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オリンピア・プレス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

オリンピア・プレス(Olympia Press)は、パリを拠点とする出版社。性愛文学アバンギャルド文学を出版し、ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』を初めて出版したことで最もよく知られている。

概要

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1953年モーリス・ジロディアス英語版が父親のジャック・カハネ英語版[注釈 1]から受け継いだオベリスク・プレス英語版のブランド変更版として設立した。「オリンピア・プレス」という社名は「父親のオベリスク・プレスと韻を踏む意味もあったが、マネの有名な絵「オランピア」に敬意を捧げる意味もあった」という[1]

1955年、ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』を出版。その内容からアメリカでは5つの出版社から刊行を断られたと伝えられており[注釈 2]、パリでの出版はナボコフにとって最後に残された選択肢だった。

1965年、ド・ゴール政府の弾圧によりフランスでの活動が困難となり、ニューヨークに拠点を移す。

1973年、オリンピアUSAが破産。ジロディアスはなおもフリーウェイ・プレスを立ち上げて出版活動を続けるものの、こちらも1974年には活動断念に追い込まれた。

特徴

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かつてのアルバトロス叢書英語版を模したようなタイポグラフィカルなデザインが特徴で、緑色のカバーの「トラベラーズ・コンパニオン(Traveller's Companion)」シリーズが特に有名。また「オフィーリア・プレス(Ophelia Press)」というインプリントでも出版活動を行った。こちらはピンク色のカバーが目印。青木日出夫によれば「オフィーリア・プレスはジロディアスが彼の作家たちに内緒で作った海賊出版社のようなものだった」という[1]

トラベラーズ・コンパニオン・シリーズ

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番号 作品 著者
2 レイプ マーカス・ヴァン・ヘラー
3 処女の熱き唇 フランシス・レンゲル
7 赤毛の男 J・P・ドンレヴィー
11 アモンの太腿 マーカス・ヴァン・ヘラー
12 マダム・カルラ マルコム・ネスビット
14 白い太腿 フランシス・レンゲル
17 ファニー・ヒル ジョン・クレランド
19 ダーリン ハリエット・ダイムラー[注釈 3]
23 ローマの狂宴 マーカス・ヴァン・ヘラー
32 快楽泥棒 ハリエット・ダイムラー&ヘンリー・クラナック
35 男狂い マーカス・ヴァン・ヘラー
36 花のノートルダム ジャン・ジュネ
37 背徳のボルジア家 マーカス・ヴァン・ヘラー
39 セクサス ヘンリー・ミラー
44 O嬢の物語 ドミニク・オーリー
47 性の世界 ヘンリー・ミラー
49 閨房哲学 マルキ・ド・サド
50 ソドム百二十日あるいは淫蕩学校 マルキ・ド・サド
51 白書 ジャン・コクトー
52 ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え マルキ・ド・サド
64 キャンディ テリー・サザーン
66 ロリータ ウラジーミル・ナボコフ
68 プレクサク ヘンリー・ミラー
71 マロウンは死ぬ サミュエル・ベケット
74 地下鉄のザジ レーモン・クノー
76 裸のランチ ウィリアム・S・バロウズ
77 黒い本 ロレンス・ダレル
78 泥棒日記 ジャン・ジュネ
87 ピンク・トウ チェスター・ハイムズ
88 ソフトマシーン ウィリアム・S・バロウズ
91 爆発した切符 ウィリアム・S・バロウズ
214 義母 トー・クン

※邦訳のある作品限定。参考資料:青木日出夫「オリンピア・プレス(パリ)の刊行書リスト(1953-1965)」[1]

脚注

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注釈

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  1. ^ 表記はジャック・カハン[1]やジャック・カヘーン[2]とされる場合もある。
  2. ^ ただし、ファーラー、ストラウス&ヤングは本名での出版を条件に出版に同意したとされる。しかし、ナボコフがペンネームでの出版にこだわったことが障害となり、実現しなかったという。ロジャー・ストラウスはナボコフは本名で『ロリータ』を出版することでコーネル大学での職を失うことを恐れていたと証言している。またサイモン&シュスターのウォーレス・ブロックウェイは原稿を返却するに当たってグローヴ・プレスのバーニー・ロセットに送るようアドバイスしたという。ロセットは後にもし原稿が送られてきていたらナボコフの希望通りペンネームでの出版に同意していたかどうかを尋ねられ、「ああ、もちろんだよ」と答えている。しかし、ナボコフはブロックウェイのアドバイスに従うことはなかった。その理由についてロセットはナボコフが「高慢でスノッブ」であり「自分の小説を手がけるにはグローヴは弱小出版社だと考えたのだろう」と答えている[1]
  3. ^ アメリカの女流作家、アイリス・オーウェンス英語版の変名。表記はハリエット・デイムラーとされる場合もある[2][3]

出典

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  1. ^ a b c d e ジョン・ディ・セイント・ジョア 著、青木日出夫 訳『オリンピア・プレス物語:ある出版社のエロティックな旅』河出書房新社、2009年9月。 
  2. ^ a b 植草甚一『ポーノグラフィー始末記』(新装)晶文社〈植草甚一スクラップ・ブック〉、2005年1月。 
  3. ^ ハリエット・デイムラー 著、山下諭一 訳『ダーリン』フランス書院、1974年10月。 

外部リンク

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