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クロス・アンド・ブラックウェル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クロス・アンド・ブラックウェル
Crosse & Blackwell
以前の社名
ウェスト・アンド・ワイアット[1]
種類
非公開会社 (1706–1960)
業種 食品
その後 ネスレにより買収
設立 1706年 (318年前) (1706)
本社
製品 調味料マーマレードミートソースミンスミート英語版マスタード酢漬け英語版
ブランド
所有者
ウェブサイト crosseandblackwell.com

クロス・アンド・ブラックウェル(Crosse & Blackwell、C&B)は、イギリスの食品ブランドである。1706年にロンドンで設立され、長らく独立の企業であったが、1960年にスイスコングロマリットであるネスレに買収された。現在は、アメリカのJ・M・スマッカー英語版などがこのブランドを所有している。

クロス・アンド・ブラックウェルのブランドで販売されている商品には、調味料マーマレードミートソースミンスミート英語版マスタード酢漬け英語版などがある。

日本ではカレー粉のメーカーとして知られているが、カレー粉はこの会社の数多い取扱い品目のひとつにすぎず、初めて販売したときの資料も会社に残っていないという[2]

歴史

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18・19世紀

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1706年に植民地の農産物を扱う「ジャクソンズ」(Jackson's)としてロンドンで設立され、後に「ウェスト・アンド・ワイアット」(West & Wyatt)となった。同社は酢漬け、ソース、調味料[3]、塩漬け魚を専門とし、イギリス国王ジョージ3世ジョージ4世ウィリアム4世の御用達となっていた[4]。1818年、ウェスト・アンド・ワイアット社はソーホーのキング・ストリート(現在のシャフツベリー・アベニュー)11番地に工場を建設し[5]、油漬け、果物の砂糖漬けなどを製造した[6]

1819年、ウェスト・アンド・ワイアット社に見習いとしてエドモンド・クロス(Edmund Crosse、1804-1862)とトーマス・ブラックウェル(Thomas Blackwell、1804-1879)が入社した。1830年、2人は家族から借りた600ポンドでウェスト・アンド・ワイアット社の事業を買収し、社名を「クロス・アンド・ブラックウェル」とした[4]。同社は、1837年に女王ヴィクトリアから王室認証(ロイヤル・ワラント)を受けた[7][8]

1867年頃のC&B社のピカリリ英語版のラベル[9]
C&B社のピクルスの広告。1870年〜1900年頃のものと思われる

1839年に事業を拡大し、オフィスと店舗をソーホー・スクエア英語版20-21番地に移転した[3][10]。その後の10年間で、著名なシェフとコラボレーションした商品を多く生み出した。例えば、1850年にはフランス出身のシェフ・アレクシス・ソイヤー英語版と協力して、ピリッとした味の「ソイヤーズ・ソース」「ソイヤーズ・レリッシュ」「ソイヤーズ・サルタナ・ソース」を開発した[6][7][8]。また、リー・アンド・ペリンズ英語版社が開発したウスターソースの総販売元でもあった[7]

C&B社はカレドニアン・ロード英語版に酢の醸造所を建設し、ソーホー・スクエアで酢漬けの製造を開始した。この工場は、ジャーナリスト・ヘンリー・メイヒュー英語版が1865年に出版した"The Shops and Companies of London, and the Trades and Manufactories of Great Britain"の中で、"Girls in Pickle"という文章で紹介されている[3]。また、1812年に設立されたバーモンジー英語版の小規模な缶詰会社ギャンブル社を買収し[11][12][13]、長距離航海のための果物、野菜、肉の缶詰を製造した[3]。1849年には、アイルランドコークにサーモンの缶詰を製造する工場を建設した[8]

19世紀後半、C&B社は、ソーホー・スクエアに近いチャーリング・クロス・ロード英語版にいくつかの建物を建設した。1875年から76年にかけて、チャリング・クロス・ロード111番地に建築家ロバート・ルイス・ルーミュー英語版の設計による2階建ての厩舎を発注した[8]。ルーミューが1877年に亡くなった後は、その息子のレジナルド・セントオービン・ルーミューの設計会社ルーミュー&アイチソンに設計を依頼し、チャーリング・クロス・ロードに倉庫を建設した[8]。1888年から1920年代まで、C&B社はチャーリング・クロス・ロード114-116にオフィスを構えていたが、これもルーミュー&アイチソンの設計によるものである[8]

1892年に有限責任会社(limited company)となった。

20世紀

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第一次世界大戦前、C&B社はヨーロッパ大陸に進出し、最初の工場をハンブルグに建設した[8]。第一次世界大戦後は、1919年にバーモンジーのソース・ピクルスメーカーのE・レーゼンビー社(E Lazenby & Son Ltd)を、1924年にはダンディーのマーマレードメーカーのジェームズ・ケイラー社英語版(James Keiller & Son Ltd)を買収した。ケイラー社はロンドン東部・シルバータウン英語版のテイ・ワーフに工場を構えており、テムズ川や鉄道網、ヘンリー・テート英語版の製糖所にも近かった[3]

