コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

カズベギ地区

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カズベギ基礎自治体から転送)
カズベギ地区

ყაზბეგის მუნიციპალიტეტი
カズベギ地区
カズベギ地区
カズベギ地区の旗
カズベギ地区の紋章
印章
ジョージア (国)の旗 ジョージア
ムツヘタ=ムティアネティ州
面積
 • 合計 1,081.7 km2
人口
(2014)[1]
 • 合計 3,795人
 • 密度 3.5人/km2
等時帯 UTC+4 (GET)
ウェブサイト kazbegi.gov.ge ウィキデータを編集
地図カズベギ地区の位置

カズベギ地区は、ジョージア東部のムツヘタ=ムティアネティ州にある地区。中心地はステパンツミンダグルジア語版。ジョージアの地理的・歴史的な地域であるヘヴィグルジア語版地方とほぼ一致する領域である。

歴史

[編集]

カズベギ地区は地理的・歴史的にヘヴィグルジア語版と呼ばれる地域であった。ヘヴィはロシア帝国がジョージアを併合後ドゥシェティ郡ロシア語版の一部となり、1930年にカズベギ地区が設置された。1932年の調査ではカズベギ地区には6つの村が属していた。カズベギ地区では1938年から地元紙『アハリ・ヘヴィ』が発行されている。

グルジアSSR時代の1950年に、カズベギ地区の区域が拡大した。

1944年3月7日、ソビエト連邦最高会議幹部会チェチェン・イングーシASSRの解体と、解体後の領土についての扱いを定めた政令を公布した。チェチェン・イングーシASSRが解体となった理由は、社会主義祖国への裏切りとドイツファシストに対する援助、そしてソビエト連邦政府ロシア語版に対する妨害行為によるものであった。

政令の第1章ではチェチェン・イングーシASSRの廃止と住民の再居住に関する事項が規定され、第2章ではグロズヌイ州ロシア語版の創設が定められた。第3章と第4章ではチェチェン・イングーシASSRの領土を北オセチアASSRダゲスタンASSRで分割することが定められ、そして第5章では次の通り述べられた。

……以下の地区はグルジアSSRに含めることとする:旧チェチェン・イングーシASSRのうち、既存の国境部を有するイトゥム=カレ地区ロシア語版及びシャロイ地区ロシア語版西部、並びに北オセチアASSRのガランチョシュ地区ロシア語版南部、ガラシキ地区ロシア語版及びプリゴロドニ地区ロシア語版、そしてギゼルドン地区ロシア語版南東部

通常、ソビエト連邦最高会議幹部会による政令は新聞等では報道されないが、この政令も同様に新聞等で報道されることはなかった。

1944年3月21日、グルジアSSR最高会議幹部会は、ソビエト連邦最高会議幹部会が指定した前述の地域をジョージアに併合する旨の議長令を採択した。その決議の第1項によると、イトゥム=カレ地区、シャロイ地区西部、ガランチョシュ地区南部、ガラシキ地区、プリゴロドニ地区、そして北オセチアASSRのギゼルドン地区南東部がジョージアに含まれることとなった。決議の第3項ではジョージアとロシアSFSRの間の新しい境界線を定義し、詳細な説明が述べられた。第4項では「イトゥム=カレ地区の中心地イトゥム=カレは、『アハルヘヴィ』に改名する」と定められた。

またソビエト連邦最高会議幹部会による同政令にて、北オセチアASSRのギゼルドン地区南部及びチェチェン・イングーシASSRのプリゴロドニ地区が、グルジアSSRのカズベギ地区に組み込まれた。

