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キャスリーン・E・ウッディウィス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
キャスリーン・E・ウッディウィス
Kathleen E. Woodiwiss
1977年のウッディウィス
誕生 キャスリーン・エリン・ホッグ (Kathleen Erin Hogg)
(1939-06-03) 1939年6月3日
アメリカ合衆国の旗 ルイジアナ州アレクサンドリア
死没 (2007-07-06) 2007年7月6日(68歳没)
アメリカ合衆国の旗 ミネソタ州プリンストン英語版
職業 小説家
言語 英語
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
活動期間 1972年 - 2007年
ジャンル ロマンス
デビュー作 『炎と花』
配偶者 ロス・ユージーン・ウッディウィス(1956年 - 1996年【死別】)
子供 3
公式サイト www.kathleenewoodiwiss.com
ウィキポータル 文学
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キャスリーン・E・ウッディウィスKathleen E. Woodiwiss、旧姓:キャスリーン・エリン・ホッグ、1939年6月3日 - 2007年7月6日)は、アメリカ合衆国の作家。ロマンスのジャンルにおいては、1972年に上梓した『炎と花』(原題:The Flame and the Flower )で歴史ロマンスという新たなサブジャンルを誕生させたパイオニアとされる。

経歴

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初期

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1939年ルイジアナ州アレクサンドリアに、第一次世界大戦で負傷した退役軍人の父チャールズ・ウィングラヴ・ホッグ (Charles Wingrove Hogg) と母グラディス(Gladys、旧姓:コッカー)の間の8人兄弟の末っ子として生まれる[1]。子供のころから自分だけの物語を作ることが大好きで、6歳の頃には自分で作った物語を自分で語りながら眠っていた[2][3]。12歳の時に父が急死し、母が女手一つで姉妹を育てた。ウッディウィスは当時のことを「私たち1人1人が意志を持っていて、もちろん幼い私も例外なくそうだった。だから当時私が創作していた物語のヒロインが弱腰じゃないのはその時の反動かしらね。」と語っている[3]

16歳の時、ダンスパーティでアメリカ空軍少尉のロス・ユージン・ウッディウィス (Ross Eugene Woodiwiss) と出会い[2]、翌1956年7月20日に結婚した[1]1957年、通っていた地元の高校を卒業。軍人だった夫の仕事の都合で、日本に住んでいた時期があり、アメリカ人がやっていたエージェンシーでファッションモデルのアルバイトをした。日本で3年半過ごした後、カンザス州トピカへ、その後はミネソタ州へ定住した[1]。この間、何度か小説の執筆に挑戦したが、いずれも手書きでなかなか進まない執筆作業にフラストレーションがたまりやめてしまったという。夫がクリスマスプレゼントに電気タイプライターを買ってからは、すっかりひとり占めして真面目に小説を書き始めた[3]

作家としてのキャリア

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処女作『炎と花』(原題:The Flame and the Flower )は、600ページと長さに問題があったため、エージェントからも単行本の出版社からも断られた。却下となった理由やアドバイスが書かれた手紙を元に書き直し、ペーパーバックの出版社に送ったところ、エイヴォン社がすぐに買い手となった。編集者のナンシー・コフィーはウッドウィスに1500ドルを先払いし、50万部の印刷を決めた[2]。『炎と花』が画期的とされたのは、ヒロインが強く、リアルなセックスシーンがある歴史ロマンス作品だった点である。1972年に刊行された同作は最初の4年で230万部が売れ、以降は現代ロマンス作品でも主役を寝室に連れて行くシーンが雨後の筍のごとく増えていった[4][5][6]。『炎と花』の成功により、無力なヒロインと、ヒロインを助けたり、時には危機に陥らせるヒーローという女1人・男1人という関係性を描いた新しいスタイルがロマンスのジャンルに誕生した[7]。ウッディウィスに続けとばかりに、より長いプロット、より物議を醸すシチュエーションやキャラクター、より親密でホットなセックスシーンがある作品が多く作られた[8]

作家仲間のラヴィル・スペンサー英語版は、ウッディウィスの作品に衝撃を受けたという。まだ出版社との契約ができていなかったスペンサーは、原稿をウッディウィスに送り、受け取ったウッディウィスはエイヴォンの編集者にそれを送った。編集者はその作品"The Fulfillment" を買い取り、それがスペンサーの作家としてのキャリアの始まりとなった[9]。更に、多くの現代ロマンス作家たちもウッディウィスをインスピレーションとした。ジュリア・クインは「ウッディウィスは西部劇やハードボイルドな刑事ものの代わりに女性たちが夢中になれるものを書いてくれた。私が子供のころ、母も祖母もロマンス小説をよく読んでいたわ。今は自分がそういう年頃なって、同じようにロマンス小説を読む女性たちに特別な親近感のようなものを感じるようになっているわ」と述べている[8][10]

ウッディウィスの作品の内、ベストセラーとなった12冊だけで発行部数は3600万部に上る[1]。量より質を重視したため、1冊書き上げるのに4, 5年かけていた。ある時には、自身の体調の問題も重なって出版に遅れが出たこともあった。燃え尽き症候群に苦しみ、書くことへの興味を失ってしまい、取り戻すのに休息が必要だったと告白している[3]

作品は全て歴史ロマンスものだが、歴史背景は南北戦争18世紀ウィリアム1世時代のイングランドザクセンなど様々である[2]。ウッディウィスの描くヒロインは「活気があり決断力のある」強い意志を持った若い女性である[3]。ウッディウィス自身は作品を「読者が現実逃避するためのおとぎ話で、エロール・フリンの映画のようなもの」と語っていた[2]

