22日閲覧。