議長令
グルジアSSR最高会議幹部会

グルジア・ソビエト社会主義共和国のカズベギ地区における村の設立、分割、廃止及び名称の変更
グルジア・ソビエト社会主義共和国のカズベギ地区に対する新たな領土の編入について。
  1. カズベギ地区の新しい区域には、次の村ソビエトを設立する。
    1. ダリアリサ
    2. アハルソプリサ
    3. ラルシサ
  2. 村の密度及び数の多さを踏まえ、アルシ村ソビエトは2つの村ソビエトに分割する。
    1. シオニサ⸺シオニ村を中心地とし、次の村で構成する:シオニ、アルシャガルバニグルジア語版アチホティヴァルディスバニグルジア語版トティグルジア語版ガイボテニグルジア語版アンデジティグルジア語版
    2. ゴロスツィヒサ⸺ゴリスツィヘグルジア語版村を中心地とし、次の村で構成する:ゴリスツィヘ、プヘルシェグルジア語版ツカルシェティグルジア語版カノビグルジア語版フルティシグルジア語版
  3. 人口の大部分を他の村に移転するため、グダウリ村ソビエトを廃止する。残った村はコビ村ソビエトに編入する。
  4. 次の村の名前を変更する。
    1. ダリアリ村ソビエト:
      • ジャリアフ⸺ダリアリ(村ソビエトの中心地)
      • ポルタウフ⸺タマリアニ
      • パメツ⸺ガナフレバ
      • ゼモ・オズマ⸺シロマ
      • クヴェモ・オズマ⸺テルグラ
      • ベイナフ⸺ムツィスジリ
    2. アハル村ソビエト:
      • ハムヒ⸺アハルソペリ(村ソビエトの中心地)
    3. ラルシ村ソビエト:
      • ズヴェル・ラルス⸺ラルシ(村ソビエトの中心地)
    4. クロルツ・アルムヒ⸺クロルティ・ダリアリ
グルジアSSR最高会議幹部会議長G・ストゥルア、グルジアSSR最高会議幹部会書記V・エグタナシヴィリロシア語版。1944年7月3日、トビリシ市

カズベギ地区には1970年まで、5つの村ソビエトが設置されていた。

2005年12月16日、ジョージア大統領ミヘイル・サアカシヴィリは大統領令第2304号を公布した。この大統領令に基づきジョージアの地区の再編が行われた。地区は地方自治の最小単位となり、呼称はムニツィパリテティ(グルジア語: მუნიციპალიტეტი、「自治体」を意味する)に変更された[2]。公法人「カズベギ地区」(識別番号241499473)は2006年12月14日に登記、2014年9月26日に納税者登録した[3]

地理

[編集]

カズベギ地区は、南東をドゥシェティ地区英語版、南をアハルゴリ地区英語版、西をジャヴァ地区英語版、北をロシア連邦と接している。地区の面積は1,081.7平方キロメートルである[4][5]

地区はすべて山岳地帯であり、標高は1,700メートルから5,000メートルに及ぶ。標高が比較的低い1,700メートル台の地域は、適度な湿度がある。冬は寒く乾燥し、夏は冷涼である。年間平均気温は摂氏4.9度、年間平均降水量は800ミリメートルである。標高1,800メートルから2,000メートルの地域では年間平均気温が摂氏3.5度まで下がり、年間平均降水量は1,160ミリメートルに達する。標高3,600メートルよりも高い地域では、広い範囲が恒雪帯となっている[4]。 カズベギ地区は水路網が充実している。地区内には河川、湖沼、氷河、鉱泉が豊富にある。最大の河川はテルギ川で、カズベギ地区内での延長は85キロメートルに達する。このテルギ側の水源はホフ尾根グルジア語版の氷河である。カズベギ地区は多数の湖沼があり、ケリツァディ湖グルジア語版アルチヴェビ湖グルジア語版などが有名である。氷河は地区内の広範囲に存在する。最大の氷河はカズベク山の氷河であり、面積は約80平方キロメートルに及ぶ。カズベク山の有名な氷河としてはゲルゲティ氷河グルジア語版デヴダラキ氷河グルジア語版が挙げられる[4]

カズベギ地区で発生する自然災害は、主に雪崩土石流洪水、河岸侵食である。地すべりはあまり多く発生しない。作業部会の調査では、洪水は主に河川上流域で発生し、牧草地に被害を与えている。カルクチャ村は大部分が洪水域となっている[4]

地形

[編集]
ステパンツミンダグルジア語版

カズベギ地区は山岳地帯である。岩が多い地形で、アクセスはあまり良くない。侵食地形、火山地形、そして長い時間をかけて形成された氷河地形が広がっている。カルスト地形も散在している。

