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グリベンクラミド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
グリベンクラミド
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Diabeta, Flycron, others[1]
Drugs.com monograph
MedlinePlus a684058
ライセンス US FDA:リンク
胎児危険度分類
  • AU: C
  • US: B
法的規制
薬物動態データ
血漿タンパク結合Extensive
代謝Liver hydroxylation (CYP2C9-mediated)
半減期10 hours
排泄Kidney and biliary
データベースID
CAS番号
10238-21-8 チェック
ATCコード A10BB01 (WHO)
PubChem CID: 3488
IUPHAR/BPS英語版 2414
DrugBank DB01016 チェック
ChemSpider 3368 チェック
UNII SX6K58TVWC チェック
KEGG D00336  チェック
ChEBI CHEBI:5441 チェック
ChEMBL CHEMBL472 チェック
化学的データ
化学式C23H28ClN3O5S
分子量494.004 g/mol
物理的データ
融点169 - 170 °C (336 - 338 °F)
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グリベンクラミド (Glibenclamide)は、オイグルコンやダオニールとしても知られる、2型糖尿病の治療に用いられる医薬品である[1]。食事療法や運動療法との併用が勧められる[1]。他の抗糖尿病薬と併用されることがある[1]糖尿病1型に単独で使用することは推奨されない[1]。投与法は経口である[1]

一般的な副作用には、吐き気と胸焼けがあげられる[1]。重度の副作用には、血管性浮腫低血糖があげられる[1]。通常、妊娠中の人への投与は勧められないが、授乳中の人への投与は可能である[2]

グリベンクラミドはスルホニルウレアに属する医薬品であり、その作用機序は膵臓からのインスリンの分泌を増加させることにより効果がある[1]

グリベンクラミドは1969年に発見され、1984年に米国で医薬品として承認された[3][1]。日本では1971年3月に承認された[4]:30。2015年末時点でイタリア、ベルギーなど9カ国で承認されている[4]:33後発医薬品として入手可能である[2]。2019年時点での英国の国民保健サービスにかかる1か月分の費用は約3.20ポンドである[2]。米国での1か月分の卸値は約2.50米ドルである[5]

効能・効果

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インスリン非依存型糖尿病

警告

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重篤かつ遷延性の低血糖を起こすことがある[6]。低血糖のリスクは他のスルホニルウレアより高い[7]

禁忌

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下記の患者には禁忌である[6]

  • 重症ケトーシス
  • 糖尿病性昏睡又は前昏睡
  • インスリン依存型糖尿病
  • 重症感染症
  • 手術前後
  • 重篤な外傷
  • 重篤な肝機能障害
  • 重篤な腎機能障害
  • 下痢、嘔吐などの胃腸障害
  • 妊婦または妊娠している可能性のある女性
  • ボセンタン水和物を投与中の患者
  • スルホンアミド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者

副作用

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重大な副作用としては、低血糖(8.9%)、無顆粒球症、溶血性貧血、肝炎、肝機能障害、黄疸が挙げられる[6]

相互作用

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グリベンクラミドは主に肝代謝酵素CYP2C9及びCYP3A4により代謝されるので、同酵素を誘導または阻害する薬剤は其々血糖降下作用を減弱または増強するので、併用注意とされる[6]

作用機序

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グリベンクラミドは、膵臓のβ細胞において、ATP感受性カリウムチャネル(KATP)阻害制御サブユニットであるスルホニルウレア受容体1(SUR1)[8]に結合し、阻害することで作用する。この阻害作用により、細胞膜の脱分極が起こり、電位依存性カルシウムチャネルが開き、膵臓β細胞の細胞内カルシウムが増加し、その後、インスリン分泌が促進される。

脳虚血傷害により血液脳関門が破壊されると、グリベンクラミドが中枢神経系に到達できる。グリベンクラミドは、虚血した半球に効率的に結合することが示されている[9]。さらに、虚血状態では、KATP-およびNCCa-ATPチャネルの制御サブユニットであるSUR1が、神経細胞星状膠細胞希突起膠細胞内皮細胞[10]、反応性小膠細胞に発現している[9]

