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グルーブドタイヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
BMW Sauber F1に装着されたグルーブドタイヤ

グルーブドタイヤ (grooved tyre)とは、1998年から2008年までフォーミュラ1 (F1) で用いられていた、円周方向に4本[1]の平行な溝を持つタイヤ。grooveとは英語で「溝を掘る」の意味。

1997年グッドイヤー1社だったF1のタイヤ供給にブリヂストンが参入すると、「タイヤ戦争」と形容される開発競争によりタイヤ性能は著しく向上し、ラップタイムも短縮された[2][3][4]国際自動車連盟 (FIA) は車両速度を抑制し安全性を向上させるために1998年よりスリックタイヤに代わりグルーブドタイヤを導入した[2][3][4]。グルーブドタイヤは、トレッドの円周方向に溝を配することで接地面積を減らし、グリップ力を低減してコーナリング速度を低下させる[3][2][4]。溝は深さ2.5 mm、幅はトレッド表面で14 mm、50 mmの間隔を空けて前輪に3本、後輪に4本設けられた[5]。翌1999年にはなおも向上する車両性能に対応して前輪の溝を1本増やした[2][4]2009年、性能抑制を空力面の大幅な制限により行い、代わってオーバーテイクを容易にする目的でスリックタイヤは復活した[4]

ブリヂストンによる性能比較
スリック グルーブド
ブレーキング性能 100% 90%
コーナリングフォース 80%
摩耗ライフ 50%
(浜島裕英 2000, p. 57)

グルーブドタイヤの溝は複数の面でタイヤ性能を低下させた。

  • 接地面積減少によりグリップ力が低下した[6][7][8]
  • トレッドの見かけ剛性の低下により、アンダーステアの発生や、コーナリング中の挙動、操縦安定性に悪影響を及ぼした[6][7][8]
  • コーナリング中の接地圧分布が悪化し、溝のエッジ部分の負担が非常に大きくなり急速に摩耗する「メクレ摩耗」により、摩耗寿命が大幅に悪化した[9][10][8]

グルーブドタイヤの導入によってラップタイムをおよそ3秒低下させたと見込まれている[8]

脚注

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  1. ^ 1998年は前輪用は3本
  2. ^ a b c d ブリヂストン 2006, p. 33.
  3. ^ a b c 浜島裕英 2000, p. 56.
  4. ^ a b c d e 浜島裕英 2009, p. 74.
  5. ^ ブリヂストン 2006, pp. 33, 40.
  6. ^ a b 浜島裕英 2000, p. 57.
  7. ^ a b ブリヂストン 2006, p. 40.
  8. ^ a b c d 浜島裕英 2009, p. 78.
  9. ^ 浜島裕英 2000, pp. 56–57.
  10. ^ ブリヂストン 2006, pp. 39–40.

参考文献

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  • ブリヂストン 編「2.3 レース用タイヤ」『自動車用タイヤの基礎と実際』山海堂、2006年。ISBN 9784381088567 
  • 浜島裕英「レーシングタイヤの要求特性」『自動車技術』第54巻第2号、自動車技術会、2000年、53-57頁。 
  • 浜島裕英「モータースポーツ用タイヤの開発」『自動車技術』第63巻第10号、自動車技術会、2009年、73-78頁。 

外部リンク

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