カズベギ地区はヘヴィ・コーカサスグルジア語版の主稜線の北側に沿って広がり、テルギ川の上流域となっている。洪積層と火山噴出物層が主な地層となっている。ヘヴィ・コーカサスにはエスコミ山グルジア語版(3,572メートル)、サゼレ山グルジア語版(3,307メートル)、クヴェナムタ山(3,152メートル)、カバルジナ山グルジア語版(3,141メートル)といった峰がある。最も重要な峠として、ジョージア軍道十字架峠(2,379メートル)がある。

ヘヴィ・コーカサスの支尾根は、シャヴァナ尾根グルジア語版を中心としてクロ尾根グルジア語版キデガン尾根グルジア語版がある。また細かい支尾根にホフ尾根グルジア語版がある。

シャヴァナ尾根
シャヴァナ尾根グルジア語版東コーカサスロシア語版の北側の支尾根である。テルギ川の右支流の水源となっており、黒海カスピ海分水嶺となっている。シャヴァナ尾根で最も標高の高い地域(シャン山塊)は複雑な地形が特徴となっており、起伏に富んだ山容として表れている。シャヴァナ尾根のほとんどの峰は険しく岩が多い地形であり、到達困難である。最高峰はシャニ山英語版(4,451メートル)がある。その他の峰としてはアカキ・ツェレテリ峰グルジア語版(3,780メートル)、イリア・チャヴチャヴァゼ峰グルジア語版(3,800メートル)、ルスタヴィ峰グルジア語版(3,900メートル)などがある。シャヴァナ尾根には小規模な氷河があり、モレーンの地形も見られる。
クロ尾根
クロ尾根グルジア語版はヘヴィ・コーカサスの北側の支尾根であり、テルグ川とフデ川グルジア語版の間にある。クロ尾根の最高峰はクロ山グルジア語版(4,091メートル)。尾根にある峰のうち特徴的なものとして、雪に覆われたピラミッド形のシノ山グルジア語版(4,048メートル)が挙げられる。稜線は氷河によって浸食された地形が多く見られ、小さな氷河も散在している。クロ尾根は後期ジュラ紀の粘土で形成されており、結晶を含む石英脈が見られる。
キデガン尾根
キデガン尾根グルジア語版は、トゥシェティ=ヘヴスレティ・コーカサス()の北側の支尾根である。サゼリスゲレ峠で主尾根から分岐し、北に伸び、イングーシに続く。全長375キロメートルの岩稜で、ケスタ地形が特徴である。キデガニスマガリ山グルジア語版(4,275メートル)、ヴァザ・プシャヴェラ峰グルジア語版(4,200メートル)、グヴェリスムタ山グルジア語版(3,970メートル)、サアムゴスマガリ山グルジア語版(3,884メートル)、テテリス=マガリ山グルジア語版(3,755メートル)といった峰がある。氷河も流れており、キデガン氷河が中心となっている。

シャヴァナ尾根、クロ尾根、キデガン尾根によって、一つの山群が形成されている。

カズベク山
ホフ尾根
ホフ尾根グルジア語版はコーカサスの北側の尾根であり、トルソ尾根を介して主コーカサス山脈英語版と繋がっている。ジョージア東部で最も大きな氷河を有する。ジョージア東部の最高峰カズベク山(5,047メートル)があり、氷河地形が特徴である。カズベク山は円錐形の成層火山であり、死火山と考えられている。近年はこの地域で温暖化が進み、氷河の面積が減少している。ホフ尾根にはマイリ山グルジア語版(4,506メートル)、ジマラ山グルジア語版(4,780メートル)、スアティシ山グルジア語版(4,466メートル)、チャタ山(4,099メートル)、オルツヴェリ山グルジア語版(4,222メートル)、ツィティホヒ山グルジア語版(3,905メートル)、シヴェラウティ山グルジア語版(3,767メートル)、シルヒサリ山グルジア語版(3,662メートル)といった峰がある。
ホフ尾根にはマイリ峠グルジア語版(4,400メートル)がある。ジョージアとロシアを結ぶ重要な峠で、ジョージア国内で最も標高が高い峠の一つである。
ホフ尾根の尾根筋は閃緑岩および輝緑岩で構成されており、尾根の裾野はジュラ紀地層となっている。ホフ尾根の支尾根の一つにオルツヴェリ尾根wikidataがあり、オルツヴェリ尾根にはシャヴナバダ山グルジア語版(3,683メートル)がそびえている。
ホフ尾根の東端にはカズベク山がある。バルトコルティ尾根グルジア語版アルチコルティ尾根グルジア語版といった支尾根があり、支尾根の尾根沿いには小さな峰がいくつも存在する。ツカルシェティ山グルジア語版(3,360メートル)はカズベク山の東斜面に位置しており、火山構造となっている。ツカルシェティ山から流れ出た火砕流がテルギ川の渓谷を堰き止め、後に川の流れが火砕流地形を侵食したことでツカルシェティ峡谷が形成された。カズベク山の地層は、ほとんどが火山性である。
ダリアリ渓谷グルジア語版

