グスタフススコール
「グスタフススコール」(Gustafs skål、Gustaf's skoal)は、スウェーデンの王室歌であり、また、同国のカドリーユスタイルのフォークダンスである。
概要
[編集]元々は、カール・ミカエル・ベルマンによって作られた曲で[1]、「北方の獅子」と呼ばれたグスタフ2世アドルフの栄誉を讃える内容であり[2]時の国王グスタフ3世に贈られ、後に王室歌として採用された[3]。本来宮廷のダンスであったものが、庶民にまで広く伝わった、その典型例でもある[3]。踊りそのものはシンプルなカドリーユ形式で[4]前半の部分は華麗に、おごそかに[4]宮廷の貴族をイメージした[3]展開をするが、これは、ベルマンが、貴族であるいとこの行動にみられる、当時の上流社会的なマンネリズムを風刺したものといわれている[4]。後半は、楽しげな農民の踊りを表現している[3]。日本では小学校の体育の授業や運動会で踊られている[5]。
スコールは乾杯の意味だが、字義どおりには「椀」「鉢」の意味がある[3]。元々は、北欧で, 正式な場所での友情や親善のために行われる乾杯のことをさす。今は、スコールは世界のあちこちに広まっており、特に、北欧系の人々が多い地域では盛んである。skålはskoal、skal、skaalとも綴られる。
他の乾杯と同じように、スコールも幸運と健康のため、そして友情のために行われる。個人レベルの乾杯から、グループでの会食の時まで、様々なかたちでスコールが行われる。北欧の詩には、著名な人物をスコールで讃えたものがある。「グスタフススコール」もその一例で、18世紀に書かれたこの詩は、後に王室歌となった。スコールの対象となる人物が、高く評価されている例でもある。「北方の偉大なる王」という表現からもそれがうかがえる[6]。
歌詞
[編集]- 1. Gustafs skål!
- Den bäste Kung, som Norden äger:
- Han ej tål,
- At vigtskåln ojämt väger.
- God och glad,
- Han Ilskans röst föraktar
- Samt afvaktar
- Och betraktar
- Dårskap i sin grad.
- 2. Sådan Kung
- Är värd att styra Sveriges öden:
- Rask och ung,
- Ej rådlös uti nöden.
- Wasa Ätt
- Har aldrig lärt att svika,
- Aldrig tvika,
- Men at fika
- Till at göra rätt.
- 北方の偉大なる王
- グスタフに乾杯!
- 困難を乗り越えて
- 休むことのなかった王
- 礼儀正しく朗らかで
- 怒りを何よりも嫌い
- 時の流れの中の、愚かな出来事にも
- 冷静に構え
- そして学んだ
- グスタフは正に
- スウェーデンを治めるにふさわしい王
- 大胆で年若く
- この王にできぬことはない
- ヴァーサ家の君主よ
- 失敗を、ためらいを
- 恐れるなと教えられた
- でも彼のやり方は、より正しく
- そしてより公平であった
(英語訳より翻訳)[7]
踊り方
[編集]カドリーユ・フォーメーション(スクエア・フォーメーション)で、下記の要領で踊る。
- 挨拶
- 向かい合った同士の1組と3組は3歩前に進んで、4歩目に挨拶をして戻る。
- もうひとつの向かい合った同士、2組と4組が同じように挨拶をして戻る。
- もう1度1と2の動作を行う。
- アーチくぐり
- 1.2組と4組とがそれぞれ両手をつないでアーチを作る。1組と3組はスキップ4歩で前に進む。各組の2人は、自分が向かい合ったもう1つの組の相手と両手をつないで、自分たちに近い方のアーチを4歩でくぐり抜け、それぞれ元の位置に戻る。
- 全員1拍目に拍手をし、各組単位で両手を取って、時計回りに1回転する。
- 次に、1組と3組とがやはり手をつないでアーチを作り、2組と4組がスキップで進み、1-2を行う。
出典:[8]
英語の資料には、次のような踊り方も紹介されている。
- 挨拶1から3までの過程で“A toast we pledge to Gustaf who is brave and true”「勇敢な真の王グスタフ乾杯を」と歌う。
- 次にアーチくぐりの1で、タララ、ラ、ラ…と歌いながらアーチをくぐり、最後に「グスタフススコール」と歌う。
- アーチをくぐって戻るまでに、待機していた予備の人数が入り込んで、パートナーを「盗む」こともできる。
出典:[9]
脚注
[編集]- ^ Michael Bellman: Legacy, Selected Works, and a List of Books by author Carl Michael Bellman
- ^ Sweden
- ^ a b c d e Gustaf's skoal
- ^ a b c Gustafs Skål,GUSTAFS SKÅL c. 1997 by SMF
- ^ レトロなフォークダンス編(3)<コロムビアEP盤>
- ^ What is a Skaal?
- ^ SWEDISH LYRICS ENGLISH TRANSLATION
- ^ (社)日本フォークダンス連盟 『世界のフォークダンス 3 ブリティッシュ・アイルス、北欧編』 不昧堂出版、1974年、131頁。
- ^ Gustaf’s Skoal Swedish Quadrille