コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

計時

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オフィシャル計時から転送)

計時(けいじ、: timekeeping タイムキービング)は、時間を計ること。時間を測定し、記録すること。

多くの人に広く知られているのはスポーツ競技の時間測定である。

スポーツ競技における計時

[編集]

スポーツの計時の方法としては、「目視」「ストップウォッチの使用による測定」「開始と終了を機械的に検知し測定」などがある。

大きく分けると、手動計時方式つまり人が眼で確認して手でストップウォッチのスイッチを押す方式と、電動計時方式つまり機械的なセンサにより自動的に計測する方法、の2種類がある。

人が計時する場合は計時する人を英語ではタイムキーパー(timekeeper)といい、日本語では「計時係」などという 。装置で行う場合も英語では人と同じくタイムキーパー(timekeeper)と呼べば良く、日本語の場合は「計時装置」などと呼び分ける。

歴史

[編集]

1896年の第1回アテネオリンピックでは、人が目視視認してストップウォッチで計っており、公式記録は「1秒単位」の記録が採用された。(つまり1秒以下、「コンマ何秒」は公式記録には採用されなかった。)

100分の1秒が測定出来るストップウォッチが公式計時に採用されたのは1920年アントワープオリンピックからで、この時から公式記録は5分の1秒単位となり、1932年ロサンゼルスオリンピックで10分の1秒単位、1952年ヘルシンキオリンピックで電子計時が採用、1956年メルボルンオリンピックで半自動水泳計時機器採用[1]1972年ミュンヘンオリンピックで100分の1秒単位となった[2]

現在、1000分の1秒単位の時間の扱いは陸上と競泳で異なり、陸上の場合は「切り上げ」、競泳の場合は「切り捨て」したものが記録となる[2]

手動計時

[編集]

手動計時(しゅどうけいじ)は、人間の視認および動作に頼る方式。複数の手動計時員が配置され、手動計時員個々の計測値が一致していればそのタイム、一致していなければ平均値が採用される[3]。最初期にはストップウォッチを使用しなかったり、10人以上の計時員が配置され平均値を取ったりしていた[2]

陸上競技水泳競技自転車競技などのさまざまな競争競技でタイムを計測する際に計時方法として採用されている[4][5]

陸上競技の場合、正式なタイムはトラックは100分の1、競技場外は10分の1以下にそれぞれ繰り上げられる。時計が2つの場合は遅いほうのタイムが記録になる[3]

自転車競技の場合、正式なタイムは1000分の1が用いられ、原則3人での計時が行われる。この際、タイムの決定には基本となる決定方法とは別に2つの特例が用いられる。

基本
  1. 3人の計時結果が同一の場合は、それを正式時間とする。
  2. 2人の計時結果が同一の場合は、それを正式時間とする。
特例
  1. 3人のうち、最もタイム差が短い2人の記録から計算した中間タイムを正式時間とする。
  2. 3人のうち、2番目のタイムを正式時間とする。

なお、この特例のどちらを採用するかは競技や大会ごとに変わり、どちらを利用しなければいけないという規定は無い [5]

電動計時

[編集]

電動計時(でんどうけいじ、または電気計時・電子計時・自動計時など)は、センサによる機械的な検知による計時法であり、手動計時と対比される概念である。センサなどを使用した検知方法であり、人間の視認に頼っておらず、人間の判断による計測誤差が加わらないため、手動計時より正確性が高いとされる[2]。その結果、現在では自動公認装置としてさまざまな競技の記録に使用されている[4][6]。なお、日本の陸上競技では1975年より従来の手動計時に加えて、電動計時も公式記録として公認するようになった。その後しばらくは両方を主要大会参加などの際の標準記録として設定していたが、1993年以降は電動計時のみを公認記録としている。[7]

電動計時に関係する機器

[編集]
電動計時を使用した公式計時での陸上競技のスタートの際、スタートおよびフライングの検知のためにセンサが設置される[2][8]
水泳競技の際、ゴール時に水泳選手がプール内に設置されたタッチ板にタッチすることでタイマーが停止する、電動計時機器のひとつ[9]

公式計時と企業

[編集]

一般大会または国際大会における大会主催者側の認める公式の計時は「公式計時」「オフィシャル計時」などと言われ、計時を担当する企業が一社に絞られることも多く、その場合その企業は「オフィシャルタイマー」などと呼ばれる。

ロンジン

[編集]

1912年スイスロンジンバーゼルで開催されたスイス国体で公式時計(公式計時)として採用された。また、80メートル競走で世界初の自動記録計測機を使用した。これはスタートとゴールのテープにスイッチを連動させる方式だった[10]1926年にはジュネーヴで開催された国際馬術競技会で公式計時を務めた[11]