カズベギ地区では、テルギ川の渓谷の一つであるカスリス渓谷グルジア語版も特筆に値する。狭隘な渓谷であり、露出した岩が多い。岩壁はホリサリ山グルジア語版から流出した全長8キロメートルの溶岩流がもとになって形成された。カスリス渓谷は全長2キロメートルから3キロメートルにわたって続いている。

テルギ川には、カズベギ地区内にダリアリ渓谷グルジア語版ツルソ渓谷グルジア語版という2つの渓谷がある。ダリアリ渓谷はテルギ渓谷の上流部分であり、渓谷の深さは1,000メートルに及ぶ。ダリアリ渓谷には古原生代および古生代の結晶質頁岩花崗岩類が露出し、渓谷東部にはジュラ紀の粘土も見られる。ツルソ渓谷は大コーカサス山脈の主尾根とホフ尾根グルジア語版の間に位置する。渓谷はツルソ峠グルジア語版から始まり、東経44度30分まで続く。全長は25キロメートルである。標高は最も低い部分で2,000メートルである。ツルソ渓谷はジュラ紀頁岩砂岩褶曲地層となっている。

内水

[編集]

カズベギ地区内は水路網が充実しており、河川、湖沼、氷河、鉱泉が豊富にある。テルギ川以外の河川は、流路が短く速い流れと透明な水質が特徴である。いくつかの河川には上流に美しい滝がある。湖沼は氷河の作用によって形成されたもの(氷河湖)や火山の活動によって形成されたもの(火山湖)が多く、面積の小ささと水深の深さが特徴である。鉱泉も豊富で、河川は流量が多い。

テルギ川

最大の川はテルギ川で、カズベギ地区内の延長は85キロメートルに達する。テルギ側はカズベク山があるホフ尾根グルジア語版の氷河を水源とし、ロシア連邦を通過してカスピ海に注ぐ(ロシア語ではテレク川と呼ぶ)。水源から河口までの延長は623キロメートル、流域面積は43,200平方キロメートルである。年間平均流量は9.6立方キロメートル。カズベギ地区内における、テルギ川の主な支流は次の通りである。

右支流
アマリ川グルジア語版デヴダラキ川グルジア語版テピドニ川グルジア語版チヘリ川グルジア語版チハティ川グルジア語版スアティシ川グルジア語版ムナイシスツカリ川グルジア語版ケシア川グルジア語版レシスツカリ川グルジア語版カバヒ川グルジア語版ジマリスツカリ川グルジア語版
左支流
エシコミ川グルジア語版アルムヒ川グルジア語版アルハドニ川グルジア語版ビダラ川グルジア語版デシコミドニ川グルジア語版フディスツカリ川グルジア語版スノスツカリ川

