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カクラ級潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カクラ級潜水艦
浮上航行中の「カクラ」
浮上航行中の「カクラ」
基本情報
種別 通常動力型潜水艦
建造所 西ドイツの旗 西ドイツ IKL社(設計)
西ドイツの旗 西ドイツ HDW社(建造)
運用者  インドネシア海軍
建造期間 1977年 - 1981年
就役期間 1981年 - 現在
建造数 2隻
前級 ウィスキー型 (613型)
次級 ナーガパーシャ級 (209/1400型)
要目
基準排水量 1,285 t
水中排水量 1,390 t
長さ 59.5 m
6.2 m
吃水 5.4 m
機関方式 ディーゼル・エレクトリック方式
主機
推進器 スクリュープロペラ×1軸
出力 4,600馬力 (最大5,000馬力)
速力 11 kt (浮上時)
21.5 kt (潜航時)
航続距離
  • 8,200海里 (11 kt, 浮上時)
  • 400海里 (4 kt, 潜航時)
  • 16海里 (21.5 kt, 潜航時)
航海日数 50日[1]
潜航深度 250 m (最大行動深度)[1]
乗員 士官6名+下士官兵28名
兵装 533mm 魚雷発射管×8基
(SUT mod.0 魚雷×14基)
FCS SINBADS 武器管制装置
レーダー カリプソ-II 航法用
ソナー CSU-3-2 統合式
※LOPAS-8300に後日換装
電子戦
対抗手段
DR-2000U 電波探知装置
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カクラ級潜水艦 (カクラきゅうせんすいかん、英語: Cakra-class submarine) はインドネシア海軍が運用する通常動力型潜水艦の艦級。ドイツHDW社の209型潜水艦シリーズのひとつである[1][2][3]

来歴

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インドネシア海軍は、まず1959年ポーランドから613型潜水艦(ウィスキー型)2隻を購入して、潜水艦の運用に着手した。その後も追加購入が進められ、最終的には予備部品用を含めて14隻を取得したが、設計の陳腐化に加えて、スハルト政権下でインドネシアが西側諸国への接近を図ったこともあって、1972年には最初に取得した2隻を除籍するなど、運用は縮小されていった[4]

その後、1977年4月2日に西ドイツの輸出用潜水艦の購入契約が締結された[4]。この契約では、設計はインジェニエーアコント・リューベック(IKL)、建造はホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船(HDW)が担当し、フェロスタール社が販売代理店となっていた[3]。これによって建造されたのが本級である[1]

設計

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本級は209型潜水艦の設計を採用しており、排水量が1,300トン級であることから209/1300型と称される[2]

ソナーとしては、STN アトラス (STN Atlas社製のCSU-3-2 統合ソナー(AN 526パッシブ式および407 A9パッシブ式)とタレス社製のDUUX-2 脅威受信機を備えていた[1]。また武器管制システムとしてはタレス社のSINBADSを搭載した[1]。その後、2000年代中盤の近代化改装の際に、L-3社のLOPAS-8300ソナーに換装された[3]

艦首に533mm魚雷発射管8門を備え、兵装としてはSUT両用魚雷14発を搭載できた[1][3]

同型艦

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一覧表

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艦番号 艦名 造船所 起工 進水 就役 状態
401 カクラ
KRI Cakra
HDW 1977年11月25日 1980年9月10日 1981年3月18日 就役中
402 ナンガラ
KRI Nanggala
1978年3月14日 1981年7月6日 2021年4月21日、訓練中に沈没[5]

運用史

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就役から10年に満たない1980年代後半に早速大規模修理が行われ、「カクラ」は1987年、「ナンガラ」は1989年に工事を終えた[1]。この修理が予想外に高価だったために本級の追加建造は実現せず[3]、また当時計画されていたドイツ海軍中古の206型潜水艦の購入も撤回された[2]

その後、1993年から1997年にかけて、「カクラ」はインドネシアで近代化改装を行い、蓄電池を換装するとともに魚雷発射指揮装置も更新した[3]。また「ナンガラ」も、1997年から1999年にかけて同様の改装を受けた[3]

また2000年代には、大韓民国大宇造船海洋において、大規模な近代化改装が行われた[注 1]。これは機関のオーバーホールと蓄電池の換装、更にソナーも更新するものであった[3]。しかしこのように改装が重ねられたにもかかわらず、2015年の時点で、ジェーン海軍年鑑は「これらの艦の運用状態は疑問である」と記載していた[3]

2021年4月21日、インドネシア海軍は「ナンガラ」(53名乗組)がバリ海での魚雷実弾発射訓練で失敗の報告をした後に消息を絶ったと発表した[7][8][9]。インドネシア政府は捜索班を出動させたと発表し、捜索にあたって近隣国のシンガポール政府およびオーストラリア政府に支援を要請した[10]。4月24日、消息不明地点から約3.2km離れた海上で艦体の一部と思われる残骸が発見されたことから、音波探知機や磁気探知機で該当海域の捜索を行ったところ、翌25日、水深850mの海底で3つに分かれた艦体が発見された。乗員53人の死亡が確認された[5]

脚注

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注釈

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  1. ^ 同社は大韓民国海軍向けの張保皐級潜水艦で既に209型潜水艦の建造・整備経験を積んでおり、後にはインドネシア海軍向けに209/1400型3隻の新規建造も行って、これらはナーガパーシャ級英語版として就役した[6]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h Wertheim 2013, p. 293.
  2. ^ a b c 海人社 2005, p. 128.
  3. ^ a b c d e f g h i Saunders 2015, p. 363.
  4. ^ a b Gardiner 1996, p. 179.
  5. ^ a b 沈没した潜水艦を発見、乗員53人全員死亡と断定 インドネシア”. CNN (2021年4月26日). 2024年8月4日閲覧。
  6. ^ Saunders 2015, p. 362.
  7. ^ Rahmat, Ridzwan (21 April 2021). “Indonesian Navy submarine missing in Bali Sea”. Janes. https://www.janes.com/defence-news/news-detail/indonesian-navy-submarine-missing-in-bali-sea 21 April 2021閲覧。 
  8. ^ Pattisina, Edna C (2021年4月21日). “Kapal Selam KRI Nanggala-402 Hilang di Utara Bali”. kompas.id. 2021年4月21日閲覧。
  9. ^ “Indonesian submarine goes missing north of Bali” (英語). BBC News. (2021年4月21日). https://www.bbc.com/news/world-asia-56829278 2021年4月21日閲覧。 
  10. ^ Kapal Selam TNI AL Hilang Kontak saat Latihan di Selat Bali” (インドネシア語). CNN Indonesia (2021年4月21日). 2021年4月21日閲覧。

参考文献

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  • Gardiner, Robert (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. ISBN 978-1557501325 
  • Saunders, Stephen (2015). Jane's Fighting Ships 2015-2016. Janes Information Group. ISBN 978-0710631435 
  • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545 
  • 海人社(編)「世界の潜水艦」『世界の艦船』第637号、海人社、2005年1月、7-160頁、NAID 40006548369 
  • 塚本和人「東南アジア各国、潜水艦競争激化 中国へ警戒感も」『朝日新聞朝日新聞社、2009年7月31日。オリジナルの2009年8月4日時点におけるアーカイブ。

関連項目

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