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キュレネのヘゲシアス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

キュレネのヘゲシアス古希: Ἡγησίας fl. 紀元前290年[1])は、古代ギリシアヘレニズム期キュレネ派哲学者自殺を推奨する哲学を説き、「死を勧めし人[2]」「死の説得者[3]」(πεισιθάνατος ペイシタナトス)と呼ばれた。

学説・逸話

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著作は現存せず、学説や逸話が断片的に伝わる。

ディオゲネス・ラエルティオスギリシア哲学者列伝』によれば、キュレネ派の開祖アリスティッポスの学統に連なる人物として、「死を勧めし人」ヘゲシアスがいた[2]。ヘゲシアスの徒は、キュレネ派的な快楽主義や感覚懐疑に加え、以下の学説を掲げた。

  • 肉体の煩いや運命の妨害がある以上、幸福な人生(エウダイモニア)は不可能である。
  • 友情・感謝・親切といったものは、ただ役に立つだけの道具に過ぎない。(アリスティッポスが友情に価値を置いたのと対照的[4]。)
  • 生と死はどちらも望ましい。
  • 貧困と富裕、自由と隷属、名誉と屈辱、いずれも快苦とは無関係であるため、どちらでもいい。
  • 賢者は生に執着せず、自発的な利他もせず、他者を憎まず、過ちを許す。
  • 善いものを追究するより、悪いものを避ける人生を目指す。

キケロトゥスクルム荘対談集英語版』によれば、ヘゲシアスの著作に『絶食で自殺する』(古希: ἀποκαρτερῶν[5] アポカルテロン)があった[3]。その内容は、絶食自殺中の人が友人に人生の厄介事を枚挙し、読者を自殺に誘うというものだった[3]

キケロの同書やウァレリウス・マクシムス『有名言行録』によれば、ヘゲシアスの受講生の多くが実際に自殺したため、プトレマイオス2世により講義が禁止されたという[3][6]

関連項目

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脚注

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  1. ^ Dorandi, Tiziano (1999). “Chapter 2: Chronology”. In Algra, Keimpe. The Cambridge History of Hellenistic Philosophy. Cambridge: Cambridge University Press. p. 47. ISBN 9780521250283 
  2. ^ a b ディオゲネス・ラエルティオス著、加来彰俊訳『ギリシア哲学者列伝』上、岩波文庫、1984年。189;194ff頁(2.86;2.93-96)
  3. ^ a b c d キケロー 著、木村健治・岩谷智 訳『哲学V : トゥスクルム荘対談集』岩波書店〈キケロー選集〉、2002年。ISBN 9784000922623  67ff頁(1.83-84)
  4. ^ 三嶋輝夫 著「小ソクラテス学派」、内山勝利 編『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生 古代1』中央公論新社、2008年。ISBN 9784124035186 385-389頁。
  5. ^ A Dictionary of Greek and Roman biography and mythology, Habinnas, Hecataeus, Hege'sias”. www.perseus.tufts.edu. 2022年2月20日閲覧。
  6. ^ 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。ISBN 9784876989256 1096頁。

関連文献

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外部リンク

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