これらの河川のうち、物理的および地理的に最も重要なものとしてスノスツカリ川、フディスツカリ川、チヘリ川が挙げられる。スノスツカリ川ヘヴィ・コーカサス山脈グルジア語版の北斜面に端を発する。源流はジュティスツカリ川(延長13キロメートル)とクヴェナムティスツカリ川(延長4キロメートル)である。スノスツカリ川と2つの支流の総延長はおよそ45キロメートルである。スノスツカリ川の標高はスノ村付近で1,760メートル、アハルツィヘ付近で1,800メートルである。スノスツカリ川の支流にはシノスツカリグルジア語版アルツフモスツカリ川も挙げられる。フディスツカリ川グルジア語版(延長19キロメートル)は、源流がキビシ氷河グルジア語版にある。チヘリ川グルジア語版(延長10キロメートル)は、標高3,565メートルのシャヴナバダ山グルジア語版の山頂斜面にあるオルツヴェリ尾根グルジア語版に源流がある。ムティウレティ・アラグヴィ川グルジア語版もカズベギ地区内を流れている。

カズベギ地区には湖沼も多く、標高の高い場所に位置している。ケリツァディ湖グルジア語版はカズベギ地区最大の湖である。火山湖であり、水深は13.9メートルある。ケリ高地グルジア語版に位置する標高3,078メートルのアルチヴェビ湖グルジア語版も特筆に値する。アラグヴィスタヴィ川オセット語版にある3つの湖も注目である。そのうち最大の湖は下アラグヴィスタヴィ湖グルジア語版(面積0.07平方キロメートル、最大水深4.5メートル)である。

氷河はカズベギ地区の広い範囲に存在している。最大の氷河はカズベク山山塊(面積およそ80平方キロメートル)である。カズベク山から多数の氷河が流れており、代表的なものにゲルゲティ氷河グルジア語版デヴダラキ氷河グルジア語版がある。ゲルゲティ氷河グルジア語版はカズベク山の南東斜面に位置している懸谷である。延長は7キロメートルを超える。面積は変化が激しく、1970年代末には11平方キロメートルあったが、1990年代末には7平方キロメートルになっている。デヴダラキ氷河グルジア語版カバヒ川セブアノ語版の源流である。延長は7キロメートル、面積は7.6平方キロメートルの懸谷である。この氷河では長年にわたって脈動活動が見られる。デヴダラキ氷河は非常に美しい景観が特徴である。その他、カズベギ地区にはスアティシ氷河グルジア語版ムナ氷河グルジア語版キビシ氷河グルジア語版アバノ氷河グルジア語版チャタ氷河グルジア語版シャヴァナ氷河グルジア語版レシ氷河グルジア語版といった小さな氷河もある。

著名な滝としてはエレト滝グルジア語版が挙げられる。エレト滝は高低差が45メートルあり、エレトスツカリ川グルジア語版ムティウレティ・アラグヴィ川グルジア語版の支流)に流れ落ちる。アルシャ滝グルジア語版も興味深い伝説があり、注目に値する。

カズベギ地区ではミネラルウォーターも有名である。ツルソ渓谷グルジア語版炭酸水素塩を多く含むミネラルウォーターで知られている。ツルソ渓谷には大量のトラバーチンの堆積が見られる。ビダラ渓谷グルジア語版の水も注目に値する。

気候

[編集]

カズベギ地区は標高に応じた気候の帯状分布がある。標高の低い場所は適度な湿度の気候帯であり、標高の高い場所は湿った雪が多い気候帯である。

標高1,740メートルは適度に湿気の多い気候である。冬は寒く乾燥し、夏は涼しい期間が長く続く。年平均気温は摂氏4.9度で、1月の月平均気温は摂氏マイナス14.4度、7月の月平均気温は摂氏14.4度である。最低気温記録は摂氏マイナス34度。年平均降水量は800ミリメートル。

標高1,940メートルでは年平均気温が摂氏3.5度、年平均降水量は1,160ミリメートルである。月平均降水量は最多が5月の147ミリメートル、最少が1月の50ミリメートルである。標高2,000メートルを超えると、本格的な夏が見られない気候となる。

標高3,650メートルの年平均気温は摂氏マイナス6.1度。1月の月平均気温は摂氏マイナス15度で、最低気温記録は摂氏マイナス42度である。積雪日数は平年値277日である。

土壌

[編集]

カズベギ地区の大部分は山地草地グルジア語版コルディアニ土壌で、未開拓の土壌となっている。テルギ川とその支流の谷間には、森林土壌が開けている場所もある。谷の川底には沖積層が見られる。高地は森林のない土壌である。山地草地コルディアニ土壌は標高1,100メートルから2,600メートルの範囲に広がっている。