オメガ

[編集]

1932年、ロサンゼルスオリンピックでスイスのオメガは子会社の開発したクロノグラフとストップウォッチを使用し、オリンピックで行われた全競技種目の公式計時を担当した世界最初の企業となった[12]。オメガはロサンゼルスオリンピック以降、2032年夏季五輪までに国際オリンピック委員会と提携した公式タイムキーパーを通算35回務めている[13]

セイコーホールディングス

[編集]

日本セイコーホールディングス1964年東京オリンピック以降、札幌オリンピック1972年)、長野オリンピック1998年)の日本国内で開催された全ての大会の計時を担当した他、バルセロナオリンピック1992年)、などの大会でもオフィシャル計時を担当した[14]。また、オリンピックなど他、世界選手権などの厳密な計時が求められる国際競技大会での公式計時担当実績が最も多い[15]

シチズンホールディングス

[編集]

スポーツ競技以外の計時

[編集]

スポーツ競技以外での計時についても説明しておくと、 たとえばチェスではチェスクロックというものが使われ、将棋では対局時計が使われる。スイッチで各プレーヤーが思考している時間を計時する。大会ごとにさまざまな規定があるが、思考に使える総時間があらかじめ決められていて単純に持ち時間が減ってゆく方式と、持ち時間がある程度ありそれを使い切ると残りは1分や30秒などで必ず一手指さなければならなくなる方式などがある。

競技とは無関係の分野で計時が行われることもある。たとえば効率改善のために計時が行われることがある。 たとえば工場の生産ラインの生産効率を改善するために、各生産工程に要している時間や作業員ひとりひとりの作業時間を計時することがある。 20世紀前半にテイラーらが開発した科学的管理法という手法が経営をするための手法として広まってゆき、仕事の効率を向上させるために、数量の測定や時間の測定なども重視されるようになった。日本では昭和時代、トヨタ自動車が生産の効率を向上させることを得意とし、(いわゆる「カンバン方式」が一番有名ではあるが)、それだけでなく、もっと地道な手法、たとえば生産ラインで各工程の所要時間や各作業者の作業時間をストップウォッチを用いて計時し、科学的分析を行い工程や作業の配分を見直すことで生産効率を向上させたりミスを減らすことも得意としていた(現在も得意としている)。その後、世界のメーカーがそうした手法を模倣し、生産効率の向上を図っている。

関連項目

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 水泳と各種競技の計時にみるオメガの正確な情報と数字”. オメガ. 2008年12月9日閲覧。
  2. ^ a b c d e 第99回 正しい記録には、最初と終わりが肝心! -陸上と競泳の計時を助ける仕組み-(1)”. TDK (2008年8月). 2008年12月9日閲覧。
  3. ^ a b 日本陸上競技連盟編『陸上競技ルールブック2008年版』あい出版、2008年、351頁。
  4. ^ a b FINA オープンウォータースイミング 競技規則 2005 – 2009 (PDF, 261 KiB) , pp.6「計時担当員は:」にて自動公認装置と共に注釈として手動計時員の言及有り。
  5. ^ a b *日本自転車競技連盟 JCF競技規則(2008年版) (PDF, 2.1 MB) pp.56 8.タイム・キーパー(計時・時間管理)に例示2点有り。
  6. ^ 志賀高原スキークラブ 計時機器”. 2008年12月8日閲覧。
  7. ^ 陸上競技マガジン2000年3月号増刊1999年記録集計号、317p
  8. ^ 陸上競技”. オメガ. 2008年12月9日閲覧。
  9. ^ 第99回 正しい記録には、最初と終わりが肝心! -陸上と競泳の計時を助ける仕組み-(2)”. TDK (2008年8月). 2008年12月9日閲覧。
  10. ^ Longines 1910s”. ロンジン. 2008年12月9日閲覧。
  11. ^ Longines 1920s”. ロンジン. 2008年12月9日閲覧。
  12. ^ オリンピック計時の歴史”. オメガ. 2008年12月9日閲覧。
  13. ^ IOC AND OFFICIAL TIMEKEEPER OMEGA EXTEND GLOBAL OLYMPIC PARTNERSHIP TO 2032”. IOC. 2017年5月15日閲覧。
  14. ^ セイコーホールディングス沿革”. セイコーホールディングス. 2008年12月8日閲覧。
  15. ^ “陸上計時の伝統刻む「セイコー イズル」”. 日経NET-日経WagaMama. http://waga.nikkei.co.jp/comfort/shopping.aspx?i=MMWAg5003028112007 2008年12月9日閲覧。