その後、Cosmelli Packing Company、Robert Kellie & Son、Batzer & Co、Alexander Cairns & Sonsなどを買収した[8]。第一次世界大戦後、C&Bはさらに海外に工場を建設した。1930年までに、ボルチモアブリュッセルブエノスアイレスパリトロントに工場を進出させた[8]

郊外への移転

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1920年、C&B社はスタッフォードシャー州バートン・アポン・トレント英語版郊外のブランストン英語版の工場用地を612,856ポンドで購入した。ここに大英帝国最大となる食品工場を建設し[14]、ソーホーにあった工場・オフィスを引き払った。

1922年、同社は新工場で生産を開始したが、ブランストンの立地は不経済であることが判明し、生産拠点はバーモンジーのクリムスコット・ストリートにあるレーゼンビー社の敷地に移された[15]。ブランストンでの生産は1925年1月に終了したが、その結果、ブランストンでは大量の失業者が発生し、ブランストンの住民はC&B社製品の不買運動を行った[14]

バーモンジーの工場は1924年と1926年に拡張され、1969年まで使用された[15]

ケイラー

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同社の輸送トラック(1937年)

シルバータウンにあったケイラー社の工場は、1889年の火災で焼失し、翌年に再建された。そこで保存食、チョコレート、菓子類の製造を続けていたが、1940年9月7日のロンドン空襲で爆撃を受けた。チョコレートや製菓の製造はダンディー工場に移された。シルバータウンでは保存食の製造のみが再開されたが、1956年にこれもダンディー工場に移管された[3]

ネスレによる買収

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1960年、ネスレはC&B社を買収し[16]、そのブランドを同社の世界中の多くの食品カテゴリー製品に展開した。この買収により、ネスレは11の工場を手に入れた。その中には、イギリス最大の魚の缶詰工場(アバディーンシャー州ピーターヘッド)も含まれていた。買収当時、C&B社の従業員は、生産部門で4,700人、その他の従業員と営業担当者で1,900人だった。

C&Bのブランドは、後にプレミア・フーズ英語版社の傘下に入った。

21世紀

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プレミア・フーズ社は2002年にC&Bの事業を売却した。現在、クロス・アンド・ブラックウェル(C&B)ブランドの所有権は、北アメリカのJ・M・スマッカー英語版、ヨーロッパのプリンセス・グループ英語版南アフリカタイガー・ブランド英語版に分かれている。

脚注

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  1. ^ About us on C&B website
  2. ^ 森枝卓士『カレーライスと日本人』(講談社新書) 講談社、1989年7月 ISBN 4061489372
  3. ^ a b c d e f “Crosse & Blackwell Ltd, Factory Road, London E16”. GLIAS Notes & News (Greater London Industrial Archaeology Society). (June 1984). http://www.glias.org.uk/news/092news.html 12 September 2017閲覧。 
  4. ^ a b A Tinned History of Crosse & Blackwell (1706–1914)”. Let's Look Again (7 March 2016). 12 September 2017閲覧。
  5. ^ Johnstone, Andrew (1818). Johnstone's London Commercial Guide, and Street Directory. London: Barnard & Farleg. p. 280 
  6. ^ a b Cowen, Ruth (2010). Relish: The Extraordinary Life of Alexis Soyer, Victorian Celebrity Chef. Hachette. ISBN 9780297865575 
  7. ^ a b c Thousands of jars reveal Britain's saucy history”. The History Blog. 13 September 2017閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i Crosse & Blackwell”. Cook's Info. 18 September 2017閲覧。
  9. ^ Maxwell Alexander Robertson, English reports annotated, 1866-1900, Volume 1, Publisher: The Reports and Digest Syndicate, 1867. (page 567)
  10. ^ 'Soho Square Area: Portland Estate, No. 21 Soho Square', in Survey of London: Volumes 33 and 34, St Anne Soho, ed. F H W Sheppard (London, 1966), pp. 72-73. British History Online http://www.british-history.ac.uk/survey-london/vols33-4/pp72-73 [accessed 18 September 2017].
  11. ^ John Hall (of Dartford)”. Grace's Guide. 23 May 2017閲覧。
  12. ^ Greenland, Maureen; Day, Russ (2016). Bryan Donkin: The Very Civil Engineer, 1768-1855. England: Phillimore Book Publishing. ISBN 978-0-9934680-1-8 
  13. ^ Robertson, Gordon L. (2005). Food Packaging: Principles and Practice. CRC Press. pp. 123. ISBN 0-8493-3775-5 
  14. ^ a b Branston Depot History”. The local history of Burton upon Trent. 13 September 2017閲覧。
  15. ^ a b Crosse and Blackwell / E Lazenby & Sons”. Exploring Southwark. 12 September 2017閲覧。
  16. ^ Nestlé (1991)- 125 Years 1866-1991, Published by Nestlé SA, Vevey

関連項目

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外部リンク

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