コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

クライスラー・ビルディング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クライスラー・ビルから転送)
クライスラー・ビルディング
クライスラー・ビルディングの全景
地図
高さ記録
世界一高い建築物 (1930年5月27日から1931年4月30日まで)[I]
先代 40ウォールストリート
次代 エンパイア・ステート・ビルディング
概要
用途 オフィスビル
建築様式 アール・デコ
所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区レキシントン街405号
着工 1928年
完成 1930年
所有者 Abu Dhabi Investment Council (90パーセント)
Tishman Speyer (10パーセント)
高さ
最頂部 320メートル
屋上 282メートル
最上階 274メートル
技術的詳細
階数 77階[1]
床面積 11万1000平方メートル
エレベーター数 32
設計・建設
建築家 William Van Alen
クライスラー・ビルディング
クライスラー・ビルディングの位置(マンハッタン内)
クライスラー・ビルディング
Location in New York City
座標座標: 北緯40度45分6.12秒 西経73度58分31.08秒 / 北緯40.7517000度 西経73.9753000度 / 40.7517000; -73.9753000
建築様式アール・デコ
NRHP登録番号76001237
NYCL登録番号0992, 0996
指定・解除日
NRHP指定日1976年[4]
NHL指定日1976年12月8日[5]
NYCL指定日:1978年9月12日 (1978-09-12)[2][3]
脚注
[6]
テンプレートを表示

クライスラー・ビルディングChrysler Building)は、アメリカニューヨーク市マンハッタンタートル・ベイにある超高層ビル。その優美な姿はニューヨークの摩天楼のなかでも特徴的なものであり、アメリカ合衆国のシンボルの一つである。

概要

[編集]

クライスラー・ビルディングはレキシントン・アベニュー東42丁目の角(グランド・セントラル駅のすぐ東)に建つ。ウィリアム・ヴァン・アレン (en) がウォルター・クライスラーによる自動車メーカー・クライスラー本社ビル建設プロジェクトのために設計した[7]。頂部・壁面・内装にアール・デコの装飾が施されている。もともとは自動車メーカーのために建てられたことから、各所に自動車をモチーフとした装飾が施されている。完成した1930年から1950年代半ばまでクライスラー社の本社が所在していたが、建設費はすべてウォルター・クライスラー個人の資産で支払われた[8]

クライスラーの手から離れた後、ドイツの投資会社とアメリカの不動産会社、保険会社が所有した。2008年7月にアラブ首長国連邦ファンドが所有権の75パーセントを買収したが、 2019年にはオーストリアの不動産業者であるシグナ・ホールディングスとニューヨークの不動産開発業者RFRホールディングがジョイントベンチャーで買収した。さらに2023年11月にはシグナ・ホールディングスが破産したため、所有権はさらに移転することが見込まれている[9]

2007年度にアメリカ建築家協会より発表されたAmerica's Favorite Architecture(アメリカの人気建築物)では、第9位に選ばれている。このビルはアール・デコ建築の古典的代表作とみなされている。 18-8ステンレス鋼を最初に大量使用した建築物でもある。

ロビー

歴史

[編集]

クライスラー・ビルディングは高さ世界一の超高層ビルを目指して1928年9月19日に着工した。当時、ニューヨーク市内では高さ世界一を狙う超高層ビルの建設競争ブームの真っただ中であった[10][11]。この建設は特にウォール街ウォールタワー世界一の高さを競って、当時としては猛烈なピッチで進められた。平均して1週間で4階分の高さを増していくというペースにもかかわらず、この建設工事中に死亡した作業員はいなかった[12]。当初の計画では246メートルであったが[12][13]、ライバルのウォールタワーは高さ260メートルの計画で建設を進めていた。そこで、世界一を目指すウォルター・クライスラーの意向を受けて282メートルへと設計変更された[12]。しかしウォールタワーはさらに急遽計画を変更し、1930年4月に高さ283メートルで完成した。この時点ではいまだ竣工前の282メートルのクライスラー・ビルディングをわずかに上回り世界一のビルとなった。ところがウォールタワーの直前の設計変更を聞いていたクライスラー・ビルディングの設計者ウィリアム・ヴァン・アレンは、ウォルター・クライスラーの許可を得て、ビルの上に追加する38メートルの尖塔の製造を秘密裏に開始していた。この尖塔は4つのパーツに分けてビル内部で製造され、1929年10月23日に尖塔の底辺部分が一度ビルの上のドームに取り付けられ、すぐさまビルの66階の内部に戻された[14]

