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ケネス・カタニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ケネス・C・カタニア
Kenneth C. Catania
生誕 1965年11月5日
研究分野 神経科学
研究機関 ヴァンダービルト大学
出身校 メリーランド大学カレッジパーク校, カリフォルニア大学サンディエゴ校
博士課程
指導教員
グレン・ノースカット英語版
主な受賞歴 マッカーサー・フェロー(2006), プラデル研究賞ドイツ語版(2013), グッゲンハイム・フェロー(2014)
プロジェクト:人物伝
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ケネス・C・カタニア(Kenneth C. Catania, 1965年11月5日 - )は、アメリカ合衆国生物学者神経科学者である。ホシバナモグラ[1]ミズトガリネズミ英語版[2]ハダカデバネズミ[3]ワニ[4]ヘビ[5]ミミズ[6]デンキウナギ[7]など多様な種の動物の感覚器行動などを研究している。

経歴

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1965年11月生まれ。メリーランド大学カレッジパーク校に在学中、ワシントンD.C.の国立動物園英語版で研究助手を務めた。これは、カタニアの父の知り合いであり、国立動物園に務めていた哺乳類学者のエドウィン・グールドが、動物園に補充するためのホシバナモグラを捕獲するボランティア(兼研究助手)を募っており、それを知ったカタニアが名乗りをあげたためであった[8]。その後、1989年に動物学の理学士号を取得した。当時、カタニアはホシバナモグラの特徴的な星形の鼻が電気受容器であるかどうかを検証する実験の構想を練っていた。『電気受容(Electroreception)』という専門書を見つけたカタニアは、偶然にもメリーランド大学へ講演に来ていた グレン・ノースカット英語版(著名な神経科学者で、『電気受容』の共著者でもあった)と面談する機会があった。グレンはカタニアの研究に興味を示し、彼の務めていたカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)への出願を促した[9]。1990年秋、カタニアはグールドの推薦によりUCSDの神経科学コースに入学した[10]。グレンの指導のもと、神経科学の修士号(1992年)および博士号(1994年)を取得した。ホシバナモグラの「星」に対応する脳領域を詳細に調べるため、ヴァンダービルト大学ジョン・カース英語版の研究室を訪れ、そのまま博士研究員となる[11]。2000年にヴァンダービルト生物科学科の教授となり、2022年現在はスティーブンソン生物科学科の教授である[12]

アメリカでは「天才賞」として知られるマッカーサー・フェローを2006年に授与され[13]、2013年には「モデル生物における感覚行動の神経基盤に関する非常に想像力豊かな調査」と「行動、感覚処理、脳組織の基本原理の発見」に対して米国科学アカデミーからプラデル研究賞ドイツ語版(神経科学部門)を授与された[14]。2014年にはグッゲンハイム・フェローを授与された[15]

研究

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カタニアの研究は、逃げる獲物を発見して捕食するために特別な感覚や器官を進化させた動物に焦点を当てることが多く、「エクストリーム」な動物行動の専門家とみなされている[16]。このような動物の一例として、ヒゲミズヘビが挙げられる。一般に魚類は「Cスタート」とよばれる逃避反射によって捕食者とは反対の方向へ逃げるが、ヒゲミズヘビはこの習性を逆手に取り、次のような方法で魚を捕食する。ヒゲミズヘビは体をくの字に曲げ頭と首の間にくぼんだ空間を作る。ここに魚が入り込むと、ヒゲミズヘビは首を痙攣させて音を立てる。この音を知覚した魚は首とは逆の方向、つまりヘビの頭めがけて泳ぎ、そのまま捕食される。この行動ははたから見ると魚が「自殺」しているように見える[17]

グッゲンハイム・フェローを授与された際、カタニアは以下のようにコメントしている。「このような並外れた動物の行動や多様な形態は、特殊な感覚や脳の進化について教えてくれるだけでなく、正しく評価されない美しさや優雅さをもっています。 私は、動物たちの驚くべき能力を研究し、時には初めてそれを明らかにすることができる職業に就けて、とても幸運だと感じています」[18]