世間の反応

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ローラ・キンセイル英語版"Dangerous Men and Adventurous Women" に掲載された自身のエッセイ"The Androgynous Reader" の中で、「『シャナ』のヒロインは平均的な一般の読者がヒロインと自分を同一視していないことの証明だけれど、むしろヒーローといるヒロインを自分に置き換えているんじゃないかしら。‘シャナは愚かで間違った方向に行ってしまうヒロインより想像しやすいでしょう?愚かで言いなりになるだけだったり、うんざりするほど独立心のあるヒロインを読者が憧れたりしたらフェミニストは心配してしまうだろうけれど、そんな必要はないわ。」と述べていた[11]

私生活

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乗馬が大好きで、ミネソタに55エーカー(約22万㎡)の広大な土地で暮らしていたこともある。1996年に夫が亡くなると、生まれ故郷のルイジアナに戻ったが、2007年にミネソタ州プリンストンの病院でで死去、68歳だった[12]

生前は、2人の息子ショーンとヒースとその妻たち、たくさんの孫に囲まれた生活だった。3人目の息子ドレンはウッディウィスより先に亡くなった[1]。最後の作品『終わりなき愛』(原題:Everlasting )は2007年10月30日に刊行された。

作品リスト

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バーミンガム家サーガ (Birmingham Family Saga)
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
炎と花 The Flame and the Flower 1972年 1986年03月 古田和与 サンリオ
2005年09月 野口百合子 ヴィレッジブックス 再刊
巡り逢うまで The Kiss 1995年 2015年03月 坂本あおい 竹書房 "Three Weddings and a Kiss" 収録
『花嫁になるための4つの恋物語』収録
Beyond the Kiss 1996年 "Married At Midnight" 収録
季節巡りて A Season Beyond a Kiss 2000年 2017年08月 琴葉かいら ハーパーコリンズ・ジャパン
まなざしは緑の炎のごとく The Elusive Flame 1998年 2008年01月 野口百合子 ヴィレッジブックス
その他
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
狼と鳩 Wolf and the Dove 1974年 1985年03月 上木治子 サンリオ
2008年10月 橘明美 ソフトバンククリエイティブ 再刊
シャナ Shanna 1977年 1984年08月 沢万里子 サンリオ
2010年02月 ソフトバンククリエイティブ 再刊
風に舞う灰 Ashes in the Wind 1979年 1986年01月 大谷真理子 サンリオ
冬のバラ A Rose in Winter 1981年 1983年12月 藤真沙
2009年02月 野口百合子 ソフトバンククリエイティブ 再刊
緑の瞳 Come Love a Stranger 1984年 1989年12月 吉浦澄子 サンリオ
So Worthy My Love 1989年
Forever in Your Embrace 1992年
川面に揺れる花 Petals on the River 1997年 2010年06月 橘明美 ソフトバンククリエイティブ
The Reluctant Suitor 2002年
終わりなき愛 Everlasting 2007年 2009年08月 橘明美 ソフトバンククリエイティブ

出典

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  1. ^ a b c d e Kathleen E. Woodiwiss”. Strike Funeral Homes (2007年7月7日). 2007年7月9日閲覧。
  2. ^ a b c d e Giovanna Breu (1983-02-07), “Romance Writer Kathleen Woodiwiss was Passionate about Horses - And Happy Endings”, ピープル, http://www.kathleenewoodiwiss.com/time/items/rose_winter07.asp 2007年5月28日閲覧。 
  3. ^ a b c d e Angela Weiss (2000年10月). “Interview with Kathleen E. Woodiwiss”. Bertelsmann Club. 2007年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年5月28日閲覧。
  4. ^ Mark Athitakis (2001-07-25), “A Romance Glossary”, SF Weekly, http://www.sfweekly.com/2001-07-25/news/a-romance-glossary/ 2007年4月23日閲覧。 
  5. ^ Alexander Zaitchik (2003-07-22), “The Romance Writers of America convention is just super”, ニューヨーク・プレス, http://www.nypress.com/16/30/news&columns/feature.cfm 2007年4月30日閲覧。 
  6. ^ Brad Darrach (1977-01-17), “Rosemary's Babies”, Time Magazine, http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,918604,00.html 2007年5月28日閲覧。 
  7. ^ Pamela White (2002-08-15), “Romancing Society”, Boulder Weekly, http://www.boulderweekly.com/archive/081502/coverstory.html 2007年4月23日閲覧。 
  8. ^ a b Jessica Dukes. “Kathleen E. Woodiwiss”. Meet the Writers. Barnes and Noble. 2007年5月28日閲覧。
  9. ^ Carol Thurston (1987). The Romance Revolution. Urbana and Chicago: イリノイ大学出版局. pp. 178–179. ISBN 0-252-01442-1 
  10. ^ Love Notes”. Avon Books (1997年11月). 2007年5月28日閲覧。
  11. ^ ジェイン・アン・クレンツ(編) (1992). “The Androgynous Reader”. Dangerous Men and Adventurous Women: Romance Writers on the Appeal of the Romance. アメリカ合衆国: ペンシルベニア大学出版局. pp. 32. ISBN 0812214110 
  12. ^ Kathleen E. Woodiwiss”. Author Biographies. ハーパー・コリンズ. 2007年7月10日閲覧。

外部リンク

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