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カンテヨジャヤー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カンテヨジャーヤーから転送)

カンテヨジャヤー[1]』(Cantéyodjayâ)は、オリヴィエ・メシアンが1949年[注 1]に作曲したピアノ曲。演奏時間は約12分。

題名はサンスクリット風の響きをもつメシアンによる造語である[2]。日本語タイトルは「カンテヨジャーヤ」「カンテヨジャーヤー」「カンテヨージャーヤー」などさまざまに記される[注 2]

概要

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アメリカ合衆国タングルウッドを訪問した1949年7-8月に作曲された[3]

メシアンが実験的な作風を取っていた時期(1949-1952年)のはじまりをなす。ほぼ同時期に書かれた『4つのリズム・エチュード』の第2曲「音価と強弱のモード」(ヒル & シメオネ 2020, p. 226は1949年初秋に完成と推測)と同様に音価・強弱・アタックを組織化しており、その響きもよく似ている[3]

ハラウィ』、『トゥランガリーラ交響曲』、『5つのルシャン』の素材を使用しているが、その一方で音価のモードも使用している[4][5]。初期メシアンの中心的音楽原理であった「移調の限られた旋法」は最後の2小節以外ほとんど出てこない[6]

メシアン本人は『カンテヨジャヤー』をあまり評価せず、自分で演奏したことはなかったし、出版は1953年になってからだった。1954年2月23日にパリのマリニー小劇場 (Théâtre Marignyで行われたドメーヌ・ミュジカルの演奏会において、イヴォンヌ・ロリオによってようやく初演された[7]

構造

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曲は3つの部分から構成され、第1と第2の部分はくり返されるルフランとその間に挿入されるクープレから構成される[8]。しかし、とくに第2の部分は伝統的なロンド形式とは異なっている[9]

第1の部分は「カンテヨジャヤー」と名付けられた特徴的な音型が6回くり返され、その間に5種類の異なるクープレが挿入される比較的単純な構造を持つ。5番目のクープレは「音価・音高・強弱のモード」と名付けられている。最後に「アルバ」(alba)[注 3]と呼ばれる4番目のクープレが短く再現する。

第2の部分はより複雑な構造をもち、3つのルフラン(楽譜上はそれぞれdoubléafloréalîla, mousikâ, trianguillonouarkîと呼ばれている)とカデンツァのような複雑長大な3つのクープレから構成される。まず3つのルフランが全部演奏される。第1のクープレはインドのリズムにもとづく部分と、音価の半音階(右手はだんだん遅くなり、左手は速くなる)からなる。ついで第1のルフランが再現する。第2のクープレもやはりインドのリズムとその逆行、音価の半音階からなる。第2のルフランがごく短く再現した後に第3のクープレになるが、この部分では4つの音(音価・音高の組み合わせ)の置換や逆行不能リズム(中央部分が徐々に拡大する)が使われている[8]。第3のクープレが大いに盛りあがったところで第1のルフランがフォルテッシモで再現する。第1の部分の第3クープレが現れた後、第3のルフランが再現する。

第3の部分は短いコーダで、第1の部分からカンテヨジャヤーとアルバが再現して終わる。

脚注

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注釈

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  1. ^ メシアンは1948年としているが、ヒル & シメオネ 2020, p. 226によるとこれは記憶違いによる。
  2. ^ メシアンが通常サンスクリットの長母音ā ī ūâ î ûと記していること(たとえば Turangalîla トゥランガリーラ )を考慮すると「カンテヨジャヤー」が適当と考えられる。なお、サンスクリットのe oは常に長いが、この語はサンスクリット風の人造語であって前半はサンスクリットではない。
  3. ^ プロヴァンスの抒情詩のジャンルで、『5つのルシャン』でも用いられている[3]

出典

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  1. ^ ヒル & シメオネ 2020, p. 224.
  2. ^ Healey 2007, p. 59.
  3. ^ a b c ヒル & シメオネ 2020, p. 226.
  4. ^ ヒル & シメオネ 2020, pp. 237–238.
  5. ^ Healey 2007, pp. 60–63.
  6. ^ Healey 2007, p. 65.
  7. ^ ヒル & シメオネ 2020, p. 238.
  8. ^ a b 永井 1981, p. 337.
  9. ^ Healey 2007, p. 70.

参考文献

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  • ピーター・ヒル、ナイジェル・シメオネ 著、藤田茂 訳『伝記 オリヴィエ・メシアン(上)音楽に生きた信仰者』音楽之友社、2020年。ISBN 9784276226012 
  • 永井雪子「カンテヨジャーヤー」『最新名曲解説全集』 17巻、音楽之友社、1981年、335-337頁。ISBN 4276010179 
  • Healey, Gareth (2007). “Messiaen's "Cantéyodjayâ": A 'Missing' Link”. The Musical Times 148 (1898): 59-72. JSTOR 25434442. 

外部リンク

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