カタニアの研究はサイエンティフィック・アメリカンナショナル・ジオグラフィックナチュラル・ヒストリー英語版ザ・サイエンティスト英語版などの雑誌でも紹介されている。

著書

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Great Adaptations: Star-nosed Moles, Electric Eels, and Other Tales of Evolution's Mysteries Solved. Princeton University Press. (2020). ISBN 0691195250 
『カタニア先生は、キモい生きものに夢中! その不思議な行動・進化の謎をとく』的場知之訳、化学同人、2022年8月。 

出典

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  1. ^ Catania, Kenneth C. (2011). “The sense of touch in the star-nosed mole: from mechanoreceptors to the brain”. Philosophical Transactions: Biological Sciences 366 (1581): 3016–3025. doi:10.1098/rstb.2011.0128. JSTOR 23035676. PMC 3172592. PMID 21969683. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3172592/. 
  2. ^ Catania, Kenneth C.; Hare, James F.; Campbell, Kevin L. (2008). “Water Shrews Detect Movement, Shape, and Smell to Find Prey Underwater”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105 (2): 571–576. Bibcode2008PNAS..105..571C. doi:10.1073/pnas.0709534104. JSTOR 25451131. PMC 2206577. PMID 18184804. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2206577/. 
  3. ^ Catania, Kenneth C.; Remple, Michael S. (2002). “Somatosensory Cortex Dominated by the Representation of Teeth in the Naked Mole-Rat Brain”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 99 (8): 5692–5697. Bibcode2002PNAS...99.5692C. doi:10.1073/pnas.072097999. JSTOR 3058556. PMC 122833. PMID 11943853. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC122833/. 
  4. ^ Leitch, Duncan B.; Catania, Kenneth C. (2012). “Structure, innervation and response properties of integumentary sensory organs in crocodilians”. Journal of Experimental Biology 215 (23): 4217–4230. doi:10.1242/jeb.076836. PMC 4074209. PMID 23136155. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4074209/. 
  5. ^ Catania, Kenneth C. (2012). “Evolution of brains and behavior for optimal foraging: A tale of two predators”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 109 (Supp. 1): 10701–10708. doi:10.1073/pnas.1201885109. JSTOR 41601658. PMC 3386870. PMID 22723352. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3386870/. 
  6. ^ Catania, Kenneth C. (2008). “Worm Grunting, Fiddling, and Charming—Humans Unknowingly Mimic a Predator to Harvest Bait”. PLOS ONE 3 (10): e3472. Bibcode2008PLoSO...3.3472C. doi:10.1371/journal.pone.0003472. PMC 2566961. PMID 18852902. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2566961/. 
  7. ^ Catania, Kenneth (2014). “The shocking predatory strike of the electric eel”. Science 346 (6214): 1231–1234. Bibcode2014Sci...346.1231C. doi:10.1126/science.1260807. PMID 25477462. 
  8. ^ 『カタニア先生は、キモい生きものに夢中!』p.12
  9. ^ Ibid. pp.32-34
  10. ^ Ibid. p.35
  11. ^ Ibid. p.56
  12. ^ Catania Lab”. Vanderbilt University. 2022年12月27日閲覧。
  13. ^ Latt, Elizabeth (2006年9月18日). “Vanderbilt neuroscientist Ken Catania receives MacArthur "genius grant"”. 2022年12月27日閲覧。
  14. ^ Pradel Research Award”. National Academy of Sciences. National Academy of Sciences, U.S.A.. 2022年12月27日閲覧。
  15. ^ Kenneth Catania”. John Simon Guggenheim Memorial Foundation. 2022年12月27日閲覧。
  16. ^ The Star-Nosed Mole Takes Adaptation To The Extreme”. Science Friday. Science Friday Initiative. 2022年12月27日閲覧。
  17. ^ 『カタニア先生は、キモい生きものに夢中!』第3章「スティング:詐欺師たちの美しき騙し」より
  18. ^ Kenneth Catania”. John Simon Guggenheim Memorial Foundation. 2022年12月27日閲覧。