風景

[編集]

カズベギ地区では、次のような風景が見られる。

  1. 中山間地域マツモミの森林と、ロームの土壌。
  2. 森林、草地の植生と沖積層が見られる山間渓谷。
  3. 山地草地土壌グルジア語版にある亜高山帯の低木草地。
  4. 山地草地土壌にある高山草地英語版
  5. 亜恒雪帯および恒雪帯となっている高山の氷河地形。

動植物

[編集]

植物相

[編集]

カズベギ地区には森林があまり広く分布していない。生育している樹木はマツカバノキが多い。ブナは標高のやや高い地帯で見られる。カズベギ地区では1976年に、動植物の保護と普及を目的として自然保護区が設立された。この保護区には森林がほとんどなく、森林面積は保護区域のわずか3パーセントしかない。保護区にはマツ、カバノキ、ブナの他、コーカサスツツジグルジア語版サジーポプラハシバミメギヤナギビャクシンナナカマドなどが自生している。テルギ川の氾濫原には草本が生育し、カルーナが茂っている。高地には亜恒雪帯および恒雪帯の植生がある。

動物相

[編集]

カズベギ地区には希少な動物が生息している。高地はカフカスツールシャモアの活動域であり、ヘヴスレティグルジア語版に近い場所ではパサンが見られる。ヒグマキツネオオカミイイズナテンリスノウサギヤマネコツメナガモグラレミング英語版なども生息している。

鳥類も豊富に生息している。ジョージアの絶滅危惧種リストに掲載されている鳥類としては、岩上で営巣するハゲワシ英語版、希少種のコーカサスクロライチョウ英語版、標高4,000メートルまでが生息域のコーカサスセッケイなどが見られる。

地域区分

[編集]
地図
カズベギ地区の構成集落とその位置。
ダバ
  1. ステパンツミンダグルジア語版
ステパンツミンダ・テミ
  1. ツドグルジア語版
  2. グヴェレティグルジア語版
ゴリスツィヘ・テミ
  1. ゴリスツィヘグルジア語版
  2. ツカルシェティグルジア語版
  3. プヘルシェグルジア語版
  4. カノビグルジア語版
  5. フルティシグルジア語版
グダウリ・テミ
  1. グダウリグルジア語版
  2. ガニシグルジア語版
  3. エレトグルジア語版
  4. サクリアニグルジア語版
  5. パラグカウグルジア語版
  6. クムリスツィヘグルジア語版
コビ・テミ
  1. コビグルジア語版
  2. アバノグルジア語版
  3. アルマシアニグルジア語版
  4. ブルマシギグルジア語版
  5. ジマラグルジア語版
  6. デシグルジア語版
  7. ゼモ・オクロカナグルジア語版
  8. カルツォペリグルジア語版
  9. ケツリシグルジア語版
  10. ムナグルジア語版
  11. ノグカウグルジア語版
  12. レシグルジア語版
  13. スアティシグルジア語版
  14. テピグルジア語版
  15. ウハティグルジア語版
  16. クヴェモ・オクロカナグルジア語版
  17. シェヴァルデニグルジア語版
  18. ツォツォルタ
シオニ・テミ
  1. シオニ
  2. アルシャ
  3. ガイボテニグルジア語版
  4. ガルバニグルジア語版
  5. ヴァルディスバニグルジア語版
  6. トティグルジア語版
  7. パンシェティグルジア語版
スノ・テミ
  1. スノ
  2. アルツフモ
  3. アチホティ
  4. アハルツィヘ
  5. カルクチャ
  6. コセリ
  7. ジュタ

カズベギ地区には1つのダバ(町)と6つのテミ(郷)があり、テミには合計45の村が属する。

ダバ
テミ

人口

[編集]

国勢調査による人口は、次の通りである。

人口 男性 女性 出典
2002 3,478 1,701 1,777 [6]
2014 3,975 1,859 1,936 [7]

2014年の国勢調査

[編集]

2014年の国勢調査によると、カズベギ地区の総人口は3,975人であり、人口密度は1平方キロメートルあたり3.5人である。都市部と農村部の人口比率は、都市部が34.9パーセント、農村部が65.1パーセントである。

