カシオペヤ座V1405星
カシオペヤ座V1405星 V1405 Cassiopeiae | ||
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カシオペヤ座V1405星の周囲を撮影した画像。「Nova」と記されている画面下の赤い光がカシオペヤ座V1405星。
(画像の範囲は3×3度、2021年5月9日撮影) | ||
仮符号・別名 | V1405 Cas[1][2] Nova Cassiopeiae 2021[1][2] Nova Cas 2021[1] カシオペヤ座新星2021[3] | |
星座 | カシオペヤ座[1][2] | |
見かけの等級 (mv) | 9.6(新星発見時)[1][2] 14.870 - 14.960(変光)[4] | |
変光星型 | おおぐま座W型変光星[4] | |
分類 | 食連星[4] | |
位置 元期:J2000.0[4] | ||
赤経 (RA, α) | 23h 24m 47.730s[4] | |
赤緯 (Dec, δ) | +61° 11′ 14.77″[4] | |
年周視差 (π) | 0.5776 ± 0.0254ミリ秒[4][5] (誤差4.4%) | |
距離 | 5600 ± 200 光年[注 1] (1730 ± 80 パーセク[注 1]) | |
他のカタログでの名称 | ||
CzeV 3217[1] Gaia EDR3 2015451512907540480[5] PNV J23244760+6111140[1] TIC 269819908[1] 2MASS J23244772+6111149[1] |
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カシオペヤ座V1405星(英語: V1405 Cassiopeiae)は、2021年にカシオペヤ座の方向で観測された新星である。肉眼で観望できる6等級よりも見かけの等級が明るくなったものとしては、2020年7月15日に出現したレチクル座YZ星(ピーク時の見かけの明るさは3.7等級)以来、約10ヶ月ぶりに出現した新星である[6]。
発見と観測
[編集]2021年3月18日10時10分(世界協定時)、日本は三重県の天文観測家である中村祐二がCCDカメラを用いて行った観測で、カシオペヤ座にある散開星団M52の近くに新たな天体が観測された[2][4][5][7][8]。この天体の発見は国立天文台を通じて天文電報中央局(CBAT)に報告され、その天体が新星であることが確認されたことから「Nova Cassiopeiae 2021(カシオペヤ座新星2021[3])」という名称が付けられ、また、変光星として変光星の命名規則に沿った「カシオペヤ座V1405星」という名称も付与された[2]。
発見当時の見かけの明るさは約9.6等級であったが[1][2]、同日に海外で行われた観測ではより明るくなっており今後さらに増光すると予測された[8]。そして同年5月中旬には、見かけの明るさが条件が整った暗い夜空ならば肉眼でも観望できる明るさである5.3等級に達したと天文電報中央局電子回報(CBET)に報告された[3]。
特徴
[編集]カシオペヤ座V1405星が発見されてから約半日後に、岡山県での口径30 cm望遠鏡や京都大学岡山天文台に設置されているせいめい望遠鏡(口径3.8 m)による観測が行われた結果、スペクトル内に存在している中性ヘリウム(He I)の輝線にはP Cyg プロファイルがみられ、その吸収成分は輝線成分に対して1,600 km/s程度の青方偏移を起こしている。この観測で得られたスペクトルの特性から、カシオペヤ座V1405星はまだ明るさが極大に達していない古典新星であるとされた[7][8]。
カシオペヤ座V1405星からわずか1.3秒しか離れていない位置には、以前から「CzeV 3217」と呼ばれていた0.376938日(約9.05時間)の周期で2つの天体が公転しあう食連星が存在することが知られていた[5]。CzeV 3217は14.870 - 14.960等級の範囲で変光するおおぐま座W型変光星で[4]、新星が出現したのと同じ2021年に発見されたばかりの天体であった[9]。新星が出現する前に観測されていた絶対等級や変光周期の値から、CzeV 3217は太陽程度の質量を持つ恒星が晩年を経た後に進化する天体である白色矮星とロッシュローブを満たしている主系列星の2つから成る「新星状変光星」と呼ばれる激変星の一種であると考えられ、この性質から、カシオペヤ座V1405星として出現した新星はCzeV 3217で発生したものとみられている[8][10]。CzeV 3217はガイア計画による年周視差測定も行われており、その測定に基づくと地球からの距離は約5,600光年(約1,730パーセク)程度となる[4][5]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j “VSX : Detail for V1405 Cas”. AAVSO. 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g “中村祐二さんが発見した“カシオペヤ座”の新星(2021年3月)”. 国立天文台 (2021年3月19日). 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b c “カシオペヤ座の新星、肉眼等級にまで増光中”. 国立天文台 (2021年5月14日). 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “CBAT "Transient Object Followup Reports" PNV J23244760+6111140”. Central Bureau for Astronomical Telegrams (2021年3月19日). 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b c d e Kenta Taguchi; et al. (2021年3月19日). “ATel#14472 : Spectroscopic Classification of PNV J23244760+6111140 as a classical nova (further reports)”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。
- ^ Mukai, Koji (2021年5月9日). “Koji's List of Recent Galactic Novae”. Goddard Space Flight Center. NASA. 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b Hiroyuki Maehara; et al. (2021年3月18日). “ATel#14471 : Spectroscopic Classification of PNV J23244760+6111140 as a classical nova”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。
- ^ a b c d 前原裕之 (2021年3月20日). “No.371: V1405 Cassiopeiae = Nova Cassiopeiae 2021 (PNV J23244760+6111140)”. 日本変光星観測者連盟. 2021年5月19日閲覧。
- ^ “CzeV 3217 Cas”. Sekce proměnných hvězd a exoplanet (2021年). 2021年5月19日閲覧。
- ^ K. V. Sokolovsky; et al. (2021年4月8日). “ATel#14530 : Early NuSTAR and Swift X-ray detection of Nova Cassiopeiae 2021 = V1405 Cas = PNV J23244760+6111140”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。
外部リンク
[編集]- “カシオペヤ座の新星を日本の天体捜索者が発見”. 国立天文台 (2021年3月19日). 2021年5月18日閲覧。
- “カシオペア座に新星 日本人が発見”. 財経新聞 (2021年3月23日). 2021年5月19日閲覧。
- U. Munari; et al. (2021年3月19日). “ATel#14476 : Echelle spectroscopy and BVRI photometry of the rapidly evolving PNV J23244760+6111140”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。
- Kenta Taguchi; et al. (2021年3月18日). “ATel#14478 : Follow-up Observations of the Nova V1405 Cas = Nova Cas 2021 = PNV J23244760+6111140: Spectra Changed to He/N-type in One Day”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。
- Richard Rudy; et al. (2021年3月23日). “ATel#14482 : Visible and Infrared Spectra of the nova V1405 Cassiopeiae”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。
- S. N. Shorei; et al. (2021年4月26日). “ATel#14577 : V1405 Cas (= PNV J23244760+6111140) now displaying Fe II emission”. The Astronomer's Telegram. 2021年5月19日閲覧。