研究論文によると、このスルホニル尿素薬は肝機能にも影響を及ぼすという。それは、ミトコンドリアに存在する酵素カルニチンアシル基転移酵素I(CAT-I)を間接的に阻害することで作用する。これにより、長鎖脂肪酸がミトコンドリアに運ばれてβ酸化されるのが妨害され、高血糖症を防ぐことができる[11][12]。また、トルブタミンも同様の効果を有する。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j Glyburide Monograph for Professionals” (英語). Drugs.com. American Society of Health-System Pharmacists. 18 March 2019閲覧。
  2. ^ a b c British national formulary : BNF 76 (76 ed.). Pharmaceutical Press. (2018). pp. 692. ISBN 9780857113382 
  3. ^ Diabetes in Clinical Practice: Questions and Answers from Case Studies. John Wiley & Sons. (2007). p. 342. ISBN 9780470059135. https://books.google.ca/books?id=fs0M4dPuNtUC&pg=PA342 
  4. ^ a b オイグルコン錠1.25mg/オイグルコン錠2.5mg インタビューフォーム”. PMDA. 2021年6月6日閲覧。
  5. ^ NADAC as of 2019-02-27” (英語). Centers for Medicare and Medicaid Services. 3 March 2019閲覧。
  6. ^ a b c d オイグルコン錠1.25mg/オイグルコン錠2.5mg 添付文書”. www.info.pmda.go.jp. PMDA. 2021年6月6日閲覧。
  7. ^ Gangji, A. S.; Cukierman, T.; Gerstein, H. C.; Goldsmith, C. H.; Clase, C. M. (1 February 2007). “A Systematic Review and Meta-Analysis of Hypoglycemia and Cardiovascular Events: A comparison of glyburide with other secretagogues and with insulin”. Diabetes Care 30 (2): 389–394. doi:10.2337/dc06-1789. PMID 17259518. 
  8. ^ Serrano-Martín X, Payares G, Mendoza-León A (December 2006). "Glibenclamide, a blocker of K+(ATP) channels, shows antileishmanial activity in experimental murine cutaneous leishmaniasis". Antimicrob. Agents Chemother. 50 (12): 4214–6. doi:10.1128/AAC.00617-06. PMC 1693980. PMID 17015627
  9. ^ a b Ortega FJ, Gimeno-Bayon J, Espinosa-Parrilla JF, Carrasco JL, Batlle M, Pugliese M, Mahy N, Rodríguez MJ (May 2012). "ATP-dependent potassium channel blockade strengthens microglial neuroprotection after hypoxia-ischemia in rats". Exp. Neurol. 235 (1): 282–96. doi:10.1016/j.expneurol.2012.02.010. hdl:2445/34278. PMID 22387180. S2CID 4828181
  10. ^ Simard JM, Woo SK, Schwartzbauer GT, Gerzanich V (September 2012). "Sulfonylurea receptor 1 in central nervous system injury: a focused review". J. Cereb. Blood Flow Metab. 32 (9): 1699–717. doi:10.1038/jcbfm.2012.91. PMC 3434627. PMID 22714048
  11. ^ Chen, S.; Ogawa, A.; Ohneda, M.; Unger, R. H.; Foster, D. W.; McGarry, J. D. (July 1994). “More direct evidence for a malonyl-CoA-carnitine palmitoyltransferase I interaction as a key event in pancreatic beta-cell signaling”. Diabetes 43 (7): 878–883. doi:10.2337/diab.43.7.878. ISSN 0012-1797. PMID 8013751. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8013751/. 
  12. ^ Lehtihet, Mikael; Welsh, Nils; Berggren, Per-Olof; Cook, George A.; Sjoholm, Ake (August 2003). “Glibenclamide inhibits islet carnitine palmitoyltransferase 1 activity, leading to PKC-dependent insulin exocytosis”. American Journal of Physiology. Endocrinology and Metabolism 285 (2): E438–446. doi:10.1152/ajpendo.00057.2003. ISSN 0193-1849. PMID 12684219. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12684219/.