地区/ダバ/テミ/村 ムヘドゥルリグルジア語版表記 種別 一般世帯数 定住人口 年齢 (%)
合計 男性 女性 0–14 15–64 65+
カズベギ地区 ყაზბეგის მუნიციპალიტეტი 1,405 3,795 1,859 1,936 15.9 65.2 18.9
ステパンツミンダ管区 დაბა სტეფანწმინდას ტერიტორიული ორგანო 489 1,345 664 681 14.5 67.1 18.4
ステパンツミンダグルジア語版 სტეფანწმინდა ダバ 477 1,326 657 669 14.6 67.3 18.1
ツドグルジア語版 ცდო 17 5.9 52.9 41.2
グヴェレティグルジア語版 გველეთი 0.0 100.0 0.0
ゴリスツィヘ・テミ გორისციხის თემი テミ 219 594 281 313 16.0 65.8 18.2
ゴリスツィヘグルジア語版 გველეთი 76 187 81 106 12.3 63.1 24.6
ツカルシェティグルジア語版 ტყარშეტი 40 107 52 55 8.4 72.0 19.6
プヘルシェグルジア語版 ტყარშეტი 51 167 79 88 26.3 64.7 9.0
カノビグルジア語版 ყანობი 33 86 45 41 16.3 66.3 17.4
フルティシグルジア語版 ხურთისი 19 47 24 23 10.6 66.0 23.4
グダウリ・テミ გორისციხის თემი テミ 30 89 47 42 27.0 67.4 5.6
グダウリグルジア語版 გუდაური 19 54 29 25 20.3 74.1 5.6
ガニシグルジア語版 განისი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
エレトグルジア語版 ერეთო 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
サクリアニグルジア語版 საყურიანი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
パラグカウグルジア語版 ფალაგყაუ 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
クムリスツィヘグルジア語版 ქუმლისციხე 11 35 18 17 37.2 57.1 5.7
コビ・テミ კობის თემი テミ 13 29 11 18 13.8 69.0 17.2
コビグルジア語版 კობი 0.0 100.0 0.0
アバノグルジア語版 აბანო 0.0 100.0 0.0
アルマシアニグルジア語版 ალმასიანი 22 15 18.2 63.6 18.2
ブルマシギグルジア語版 ბურმასიგი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ジマラグルジア語版 ჯიმარა 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
デシグルジア語版 დესი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ゼモ・オクロカナグルジア語版 ზემო ოქროყანა 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
カルツォペリグルジア語版 კართსოფელი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ケツリシグルジア語版 კეტრისი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ムナグルジア語版 მნა 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ノグカウグルジア語版 ნოგყაუ 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
レシグルジア語版 რესი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
スアティシグルジア語版 სუათისი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
テピグルジア語版 ტეფი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ウハティグルジア語版 უხათი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
クヴェモ・オクロカナグルジア語版 ქვემო ოქროყანა 0.0 0.0 100.0
シェヴァルデニグルジア語版 შევარდენი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ツォツォルタ ცოცოლთა 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
シオニ・テミ სიონის თემი テミ 434 1,196 594 602 18.0 63.4 18.6
シオニ სიონი 110 325 157 168 16.9 64.9 18.2
アルシャ არშა 176 440 230 210 17.1 62.0 20.9
ガイボテニグルジア語版 გაიბოტენი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
ガルバニグルジア語版 გარბანი 111 329 156 173 21.0 63.5 15.5
ヴァルディスバニグルジア語版 ვარდისუბანი 18 48 23 25 14.6 56.2 29.2
トティグルジア語版 თოთი 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
パンシェティグルジア語版 ფანშეტი 19 54 28 26 18.5 70.4 11.1
スノ・テミ სნოს თემი テミ 220 542 262 280 12.9 62.9 24.2
スノ სნო 103 263 122 141 13.3 62.4 24.3
アルツフモ ართხმო 0 0 0 0 0.0 0.0 0.0
アチホティ აჩხოტი 65 167 88 79 15.6 64.1 20.3
アハルツィヘ ახალციხე 23 35 13 22 0.0 62.9 37.1
カルクチャ კარკუჩა 17 50 25 25 14.0 62.0 24.0
コセリ ქოსელი 0.0 0.0 100.0
ジュタ ჯუთა 11 26 13 13 7.7 65.4 26.9