1930年5月20日に38メートルの尖塔を追加して319メートルとなり、クライスラー・ビルディングは完成した。5月27日にこのビルは一般に開業した。こうしてウォールタワーを上回り、世界一高いビルの座につくことができた。しかし、翌年の1931年エンパイア・ステート・ビルディングの完成により、世界一の座を明け渡すことになる。それでもアメリカの1920年代の繁栄の歴史を物語るニューヨークの摩天楼の中の傑作である(なおクライスラー・ビルディングは世界一の座こそ僅か1年で明け渡したが、世界2位の座はシカゴジョン・ハンコック・センターが出来るまで実に38年にもわたって維持している)。また尖塔の追加によりエッフェル塔の312.3メートルも抜き、ビル以外の建築物も含めて世界で一番の高さとなった(エッフェル塔は1957年のアンテナの追加により、現在はクライスラー・ビルディングよりも高い)。

ギャラリー

[編集]

関連項目

[編集]

登場する作品

脚注

[編集]
  1. ^ Nash, Eric Peter; McGrath, Norman (1999). Manhattan Skyscrapers. Princeton Architectural Press. p. 63. ISBN 9781568981819. https://books.google.co.jp/books?id=l3aAA2Di1YkC&pg=PA63&dq=Chrysler+building+number+of+stories&q=&redir_esc=y&hl=ja 
  2. ^ Chrysler Building”. ニューヨーク市歴史建造物保存委員会. 2020年8月14日閲覧。
  3. ^ Chrysler Building, Ground Floor Interior”. ニューヨーク市歴史建造物保存委員会. 2020年8月14日閲覧。
  4. ^ National Park Service (2 November 2013). "National Register Information System – Chrysler Building (#76001237)". National Register of Historic Places. National Park Service. 2020年8月14日閲覧
  5. ^ Chrysler Building”. National Historic Landmark summary listing. National Park Service. 2015年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月15日閲覧。
  6. ^ クライスラー・ビルディング - Emporis (英語)
  7. ^ 新建築社『NHK 夢の美術館 世界の名建築100選』新建築社、2008年、222頁。ISBN 978-4-7869-0219-2 
  8. ^ Pierpont, Claudia Roth (November 18, 2002). “The Silver Spire: How two men's dreams changed the skyline of New York”. The New Yorker. http://www.jayebee.com/discoveries/criticism/silver_spire.htm October 23, 2011閲覧。 
  9. ^ 経営破綻のシグナ、NYクライスラービル売却で交渉”. ロイター (2023年12月20日). 2024年2月5日閲覧。
  10. ^ Emporis GmbH. “Emporis Data "...a celebrated three-way race to become the tallest building in the world."”. Emporis.com. September 27, 2010閲覧。
  11. ^ The Manhattan Company – Skyscraper.org; "...'race' to erect the tallest tower in the world."”. Skyscraper.org. September 27, 2010閲覧。
  12. ^ a b c University of Wisconsin–Madison; School of Engineering – The Chrysler Building[リンク切れ]
  13. ^ Emporis GmbH. “– Chrysler Building”. Emporis.com. September 27, 2010閲覧。
  14. ^ Stravitz 2002, Pages xiii (Paragraph 10) and 161. Image caption no.39

外部リンク

[編集]
記録
先代
エッフェル塔
世界一高い建築物
1930 – 1931年
次代
エンパイアステートビル
先代
40 ウォール・ストリート
世界一高いビル
1930 – 1931年
アメリカ一高いビル
1930 – 1931年