経済

[編集]

カズベギ地区の農地は400平方キロメートルを占める。主要産業は農業であり、その主なものは羊や牛の畜産である。温室による野菜栽培も行われている。

ジョージアとロシアを結ぶジョージア軍道が通っている。グダウリグルジア語版には山岳スキー観光センターがある。

文化

[編集]

カズベギ地区には公立中学校が11校、図書館が11館、劇場が1軒、そして博物館が1館(ステパンツミンダ歴史博物館グルジア語版)がある。

史跡

[編集]

シオニ村には9世紀から10世紀頃に建てられた聖堂(ヘヴィ・シオニグルジア語版)がある。この聖堂は三廊式バシリカの構造が特徴である。ガルバニグルジア語版村の高い場所には、9世紀末から10世紀にかけて建てられたガルバニ聖堂グルジア語版がある。

ゲルゲティ至聖三者聖堂も有名である。安山岩のブロックによる組積造で建てられており、表面は丁寧に磨かれている。ゲルゲティ至聖三者聖堂はヘヴィグルジア語版地方において中心的な聖堂であった。

スノスツカリ川の右岸、ぽつんとそびえる岩の丘の上にはスノ要塞グルジア語版があり、名所となっている。アルシャ要塞グルジア語版ダリアリ要塞グルジア語版も重要な要塞である。

アルシャ要塞はテルギ川左岸の安山岩の岩山の上にある。中世ヘヴィグルジア語版地方の防衛要塞であり、侵入者から地元住民を守るのに有利な場所に築かれた[8]。18世紀ジョージアの歴史学者ヴァフシティ・バグラティオニによると、アルシャ要塞は自然の地形を活かした要塞であり、外敵の侵入は不可能だろうと述べている。

またカズベク山にあるベツレヘムの洞窟も貴重な史跡である。標高4,100メートルに位置し、1948年にジョージアの登山家アレクサンドラ・ジャパリゼグルジア語版が探検を行った。

文献

[編集]
  • სანებლიძე მ. კვერენჩხილაძე რ., カルトリ・ソビエト百科事典, 第10巻, 617-618頁, トビリシ, 1986年.
  • მარუაშვილი ლ., საქართველოს ფიზიკური გეოგრაფია, თბ., 1964;
  • საბაშვილი მ., საქართველოს სსრ ნიადაგები, თბ., 1965;
  • უკლება დ., აღმოსავლეთ საქართველოს მთიანი მხარეების ლანდშაფტები და ფიზიკურ-გეოგრაფიული რაიონები, თბ., 1974.

注釈

[編集]
  1. ^ Population Census 2014”. www.geostat.ge. National Statistics Office of Georgia (November 2014). 2 June 2016閲覧。
  2. ^ საქართველოს ორგანული კანონი ადგილობრივი თვითმმართველობის შესახებ
  3. ^ საჯარო სამართლის ეროვნული სააგენტო, მუნიციპალიტეტების რეესტრი — ყაზბეგის მუნიციპალიტეტი
  4. ^ a b c d პროგრამა — საქართველოს რეგიონებში კლიმატის ცვლილებისა და ზემოქმედების შერბილების ზომების ინსტიტუციონალიზაცია”. 2016年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月4日閲覧。
  5. ^ საქართველოს ადგილობრივ თვითმმართველობათა ეროვნული ასოციაცია”. 2015年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月4日閲覧。
  6. ^ საქართველოს მოსახლეობის 2002 წლის პირველი ეროვნული საყოველთაო აღწერის ძირითადი შედეგები, ტომი II p. 135.
  7. ^ საქართველოს 2014 წლის მოსახლეობის საყოველთაო აღწერის ძირითადი შედეგები (PDF) (Report). საქართველოს სტატისტიკის ეროვნული სამსახური英語版. 15 January 2019. p. 202. 2024年5月1日閲覧
  8. ^ Arsha Fortress”. 2024年5月1日閲覧。

外部リンク

[編集]